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オーガニクス 作者:
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未来編 最終話

なんどもロイドは長村賢吾の記憶を見た。
あの記憶は彼の戦いと苦悩の記憶だった。
経験をしたことがない記憶を思い出すのは、記憶まで複製されたからだ。
もう一人の自分が、審判のために作り出した超兵器オーガニクス。

今、ロイドの目の前にカルバンともう一体のオーガニクスがいる。
この場所で、今けりをつけることを決意した。
あの日、自分を意識した日。
闇の中で声が聞こえていた。

「瞳は赤くない・・・今までの色素の弱い俺達とは違う・・・
最も・・・オリジナルに近い・・・クローン。
・・・ロボットでもサイボーグでもなく
レプリカントでもホムンクルスでもない。
複製した人間に作られた最も完全に近いイミテーション・・・
名前は・・・ロイド。由来は定義のないアンドロイドだ。
良いだろう。自分だけの名前のない俺達に比べれば・・・まだ・・・」

暗闇の中でその声だけが響いていた。

これは・・・長村賢吾ではない、俺の記憶・・・


鎌のオーガニクスは、カルバンを見て、俺に叫ぶ。
「おい!なんだあの気が触れた奴は!」
俺は首を横に振る。知っていると答えたくなかった。
「まぁいい・・俺の名前は・・・」
もう一度鎌のオーガニクスが喋ろうとした。
「この悪魔どもめ・・・」
カルバンはわなわなと震え殺意をむき出しにして呟く。
それでも鎌を持ったオーガニクスは、ルバンには見向きもせず俺に向って喋る。
「へ、まぁいい。俺以外のオーガニクスは邪魔なだけだ。死にな」
鎌が風を切り俺を襲う。だが俺は理力で弾きそれを防いだ。
・・・理力が回復してきている。
「なに?」
男は信じられないようだ。
そしてその行動に、俺は相手がまだ戦い馴れていないと感じた。
「俺はこの為だけに作られた。死にたくなければ降りろ。降りなければ・・・」
「何だって言うんだよ」
鎌のオーガニクスは俺に言う。
「殺す」
俺はマントを剣に変えて握り、理力を込める。
「おい・・・神は大変お怒りだ」
カルバンの声がした時に、俺と鎌のオーガニクスの間に光が飛び散る。
俺は理力を展開し防御する。煙がまきあがり衝撃を感じる。
先ほどとは状況が違う。理力が俺に戻ってきた今、焦りは感じない。
音が落ちつき視界が確保できる様になった。鎌の男は上空へ逃げていた。
「なんだ!?いきなり」
鎌のオーガニクスは怒りを露にしていた。
鎌のオーガニクスの奴にはカルバンは荷が重い。
「あの可笑しい奴は何処にいきやがった?」
鎌の男が見当たらないカルバンへの怒りをなぜか俺に向ける。
その時鎌のオーガニクスの後にチラッと影が見えた。
「やはり・・・こうなったか」
その影が見えて、すぐに俺の足元に鎌のオーガニクスが降りてきた、と言うよりは落ちてきた。
後からカルバンの一撃をくらい、カルバンごと落ちてきてハンマーに潰されていた。
鎌のオーガニクスから色が引いた。彼は終わったのだ。
鎌のオーガニクスの吹き出した黒い液体が俺の体を濡らす。
カルバンは返り血で黒くなった顔で俺に告げる。
「次はお前だ・・・」
俺は何も言わずに剣を突き出す。
もう言葉は意味をもたない。カルバンがやる気な以上、
俺か奴のどちらかが、ここで倒れるしかない。
カルバンと見詰め合った時、上空から激しく風を切る音が聞こえた。
俺とカルバンは同時に上を見上げる。
そこには巨大なヘリが十機ほどこちらへ向っていた。
「・・・無駄だ・・・」
俺はそう呟いた。ヘリがこようが爆撃されようが
きっと俺達に傷を与える事は出来ないだろう。

ヘリは俺達の近くで止まったが俺とカルバンは動かなかった。
ここで相手を見失う事はお互いに危険だと知っていたからだ。
ヘリはMWを何機も落下させた。俺達を囲むつもりの様だ。
地面にめり込む音が続く。物陰に隠れてはいるが
俺達を囲んでいっているのは雰囲気でわかる。
数で押すような作戦の様だ。
ヘリはMWを落下させるとフラフラと上昇していく。
「ククク、ははは」
カルバンが笑い出す。
「ここで神の力を見せる時が来た!」
カルバンは叫ぶ。
「好きにしろ。その時がお前の最後だ」
俺はカルバンにそう告げた。
理力がある程度回復した今、カルバンを放っておく理由はない。
「ロイドォ・・・」
カルバンは俺の名前を呼ぶ。俺は名前を教えた事を後悔していた。
呼ばれるたびに背筋が凍てつく。カルバンがハンマーを光らせる。
「死ね!」
カルバンは仕掛けて来た。その瞬間、同時だった。
俺とカルバンを狙い、大量のミサイルと弾丸が放出されてきた。
俺は理力を張り防御する。
カルバンはタマをモロに食らっていた。攻撃に理力を回した様だ。
あの直情型のカルバンに防御と攻撃を同時に行なうだけの器用さはない。
カルバンは仰け反りよろける。黒い液体が体中から吹き出している。
カルバンは動きを止め立ち尽くす。


俺たちをしとめたと思ったのだろう。
銃を向けつつ何機かのMWが瓦礫から出てきた。
俺に銃と電灯の明りを向ける。
「・・・」
俺はどうしたものかと思った。
とりあえず彼らがわかってないことを教える事にした。
「・・・早く逃げろ。死ぬぞ。」
そう、わかっていた。感覚が伝えている。感じている。
目の前に立ちつくしている巨人の怒りを。
オーガニクスが、しかもカルバンがあの程度で倒れるわけはないのだ。
MW達はは立ち止まり。ヘリはまた近くへ来ていた。
「コ・・・ロ・・・ス」
低く鈍く声が聞こえる。
その声を聞き俺は緊張した。脅威を感じる。
「うぉぉおおおおおおおおおおおおおお!」
カルバンは声を高く張り上げる。
その体が眩しく光る。俺は剣をマントに変えて装着した。
この理力は両腕で、全力で防御しなくては
「危険だ。」
俺はそう呟いた。この感覚。自分で感じた事がある。
「・・・まずいな・・・だが・・・」
この理力の膨れ上がり方は異常だ。
ここでは退いたところで意味はない事はわかっていた。
不意に光と衝撃が俺を襲った。
その光のまぶしさで視界を確保出来ない。
無差別に与えられる衝撃は大地を揺らし、あるあらゆる物を吹き飛ばした。
体が震え俺は引きずられる様に下がる。この理力の放出量は・・・まさしく。


光がおさまり音は静かになった。
俺はゆっくりと頭を上げた。
思ったとおり俺とカルバン以外の全てが吹き飛んでいた。
両手を上げているカルバンのその姿は想像した通りの姿であった。
「・・・リボーン」
カルバンのオーガニクスは一回り大きくリボーンしていた。
オーガニクスは意志の力、理力を糧として動いている。
意志が強ければ強いほどオーガニクスの力は強くなる。
そしてその気持ちが強くなり許容量を超えた時、
オーガニクスは順応する為に外見、基礎能力すべてを進化させ生まれ変わる。
これをリボーンと呼ぶ。
リボーンしたオーガニクスは・・・・普通のオーガニクスでは何があっても勝てない。
「マズイな・・・」
俺はそう思った。俺はまだ回復しきれていない。
つまりリボーンするだけの力がない。
「ロイド見ろ!この俺の姿を!神はやはり俺を選んだ!俺は正しいのだ!」
カルバンは嬉しそうに笑いマントをハンマーに変えた。
そのハンマーあまりにも巨大で異形だった。カルバンをあらわしたようだった。
そのハンマーを軽々と振るう。
危機を感じた俺はマントを剣に変える。
「けりをつけると言ったな。ロイド・・・この神の力を受けるが良い!」
ハンマーは光り横から俺を襲う。その速さに俺は反応できずにモロに食う。
スローモーションのように景色が横に流れる。体がきしむ。目の前が暗くなる。
カルバンの声が聞こえる。
「おおおおお!この力!俺は正しかった!そうだ!間違えていなかった!」
何かにすがる様に大きく声が響く。
「感謝します!感謝します!尽くしてきて良かった!ずっと待っていた!」
その声は俺に十分過ぎるほど聞こえた。
「すべて!貴方様に歯向かう悪魔はすべて私が葬る!御加護を!哀れな子羊をお導きください!」
「本当に哀れだな・・・」
俺は呟いてゆっくりと立ちあがる。まだ衝撃は抜けきれていない。
「なんだ?」
カルバンは俺の言葉に反応する。
「聞こえなかったのか?哀れだと言った。」
哀れなのはカルバンだけではないが・・・
その俺の声を聞いて一瞬で俺の前にカルバンが現れる。
リボーンしたオーガニクスが使える瞬間移動だ。
これは理力の延長で、意志が高速移動をさせている。
「ロイド・・・死ね。あの三匹の悪魔の様に!」
カルバンはハンマーを振り上げる。
「信仰しなかった事を後悔して死んでしまえ!」
そう言ってハンマーを俺に振り下ろす。
俺は剣を大地に突き刺し両手でハンマーを支える。
「なに?」
カルバンは驚いている。
瀕死の俺がカルバンの攻撃を支えているからだ。
「この光景を見てみろ・・・悪魔はお前・・・いや俺たちの方だ」
俺はそう言った。
「うるさい!死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。
死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね!死ね!死ね!死ね!」
カルバンは力を込めるがハンマーは動かない。焦りを覚えている様だ。
「・・・残念だが、まだ・・・死ねない」
俺は告げる。
「お前を含め・・・オーガニクスを、残したままにするわけには行かない。
これは俺達のような弱い生物には強力過ぎる。もてあますと言う事だ。
この先には破滅しか残されていない・・・」
「これは!神が俺に与えてくれた力だ!何かの間違いで手に入れたお前に何がわかる!」
俺の力にカルバンは取り乱している。
「この下らない力で何ができる?力に振りまわされて何ができる!!」
俺の体が光る。賭けだ。回復してようが、していなかろうが俺はカルバンを倒さねばならない。
リボーンしたオーガニクスは、リボーンしたオーガニクスでしか倒せない。
「うぉおおおお!」
俺の生み出す光に包まれながらカルバンは叫ぶ。
俺の意志が自身の力を呼び起こす。この状態でこの力は危険だ。
だが。ここで退くわけには行かない!
「俺もあいつも、お前も!あわれ過ぎて滑稽だ。こんな下らない物に左右されている!」
俺はそう叫んだ。力がなければ何も出来ないのか?そんなはずはない。
力だけがすべてであってはならない。
「・・・死ねと言った筈だぞ!!」
カルバンは立ちあがりながら低く叫ぶ。
「さっき言ったはずだ。けりをつける。お前にも。俺にも。」
俺はオーガニクスをリボーンさせた「この力は!俺だけのものだ!」
カルバンは叫びハンマーを光らせる。
「おおおおおおおおおおおおおおお!」
俺とカルバンは同時に叫び合い瞬間移動を繰り返し
何度も何度もお互いの武器を撃ちつけ、理力のすべてをぶつける。
その余波で大地は避け崩れていく。


戦いの光の中で、
カルバンはフラッシュバックする記憶をみた。
彼には彼の信じるものが絶対だった。それだけの記憶がある

・・・

「カルバン!カルバン!」
その男は少年を揺らしながら語りかけていた。
「なに・・・父さん?」
目を擦りながら少年は彼の傍らに立つ親である夫婦に語りかけた。
「逃げるぞカルバン。ここはとんでもないペテンだ。騙されていた」
その父親は少年に話しかける。
「え?何を言ってるの?」
「騙されていたのよ。早くばれない様に準備して!迎えに着たのよ」
少年の母がカルバンに小声で話しかける。
「・・・」
少年は何も答えなかった。彼の目のまで友人が神を疑い、庭に埋められていた。
友人の両親は子供を殺された上に神罰を受けさせられていた。
「早く・・・」
少年は下を向き頭をひねった。
「どうした?おい!」
父親は少年の方を掴んだ。
「・・・さ・わ・る・な・よ」
少年はそう言い父親の腕を叩いた。
「!」
父親と母親は信じられないような顔をしている。
「この悪魔め!教えにそむくと言うのか!」
少年はその夫婦を罵倒した。少年の中では神は絶対になった。
「か・・・カルバン!」
母親は顔をおおった。
「おい!だれか!悪魔だ!悪魔がココにいるぞ!誰か居ないのか!」
少年は叫び警護と思われる影が入ってくる。
「どうした?カルバン。?なんだ?この者達は?」
警護の問いに少年は答えた。
「背信者だ。連れていってくれ。目障りだ。」
「カルバン!」
その夫婦は叫ぶ。そしてドアは閉まりカルバンの部屋は静かになった。
耳に最後の呼ばれた自分の名前が残る。なぜか涙がこぼれたが理解できなかった。
「・・・神を冒涜するものは・・・」

・・・

「死んでしまえ!」
ハンマーの渾身の一撃をくらい膝を突く俺にカルバンは叫んだ。
大地は裂け、森は焼け、空は黒く染まっている。
戦いの余波で大地が細かく揺れていた。生存するのは俺とカルバンだけだと思われた。
ハンマーの力で俺は剣を離してしまった。
「これで最後だ!」
俺の攻撃を受け、傷だらけのカルバンはハンマーに理力を込める。
「・・・」
俺は何も言わなかった。もうお互いに限界が近いとわかっていた。
「!?」
その雌雄が決しようとしたその瞬間、カルバンはよろけ急に俺の足元に倒れる。
関節や体のあらゆる所から豪快に黒い液体を吹き出させる。
「・・・なんだ?た・・たてない」
カルバンは弱々しく喋る。俺はゆっくり立ちあがる。
「・・・俺はこれを狙っていた。俺とお前は互角・・・いやお前の方が強かったかもしれない」
カルバンが倒れながら俺を探す。彼の体はリボーンした状態ではなくなっていた。
「どう言う・・・ことだ・・・」
カルバンはかすれた声を出す。
「お前は急激に成長したうえに理力を使い過ぎた。もう理力が底をついたという事だ。」
「な・・なに?」
「俺は理力を防御に理力を回し抑えていた」
「力が抜ける・・・俺は」
「過度の衰弱だ。死ぬな」
俺は冷静にそれを告げる。オーガニクスの中心は人間だ。
過労させ過ぎれば中の人間が耐え切れなくなる。
カルバンは弱々しく震え力を振り絞って叫んぶ。
「・・・なぜですか!・・・すべて!すべてを捧げたのに!」
「・・・神様は残ったお前の命をご所望だ」
俺は神の変わりに答えた。
「・・・ロイドォ・・・」
俺は剣を拾い握る。
「お前には必ず神罰がくだる!アハ・・アハハハ」
カルバンは飛沫音と共に笑う。そして黒い飛沫が俺の顔を濡らす。
「そうだな。ついでにお前の分も罰されてやるさ」
俺はそう言ってカルバンの胸に剣をつきたてた。
音をたてて黒い液体が吹き出す。
カルバンのオーガニクスは白くなっていた。
完全にカルバンの息の根を止めた事を意味した。
「残りの・・・オーガニクスの回収をしなくてはな・・・」
カルバンとの戦いで小刻みに大地が揺れている。
戦いの最中吹き飛んだオーガニクスを探さなくてはならない。
だがコレは共振でどうにでもなる。
「・・・」
俺は辺りを見まわした。
カルバンがオーガニクスをフル活用したおかげで、俺も対抗せざるを得なかった。
結果、一体は荒地になった。瓦礫しかない。
荒れた大地が俺の前に広がっていた。


俺はカルバンを含めた5体と海中に落ちた1体の合計六体のオーガニクスを回収し、
月へ瞬間移動し戻った。行きと違いはっきりとイメージがある。
すぐに戻ることができた。


俺が月へ瞬間移動した時、またリボーンする力を失った。
あの戦いの後に、この距離を移動したのだから上出来だ。
「・・・」
俺はオーガニクスで地球で拾った六体のオーガニクスを一体ずつ予備ポッドに収納した。
これで俺は長村賢悟という人間の野望を完全に止めた・・・とはいかなかったが
ある程度阻止は出来たはずだ。
そしてオーガニクスが完全には破壊できない以上、ここにある12体を
人間では手の届かない所へおく事で封印を考えた。このポッドを太陽系外へ射出する。
コレでオーガニクスの存在は金輪際抹消されるはずだ。
作業中、俺はなぜオーガニクスの為に動いたのかをずっと考えていた。
どこかで自分が長村賢悟である事を意識したのかもしれない。
今となっては長村賢吾がオーガニクスによって、自身を裁いて欲しかったのかも知れない。
オリジナルである彼が憎かったのか?それとも彼を救いたかったのだろうか?
今でもわからない。きっと答えは出ないだろう。
しかし俺が生きている意味はこの為にあったような気がする。
オーガニクスのポッドを確認していると、一体消えていた。
「!」
同時に気配を感じ振り返った。何かが擦れる音か響く。
「・・・」
俺の背後には一体のオーガニクスが拍手をしていた。
「やぁアンデット。おめでとう。良くそろえる事が出来たな」
その声には聞き覚えがあった。
「・・・ラズロ・・・」
俺はその名を呼んだ。
「オーガニクスというのは拍手が出来ないんだな。ただつまらん音が出るだけだ」
ラズロはゆっくり続ける。
「どうして俺を生かしておいたのかしらんが・・・裏目であったという事でいいのかな?」
ラズロ俺の方に歩を進めマントを武器に変える。
そのオーガニクスの武器は斧。俺が見た長村健吾が扱っていたオーガニクスだった。
「安心しろよアンデット。お前が拾ってきた六体、あとショーンとレベリア、他2体・・・」
ラズロは両手で斧を構えながら喋る。
「そしてお前と・・・俺。全部で12体・・・そう俺さえ倒せば全部揃うぜ」
ラズロは歩を止めた。かなり近距離にいる。

あの記憶の中で自分であり自分ではない、
長村賢吾の乗っていたオーガニクスが目の前に立っている。
まさかこのオーガニクスを目にする事になるとは思わなかった。
長村賢吾は過去の人間だか、彼の乗ったオーガニクスは確かに前にいる。
・・・あの記憶を見た俺が、間違えるわけがない。

「ラズロ・・・お前は何を望んでいるんだ?」
俺は質問を投げかけた。
「なにを?いやなにも。ただ俺が死んでいない以上ハッキリさせておきたいだけさ」
「・・・今更」
「俺達は傭兵だろう。俺達にできる事は馬鹿みたいに戦って、馬鹿みたいに殺すか、殺されていくだけだ」
俺はマントを剣に変えて答えた。
「・・・そうだったな」
「そうだよ」

ラズロの言葉を始まりの合図として、
俺とラズロの武器が激しくぶつかり膠着する。
「俺は騙されてる奴を見るのと、強い俺が好きなんだよ!だからお前だけは消しておきたいんだ」
斧に力が入る。
「俺は消えない!まだやるべき事が終っていない!」
俺は叫び剣で押し返す。
「そんな事と言わずに死んでくれよ!」
俺の剣とラズロの斧が離れ何度もぶつかり合う。
このラズロのオーガニクスは俺には最後の壁に見えた。長村賢吾と戦っているようだ。
「お前を倒しすべてを断ち切る!」
俺にはそれ以外にない。俺は戦意をもってラズロに襲いかかる。
「それだ!もっと血を流そう!苦しもう!刺せ!切付けろ!だが最後はおれが勝つ!」
ラズロも俺も理力を使わないで切り合った。お互いに理力を使う余裕がなかった。
装甲が飛び散りオーガニクスの血であたりが染まっていく。
一心不乱に攻撃し、命の奪い合いをした。
俺はラズロが憎いわけではない。
ただ自分の為に他人を傷つける行為をやめる事が出来なかった。
この戦いの意味はお互いの存在を守る事だけだった。
どのくらい叩き合ったのだろうが。
お互いに深くめり込んだ武器を抜き、お互いが相手の体に武器を突き刺し合った。
俺はリボーンできない状況でラズロと・・・長村賢吾の斧のオーガニクスと戦っている事に意味を感じた。
「アンデット。そろそろ勝負を着けようぜ!」
ラズロは攻撃の手を緩め上段に構えた。
俺もそれに習い構えなおす。
「同感だ!」
俺はそう言って剣を振りぬき、ラズロは斧を振り下ろした。
ラズロが振り下ろした斧は俺の肩から突き刺さり俺の胸を裂いた。
オーガニクスから血が吹き出し飛沫音をだした。
俺はラズロの斧を体で受けていた。深く斧が体にめり込んでいる。
「・・・ラ・・ズロ・・・・?」
俺はその名前を確認する様に呼んだ。


意識が一瞬だけラズロではなく長村健吾を見ていた。
長村賢悟を切りつけたかのような錯覚をした。
だが、俺の剣が襲ったのはラズロだった。

俺の剣は彼の下腹部から肩口に抜けかかっていた。
相打ちだが、ラズロに致命傷を与えた。

ラズロの傷口から激しく黒い血が吹き出し俺を濡らす。
ふいにラズロの腕が伸び俺の頭を掴んだ。
「二回も負けちまった・・・笑える・・・」
腕はゆっくりと俺の頭から離れ床に上半身の半分ごと落ちた。
「・・・」
俺は理力で傷を治し立ちあがる。ラズロであったその殻を集める。
まだやらねばならない事が残っていた。始めから考えていた事だ。
長村賢悟の作った兵器をこのまま置いておくわけにはいかない。
オーガニクスも。俺も。
この兵器オーガニクスは人に触れてはいけない。俺達は手に余るものは持つべきではない。
道具は振り回すもので振りまわされてはいけないからだ。

俺は理力を使い、オーガニクスの傷口を再構成させた。

「・・・道連れが俺だと不服だろうが我慢してくれ」
俺も太陽系外へオーガニクスを監視するために向かう。
命がどこまで続くかわからない。
だが、巨大過ぎる兵器を命が続く限り監視する事しか償う方法がなかった。
俺がオーガニクスに乗ったままポッドに入ったその時だった。


「どういうことだ!!」
俺は叫んだ。ポッドからすぐに出て月面へ向かう。
ここに12体のオーガニクスがある。すべてあるはずだった。
しかし、確かにオーガニクスの気配を感じる。
体に感じるこの力はあまりにも強大だ。
俺に理力はあまり残されていないが、俺は行かなければならない。
俺しかいない。このままにはして、良い訳がない。
月面まで出た俺が見たのは・・・

宙に浮き俺を見つめる一体の・・・オーガニクス。
「・・・13体目・・・?」
確かに12体集めた。目の前のオーガニクスは見たことがない形をしていた。
そのオーガニクスの武器は剣だが・・・俺とは全てが違う。
そしてリボーンをしていないにもかかわらず、強力な理力を感じる。
「・・・」
そのオーガニクス左手を上げると理力を飛ばす。光が伸び消えると地球の周りがいくつか光る。
数は100ほどが、あの場所は・・・軍事衛星だろうか。
破壊をするタイプのオーガニクス・・・戦わなければならない。
俺は剣を構える。相手はイレギュラーだ。12体ではなかったというのか。
すると13体目のオーガニクスはゆっくりと月面に着地した。
静かに俺を見みつめる。彼は動かない。
「・・・オーガニクスを降りろ。それ以外はない」
勝てるかわからない。だが俺は戦わなければならない。
俺を見つめていたオーガニクスから声が聞こえる。
「・・・今、衛星を破壊しました。これであの星は焼かれずに済みます」
?どういうことだ。焼かれる?
「説明すると・・・貴方があの青い星に行ったことで、未曾有の危機と判断したのでしょう。
人造の?よくわかりませんが理力のようなもので戦闘が始まるところでした」
彼は・・・何を言っているのかわからないが、確かにありえる。
国同士がお互いを疑う攻撃力をもっていた。現にカルバンと戦った土地はなくなったのだ。
「何だお前は?・・・まぁいい、まずは降りろ」
俺は再びオーガニクスから降りることを促す。
「・・・それはできません。あなたの目的はわかっているつもりですが・・・」
その言葉を聴いて俺は彼に襲い掛かった。
降りる意思がない以上、戦うしかないのだ。
しかし、その剣は彼の左手にあっさりとつかまれる。
その力はすさまじくピクリともしない。
「・・・理力を使い尽くした・・・貴方の剣では無理だ。
理力を使い切ったことがわかっているから、姿をあらわしたんです」
「・・・なんだ!何を言ってる!」
俺は理力が枯渇している。勝てる見込みはないだろう。
これだけの力の差だ。だからこそ、この強大な力を野放しにはできない。
逃げることがもできないだろう。だが、それでも!
俺は彼を止めなくてはいけない。
「・・・シオンさん。すいません。付き合ってもらいます」
「シオン?」
俺はロイドだ。誰と勘違いしている。
「・・・僕はアレク。覚えておいてください」
そういうと彼の力がまぶしく光る。
「心配しないでください。少なくともこの状態でオーガニクスはあと何年・・・
気が遠くなるほどの年月を重ねてもある時まで見つかることはありません。その時に移動します」
まったくの理解の範疇の話だ。
「な・・・なにをいっている」
思わず答えてしまった。シオンとはなんだ?
「理解できないのはわかっているつもりです。ただ、今は僕に付き合ってもらうしかない」
アレクのオーガニクスが強く光り俺をも巻き込む。
経験がない感覚。目の前が真っ白になる。

そして俺とアレクのオーガニクスは月面から消えた。
そこには何もなくなっていた。


―オーガニクス未来編<ロイドとオーガニクス> 終―


第二部 現在編へ続く
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