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過去編 第二話:「なんで僕が!」

この世界で少年が気がついた時には、彼はアーベンドの一室にいた。
何も無い灰色の部屋にベットだけがあり、その上に自分がいた。
見た事もない環境を見渡し、呆然としていた。
近くに少女がいた。13歳くらいだろうか。
使い込まれた様な服を着てエプロンをつけていた。
「目覚めたのですね。将軍を呼んできます」
少女はそう言うと足音を出して部屋に出て行くと少したって、
そこに煌びやかな鎧をまとった男が現れた。
40歳くらいか、いかつい顔をしている。
「目覚めた様だな。明日に王への謁見がある。わかるな?」
男は彼にそう告げたが、唐突すぎるその言葉は到底理解できなかった。
「・・・なにいってるんだ?というかここは何処だ?」
彼は男に問いかける。
「驚いたな。何もわからないというわけか?ということは俺の顔も知らんのか?」
「・・・しらないな。悪いがこの状況自体が把握できていない。
状況を教えてくれないか?」
「記憶喪失か?この辺は戦争が多いからな。無理も無い。
ショック状態の様だな。」
彼は答えるわけでもなく耳を傾ける。
「オレの名前はゲイン。この国で将軍をしている。」
そう言うとゲインは国の説明を始めた。

この国アーベンドが軍事国家である事、
始まりは集落の戦闘民族から発生しており
国の利益は階級によって平等に配布される。
つまり国民は国が存続している限りの安定が約束されている事になる。
また、この国は新しい仲間を快く迎えるが裏切りはけして許さない。
つまり一度足を踏み入れたら二度とこの国を離れる事はできなくなるのだ。
その為に、この国を訪れた者は謁見という儀式をする。
この国に訪れた者は必ず王に謁見して忠誠を誓い、
一生の居住権と引き換えに王への忠誠と永住を誓う。
従わなければ人生はそこで終わるのだ。
続けてゲインは彼の事を話し始める。

彼が雨の日に土にまみれて倒れていたと、
2日間眠っていた事も告げられた。
そしてゲインは彼に質問した。
「お前は4体の巨人の事も覚えていないのか?」
質問された彼は顔色が変わり、
ふらつく身体をおこしてゲインにしがみつきながら言う。
「頼む。そこにつれていってくれ」
「もう少し休んでからに・・」
「今だ!・・・すまない。だが頼む。」
「・・・良かろう」
ゲインは彼を兵器庫へ連れて行き、
横たわる4体の銀のマントのような物に包まれたオーガニクスを見せた。
どうやら彼と共に見つかったものらしい。
彼は青ざめ、ゲインの背から降りると、何かに気づいた様に一つのオーガニクスへ向かった。
「おい!無茶をするな!」
ゲインは叫んだが彼は止まらない。
彼が足元へ近づいた時、
今までピクリとも動きもしなかったそのオーガニクスは、胸元へ彼を導く。
オーガニクスは胸元を展開し彼はそのまま中へ入り融合した。
白いオーガニクスが徐々に灰色になる。
「・・・オーガニクス・・・この肉体が変わる感覚を俺は受け入れる事ができる」
彼、いやオーガニクスは起き上がり辺りを見渡した。

アーベンドの衛兵達がざわめき集まり出した。
巨人が目の前に立っているのだ。
「・・・気力が上がらない。これではすべての力は引き出せない・・・」
マントを翻し「・・・理力は・・・」と呟き、
オーガニクスは軽く扉に手を置くと
「おい。この辺にいる奴は伏せておけ。」
と伝え、手をかざした壁を吹き飛ばし、大きな入り口を作った。
響く轟音と埃にまみれる兵士達。
「このくらいはできるか・・・」
埃まみれのゲインは顔を真っ赤にして叫んだ。
「ななななんて事を!ただで済むと思うなよ!」
「つい壊してしまった。確認をしたくて焦ってしまったようだ」
「あああ、焦ったといってもなぁ・・・」
ゲインは落ち着きを取り戻し冷静に考えた。
・・・壁が壊れた。
巨人がやった。
巨人の中にいる人間がやった。
その人間を誰がつれてきたか・・・。
・・・・・・・・・「ああ、オレだ。・・・ええっ!オレ!?」
再び慌てふためき愕然とするゲインの背後より、
野太く、威厳に満ちた声が騒然とした武器庫に響く。
「なにがあったんだ。伝えろ!」
ゲインは声を聞くと、あわててその声の主の元へ近づく。
がっしりとした身体に毛皮のついたマントをはおり、
若い精悍な顔つきと、頭の冠が地位の高さを物語っている。
「報告します!一昨日拾った男が巨人を使って壁を破壊しました。
連れてきたのは私です!この罰は受けます。」
ゲインは腰の剣をその男に差し出した。
「私は壁とお前のように優秀な男を比べるほど愚かではないよ」
そう言うと剣を手で差し戻し巨人を見定めた。
「王様・・・・」
ゲインはホッとした様に呟いた。
巨人となった男はその光景を見て
「・・・アイツが王様か。なかなかの男の様だな」
と感じた。
オーガニクスである彼の視線と、王の視線が交差する
「・・・コレは・・・救世主かもしれない・・・・」
王は呟いた後、急に声を張り上げた。
「おりてこい!巨人の中の者よ!」
人の上に立つ風格がある。巨人と王の間に沈黙が広がる。
彼は考えていた。このままこの場所を吹き飛ばしたところで何もならない。
巨人はひざまずき、胸を開き彼は外に出た。
「この!」
ゲインに取り押さえられ彼は「ウェ」と良く聞き取れない言葉をだした。
「私はアーベンドの王。カイル。貴公の名は?」
彼は答えようとした。
「ぐぅぅ」
ゲインという屈強の男に押さえられては答えられない。
「ゲイン将軍。彼を放してくれないか?」
「ハッ!」
ゲインは頭を軽くこずいて彼を放した。
彼は身体と服を整え、咳払いをし、こたえた。
「名は・・・わからないんだ。好きに呼んでもらって構わない。」
「?、まぁいい。おぬしは武器庫を壊した。これは重罪である。わかるな?」
カイルは淡々と答える。
「ちょっとまってくれ。俺を死刑にするのは簡単だ。」
彼はつづける。
「交換条件といかないか?」
若い王は答える。
「聞かせてもらおう。君の今後がかかっている慎重にな。」
さりげなく重圧をかける。
「オーガニクスでこの国の為に動く。その代わりに俺を生かせてくれないか?」
王は考える。くしくも彼が出してきた条件は、彼が出そうとした条件だ。
「・・・何が望みだ?」
王は彼の腹を探る。
「言ったとおり命と生活だ。」
状況が飲みこめるまでのな。と心の中で呟く。
「・・・解った。条件に応じよう。お主には家と従者を与え騎士長の地位を与えよう」
王は続ける。
「仮の名も与えよう。おまえは今日からシオン。この国で戦士という意味だ」
「シオン・・・」
彼、シオンは呟く。
「不満か?いい名前だと思うが」
「イヤ・・・いい名だ。気に入った。」
「ではシオン最初の仕事だこの辺りを片付けろ。
そのあと広間にこい。皆に紹介してやる」
王様はニヤリと笑い、高笑いし城へ戻って行った。
「くえない男だ」シオンはそう思った。


そうして今日、彼、シオンはリラーン制圧部隊としてここにいる。
シオンは自分が作った荒地を見渡す。
「・・・これでよかったのか?」
リラーンの戦場一帯を吹き飛ばした巨人、
<オーガニクス>はそう呟いた。
「加減はしたつもりだが・・・目的があってのことだ」
銀のマントを翻しオーガニクスは城へ歩を進める。

ゼオは意識を取り戻した。
自分にのしかかる重さで息苦しさを感じたのだった。
今、何が起きたのか検討がつかない。
まずは自分にのっている重いものをどかす。
生ぬるくザラザラした重いもの・・・
それはさっきまで苦戦した竜たちと、敵、味方兵士身体であった。
「コイツラのおかげで俺は突風を避けられたのか・・!」
ゼオは城のことを思いだしリラーン城を見据える。
廃墟にたたずむリーラン城。どうにか全壊はまぬがれたようだ。
「さすがに城は頑丈か・・・しかし・・・あの光・・・」
その時地面が揺れた。ゼオは少し前の記憶を取り戻す。
敵兵士の隊長は気になることを言っていた。
目を凝らすと平野に五メートルほどの影を見つけた。
「・・・巨・・・人・・・これをアイツだけで・・・」
鎧を全身に身にまとい左腕に剣を持つ灰色の巨人・・・
巨人は静かにただ立ち尽くし、二つの瞳は森を見ていた。
「なんだ?森になにか・・・いや、そんな事より・・・」
ゼオはまずは城に戻ることをきめた。
自分の精神も、身体も、鎧もすべてがガラクタとかしていた。


「ゲェホ。ゲホ」
アレクに土砂で隠されていたセリアは、
ムセながら砂の山から這い出て来た。
目の前の翼竜の血の匂いと、赤い大地に血の気を引くのを意識した。
その中心にいるのは血だらけの巨人。
巨人こそがアレクと感じた巨人だった。
巨人は膝をつきピクリとも動いていなかった。
「アレク!」
セリアは叫んだ、そうする事しか出来なかった。
それでもオーガニクスはピクリともしない。
セリアはアレクを失う最悪の事態を考え、
オーガニクスへ駆け寄っていっていた
「アレク!アレク!アレク!」
足元を翼竜の返り血だらけにしながら、セリアは駆け寄る。
オーガニクスという不思議な巨人の中の、
アレクが無事かは解らないのだ。
セリアはオーガニクスの腿を手でたたく。
「アレク!返事して!アレク!」
その問いかけにやっと反応したのか、
オーガニクスが動き、声が響いた。
「セリア・・・よかった・・・無事だったんだね」
オーガニクスからアレクの声する。
「生きてるのね?ケガはない?大丈夫?」
セリアは聞き返した。
「僕はケガしていないよ・・・大丈夫・・けど」
アレクの言葉に熱がこもる。
「僕が!翼竜は逃げていたのに!捕まえてまで殺したんだ!僕が!」
「アレク・・・」
セリアは少年が動揺しているのを感じ言葉をつまらせた。
「みてよ!ここは血だらけだ!全部僕がやったんだ!僕が!」
その言葉にハっと気がついたように、セリアは辺りを見渡す。
彼女の周りにを囲む、むせ返る血の匂い。赤い大地。散らばる肉。
「こんなに嫌な感じなのに何処か満足してる。僕は!僕は一体!」
アレクは、オーガニクスは荒荒しく喋りセリアをみる。
セリアはフラフラしていた。
「セリア?」
アレクはセリアに疑問をかけたがもう遅かった。
「ワー」
平穏な日々から、急に血なまぐさい状況に置かれたセリアは、
聞き取れない声をだして倒れてしまった。


湖のほとりに巨人と寝かされている少女がいた。
巨人は心配そうに、その少女の顔を覗きこむ。
「うぅ~ん」
その少女であるセリアは、うめき声をあげて目を覚ました。
ゆっくり目をあけると、目の前に巨人がセリアの顔のすぐ近くにあった。
「うわ!」
セリアはビックリして飛び起きたが、すべてを思いだした。
この巨人は幼馴染の男の子だと。
「だ・・・大丈夫!?」
巨人はアレクの声でセリアに話かけた。
「うん・・・どうにか・・・アレクがココにつれて来てくれたんだよね」
セリアは辺りを見まわして、
自分たちが良く知っている湖の風景だと理解した。
「セリアが急に倒れたから、いつも来てた湖につれてきたんだ。」
「そう・・私、長い間倒れてた?」
「いや、運んで来たらすぐ目が醒めたから。」
「迷惑かけてゴメンネ」
「な・・何を言ってるんだよ。」
アレクは続ける。
「大丈夫?」
「うん・・ところで・・巨人から降りれないの?」
やはり話をするなら、いつものアレクと話をしたい。
そう思うのは当たり前だ。
「降りれるけど・・・まだ降りちゃいけないんだ」
「え?なんで?」
「・・・解らないけど感じるんだ。」
「どういうこと?」
「なんていうのかな。呼ばれている事がわかるんだ。」
「何を言ってるの?」
「僕にもわからないけど、まずはリラーンに帰らなきゃならない。」
「・・・・」
「だから巨人から降りたいけど、今はまだ降りれない。」
「わたしには良く解らないけど、戻らなきゃいけないと思うのね?」
「うん。上手く言えないけど、会わなきゃいけない人がいるのを感じるんだ」
「わかった。じゃぁ戻ろう。」
セリアは、今から行こうとしている出身国が戦場になっている事は予想していた。
しかし、身内とも言えるアレクの決意が揺るがない以上はしょうがないと考えていた。
「・・・ゴメン。僕は一人で行くよ。セリアは待っていて。」
アレクは申し訳なさそうにそう言った。
「なんで?私は一緒につれてってくれないの?」
「危険だよ」
「そんなのは知ってるよ。一人は嫌なの!」
すべて決心した上で、セリアは叫んでいた。
「ありがとう。でもつれてはいけない。必ず迎えにくる。だから・・・まってて」
アレクの言葉は重い。
セリアは意思を感じて、アレクの言う事を聞こうと思った。
「・・・必ず迎えに来てくれる?」
「必ず。約束する。ヤバそうだったら帰ってくるよ。一人にはしない」
「約束だよ」
「うん」
跪いていた巨人は立ちあがった。
「行ってきます・・・!」
アレクは空高くマントを翻し飛び立った。


リラーン城壁の兵士が叫ぶ。
「伝達です!巨人が城へ向かってきます!」
その知らせは城下町をとおり、城まで届く
「アーベンドがあんな巨人を使ってくるとは・・・」
城に着いたゼオは食いしばる。
今まで数々の戦線を潜り抜けてきたゼオだが、
今回ばかりはまったく策がない。
「こちらにも巨人が現われでもしないと・・・」
ついつい呟く。もう何も考えつかない。弱気になるのはしようが無い。
広間の奥にいた男が叫ぶ。
「ゼオ!弱気になるな!それでは城や城下町に避難してきた民を守れないぞ!」
男の名前はテリアス。細身で豪華そうな、
蒼いマントを羽織ったこの男がリラーンの新しい王である。
先代の王が戦の古傷で死に彼に代わった。
そこから彼の評判は始まった。
土地開発と水路開拓。町は豊かになり民に余裕ができた。
豊かな国力は軍事強化に繋がり、田舎の国は大国となり名前を挙げた。
その国も今終ろうとしている。彼は必死だった。
「我々はまだ終わったわけではない!お前も!私もいる!」
テリアスは続ける。
しかしここまで強大にした国が、
巨人オーガニクス一体のお陰で危機に貧していた。
「王様・・・」
セオはこの絶望的ともいえる状況の中で、必死に策を考える。
しかしあの強大な力の前に何をすれば良いか想像もつかない。
考えているうちにも、シオンのオーガニクスがこの城へ
じわりじわりとやってきてるのだ。
「さて、どうしたものか・・・」
テリアスは模索するが豪傑で知られるゼオが弱気になる程なのだ。
巨人にかなう策があるはずも無い。
考えられるのは敗北時の条件の折り合いをどうつけるか。
そのくらいしか考えられなかった。
「すぐそこまできましたぁ!」
情けない声を見張りの兵士が上げる。
「情けない声を上げるな!
ここはアイツの3倍も高さがある。そう簡単にはこれまい」
ゼオは言ったがそれは間違いだった。
オーガニクスは宙に浮き、窓辺の近くで停止した。
「飛んだ?浮いているのか?なんで?」
ゼオは絶句した。信じられない光景だった。
窓から巨人が室内を覗く、その赤く鈍く光る瞳は魔物を連想させる。
皆が竦む中、一人の男が巨人の前にでて声を張り上げた。
「我が名はテリアス!この国の王だ!まず貴公の名を教えてもらおう!」
テリアスは内心恐怖に縛られていたが、
王である身で、部下に弱みを見せることはできない。
また、その恐怖を感じさせないほどの堂々とした物言いであったが
テリアスには一つ疑問がある。
勢いで叫んでしまったが言葉は通じるのだろうか?
少しの沈黙が続き巨人とテリアスの視線が交差する。
「・・・私の名前はシオン。この巨人、オーガニクスの使者だ。」
オーガニクスはシオンは王を見据え伝える。
「・・・オーガニクス?」室内がざわめく巨人は言葉を喋ったのだ。
オーガニクスシオンは室内を見渡した。
するとざわめきはおさまり、また静かな空気が流れる。
「条件は一つ、この国をわれらが国としたい。
戦闘関係者以外の国民の安全は保証する」
シオンはそう告げ、テリアスの言葉を待った。
つまり兵士などの命は保証しないということだ。
テリアスは言葉に詰まる。この後どう動くべきか?
「交戦は諦めることだ。
この国は、私に傷をつけるさえできるとは思えない。
民の為にも降伏を勧める。」
シオンは続けてテリアスへ迫る
「・・・・」
王であるテリアスは言葉に詰まる。そうかもしれない。
この兵器オーガニクスが敵国にある以上、もう交戦できるとは思えない。
今、命があるのでさえ奇跡なのだ。
長く続いた国家、リラーンの繁栄もここまでと認めざるをえない。
「時間をやろう。良く考えることだ」


シオンはそう伝えた瞬間、
「テリアス王!も・・もう一体巨人が現れました」
監視兵がうわずりながら報告をする。
その言葉にテリアスは言葉を失った。
「もうダメだ・・・」
兵士達が口にすることは、すべて絶望感だけが目立つ言葉だった。
「うろたえるな!まだ我々の国が滅びたわけではない!絶望するにはまだ早いぞ!」
自分を奮い立たせる様にテリアスは叫ぶ。
「そうだ!我々はまだ負けていない!自分を取り戻せ!」
ゼオもそれに続く。まだ大丈夫だと信じたかった。
テリアスは窓へ近づき外を見る。
確かにもう一体のオーガニクスが、とてつもない速度でこちらに向かっている。
「厄介だ」テリアスはつくづくそう思った。
巨人の力は嫌と言うほど理解した。抗うすべも持っていないことも。
「こちらにも巨人が居れば戦局が変わるんだが・・・」
シオンというオーガニクスを擁するアーベンドには、
たとえ戦車が何機あっても歯が立たないだろう。
巨人に対抗するには、巨人が必要であるのは理解できている。
そして今までにない圧倒的過ぎる力に、
圧倒され屈服しかかっている自分がいやだった。

何かに気がついた様に、後を振り向き森を見た。
「・・・・・!!ハハハ」
オーガニクス=シオンは声を上げて笑った。
沈黙した城の中に笑い声が響く
「俺のほかにも居たのか」とシオンは呟いた。
「なんだ?」テリアスはそう思ったが黙っていた。
「おもしろい・・・」
シオンは窓から離れ城下へ降りた。
「・・・意外な展開だな。」
シオンは自分の剣を大地へつきたて、腕を組んだ。
まるで何かを待つ様に。
「???」テリオスとゼオは、もう理解できなかった
侵略者が急に笑い出して、動かなくなった。
そのくらいしか考えられなかった。
シオンはずっと前を見ていた。
「・・・この引きつけられる感覚。」
シオンは喜びという感情を得ていた。

もう一体のオーガニクスは砂煙を上げ大地へ、
荒荒しくシオン前へ着地する。
シオンの目の前に砂塵が舞い、激しく煙が沸き立つ。
だがシオンはすこしも動かない。

煙の中の赤く光る二つの目がシオンをみすえてた。
「名はシオン。お前は?」
シオンは目の前に居るオーガニクスに向かって淡々と話しかけた。
「ぼくは・・・」
煙がはれていく。
「アレク・・・リラ-ンのアレクだ!」
目の前にいる、赤く冷たく透き通る瞳に圧倒されつつアレクは答える。
セリアを安全そうな場所に移した後、
存在ごと惹かれるような感覚に従って、
アレクはやってきたが、まさか目の前に
自分と同じような巨人がいるとは考えもつかなかった。
「まさか俺のほかにもいたとはな。散らばってしまったか」
シオンは呟き、その後アレクに話しかけた。
「では・・・アレク・・・」
シオンは大地にさした自分の剣に手をかけ、ゆっくりと引きぬいた。
「このあとはどうする?」
シオンはそのまま剣先をアレクに向けた。
「戦うしか・・・ないじゃないか。」


荒れ果てた大地に立つのは、2体のオーガニクスだけだった。
アレクとシオン、2体のオーガニクスは向き合い視線を絡める。
お互いがお互いを意識し、空気が張り詰め緊張を生む。
オーガニクス=アレクはゆっくりと左手でマントの右肩の部分を握った。
教わったわけではない、それは昔から知っていたように戦う前の準備として、
オーガニクスにとっては自然な行動をとる事が出来た。
「では、始めようか・・・アレク。」
シオンがゆっくりと合図をだした瞬間に、鈍い音が戦場に響く。
アレクのオーガニクスが、マントを大剣に変えてシオンの剣を弾いたのだ。
これが戦いの鐘となり、お互いがお互いを敵であることを実感させた。
衝撃でお互いが体制を崩す。
刹那、シオンは体制を立て直して、再度アレクに切りかかる。
その剣をアレクは後方飛び、身をかわす。
だが、シオンの剣は何度も風切り音を発生させ、執拗にアレクを追いまわす。
静かな殺意がアレクの肌に響く・・・。
シオンとアレクの大剣は、飽くことなくぶつかり合った。
その度ごとに、アレクは自分でも不思議なほどの充実感を覚え始めているのだった・・・。
アレクは決して好戦的ではない。
しかし、この溢れ出る高揚感には抗えない。
なぜか奥からにじみ出る高揚感が止まらない。
「目の前にいるオーガニクスの存在を消したい」
その思いが戦場にうめき声を溢させる。
剣がぶつかり合う中、シオンは足でアレクを蹴るとアレクはよろけて倒れた。。
「やるじゃないか・・・機体に振りまわされる様じゃ死ぬのはお前だ」
倒れるアレクを見据えて、シオンはそう言い放った。
妙な感覚を感じるここでアレクを止めておくべきだ。シオンはそう心の中で決断する。
「ウワァァァァァァア!」
アレクは叫び、再度手の剣でシオンに切りかかるが、
その剣撃はシオンの左手に弾かれた。その瞬間光が弾け、アレクはよろめいた。
まき起こる土煙。オーガニクスは盾をもたない。
その為に自分の生命力、つまり理力を防御壁として使う。
アレクも使えるが自分の精神力が相手の攻撃よりも強くなければ、
理力防御を破壊され斬られてしまう。ある意味賭けになるのだ。
またシオンがリラーンを吹き飛ばす時にもこの理力を使っていた。
防御だけではなく、攻撃に意識を集中すれば、
その光の力で一帯を吹き飛ばす事も可能なのだ。
理力とはオーガニクスの意志の力で目的を遂行する為の力なのだ。

「お前も使えよ。いつまでも剣で防御してたんじゃ攻撃できないだろう」
シオンは冷たく言い放つ。この挑発は理力の妨げになる事を知った上での言葉だ。
煙の中に浮かぶ冷たい瞳がアレクに向けられる。
「うおぁぁぁぁ」
アレクは叫び切りかかるが、シオンはまた理力を使い弾き、
アレクは座りこんでしまう。シオンは何も言わずに見下す。
「・・・俺は何を躊躇しているんだ。」心の声が呟く、
とどめを刺す機会は何度もあったが、彼の中で何かがシオンを止める。
「いたぶる趣味は無い・・・が・・・なにか引っ掛かる」
シオンは感じた事のない気持ちの、理解に悩んだが悠長な事はもう十分と判断し、
自分の剣をアレクの咽喉元に合わせた。
「お前は良く頑張った。終りにしてやる。」
シオンは剣に力をこめたが、急に剣に抵抗を覚えた。
「まだ・・死にたくない!」
アレクは右手で剣先を握っていた。オーガニクスの手から黒い液体がこぼれる。
「最後の抵抗か・・・いいさ。それだけ苦しくなるだけだ」
シオンは力をこめ、アレクの咽喉元に剣を押しこむ。
浅くアレクの咽喉に剣先が刺ささり、黒い液体が飛沫を上げて出てくる。
その返り血を浴びシオンのオーガニクスは鈍く光を反射する。
「ガッ、ハッ」
声にならないうめきをアレクはあげるが、
自分の血のあたたかさにも、確実な死と高揚感を覚えてしまう。
目の前がドンドン暗くなる。

アレクは自分の命が尽きようとしている中、昔を思い出していた。

アレクとセリアはテーブルを挟んで話をしている。
「セリア。僕は今城で働いているよね」
「うん。知ってるわ。どうしたの?」
「でもそろそろ城の労働期間も終わってしまうから独立しないといけないんだ」
「そうね。考えないと・・でもアレクは兵士とか向かないわね。ふふ」
「そんなのは解ってるよ。でさ・・野菜とか育てて生活したいと思っているんだ。」
「いいじゃない。大賛成!」
「それでね・・・これからも・・・あの」
「え?なぁに?」
「・・・なんでもない。」
「・・・んもぅ」
セリアはちょっと寂しそうにため息をついた。
彼女は彼が伝えたい事は知っていて、ソレを彼が口にする事を望んでいた。
だが彼はソレを恥ずかしくて、いつも口にする事が出来なかった。

このくすぐったくも暖かい日がいつまでも続くと思っていた。

「さよならだ」
シオンは相手のアレクの未熟さを、
経験の無さを肌で感じていたが、見逃す気はさらさらない。
このオーガニクスと言う兵器の恐ろしさを彼は理解しているからだ。
「次は戦いの無いところに生まれるんだな。」
剣に力を込めたその時だった。咽喉元から泡が発生しゴポゴポ泡を立てる。
「再生?コイツ!」
シオンは再度力をこめるが剣は押し返される。
「ガパァァァゴバァァ」
アレクが何かを叫んでいるが、気泡音しか聞こえない。
「ゼェリガァ・・・ゼェリガァ」
声にならない言葉でアレクは音を漏らす。
その瞬間であった。
アレクの右腕が激しい光を生み、シオンを弾き飛し後退させた。
「なんだ?どこにその力が!」
この戦いでシオンは始めて警戒をした。
「ガッ・・バッ・・ヴァァ・・グバ・・イギル」
アレクは声を無理矢理あげる。
声が出てきているのは傷が治りかけている証だろう。
「とどめを刺してやる!」
シオンはアレクに飛びかかる。
「ボクは・・・イキるんだ!」
アレクは叫び迎え撃つ2体の巨人は激しく剣撃を繰返す。
鈍い音が戦場に響き、二人だけがお互いの動きを見ていた。
激しく何度も光が発生し消え、また光る。
お互いがお互いの攻撃を理力で弾いているのだ。
「なんだ。俺についてくるのか」
シオンは脅威を覚える。
剣を振りまわすだけの男が、理力を使いこなし自分の攻撃を回避している。
さっきまで圧倒していた相手が、自分と互角の力を発揮し始めたのだ。
「危険だ。」本能がそう告げる。さっきから感じていた違和感も理解できる。
「コイツは危険だ。」シオンの体温が上がる。
幾度も繰り出される剣を、払い除けては剣を振る、それをいくつも繰返す。
「ハー、ハー、ハー、」
アレクはもう自分の息しか聞こえていなかった。
生き残るには抵抗するしかない。
選択肢さえない彼には、剣を振ることしか許されていなかった。
お互いの身体が徐々に傷だらけになっていき、オーガニクスの表面に黒い液体が滲む。
理力を使った時の閃光がよリ激しくなる。
お互いに何度も振り下ろす剣が、風を切る音を発生させる。
「!」
シオンは一瞬の隙を、アレクの動きが一瞬固くなったのを見逃さなかった。
金属がぶつかる音がして剣が空に浮かび大地に刺さる。
動きが止まる2体のオーガニクス。アレクの手元に剣は握られていなかった。
「お前は強かった。機体になれていた分、俺が有利だった」
シオンは体制を立て直し、剣先をアレクに向ける。
アレクは両手を下ろし崩れて膝をついた。
「今楽にしてやる。見逃すにはお前は・・・危険過ぎる。」
シオンは剣を振り上げたその時だった。
「グ・・・」
シオンはうめき片膝をついた。頭が割れるように痛い。吐き気がする
「・・・覚醒発作・・・」
シオンはそう呟いた。
「アレク・・覚えておくぞ」
シオンは崩れたオーガニクス=アレクにそう告げ、
空に向かって剣を振ると、剣をマントに姿に変え翻し、砂煙を巻き上げて空へ消えた。
この戦いはシオンの逃走で終結したのだ。
アレクには状況が飲みこめなかった。
確実に死を意識したのに、彼はとどめも刺さず一言だけ残して消えたのだ。
ただアレクはこの恐怖の時間を乗り切ったのだ。

発作の中、シオンはアーベンドに向かいながら、
今さっきまで戦ったオーガニクスのことを考えていた。

「アレク」

ただ過ぎて行く名前だと思っていた。
だがそれは予想を裏切る結果となった。
どう考えても戦い馴れていないオーガニクスにシオンは手痛いダメージを受けたのだ。
アーベンドから見れば戦局を有利に運んだしリラーンに大打撃を与えたのだから大手柄かもしれない。
だが彼にとっては納得がいく結果ではなかった。そして自分の身体の弱点。
自分の身体が完全ではない事を理解せざるをえない。
「せめて・・城の前までは意識を・・繋がなくては・・」
強烈なめまいと違和感が彼まとわりつくが彼は戻らねばならない。
居場所はアーベンドにしかないのだ。



テリアスは言葉を失っていた。
目の前にもう一体の巨人が現れ、
死を意識した矢先にシオンと名のる巨人と、アレクと名のる巨人が戦い始め、
決着がついたと思ったら再度戦いが始まり、なぜかシオンは撤退していた。
助かったのか、それとも戦局はかわらないのか。
すべて謎を残したままアレクと名のった機体だけはこの国に居残った。
追い出すべきか、交渉するべきか、全てが謎でただ立ち尽くすしか出来なかった。

一方テリアスと同じ場所で状況を見ていたゼオはまったく訳がわからなかった。
現れた巨人が良く知っている少年の声と名前で、
侵略者である巨人と凄まじい戦いを繰り広げたのである。
だが、ゼオが良く知っているアレクと言う少年は戦いは避けるはず、
彼のイメージの矛盾がまた困惑を生むのであった。

やはり心配になり、アレクを追ってリラーンまで来たセリアは、
アレクのオーガニクスが飛んだ時の余波でドロだらけだった。
今日の朝までは明るい町並みの自分たちの町であったが、
今セリアの前に広がる風景は廃墟だった。
「ひどい・・・」
セリアは戦争の余波がこんなに酷いとは思ってなかった。
友達の家も近所の家も全てが消えていて残っているのは、しゃがみ込んでいるオーガニクス、
良く知ってる少年がのっている巨人がぽつんと居るだけだった。
「アレク!」
黒い液体だらけの巨人はピクリとも動いていなかった。
「アレク!」
セリアはもう一度叫び、オーガニクスへ駆け寄った。
さっきまで話をしていたアレクと、話せなくなるのを考えるだけで何も考えられなくなる。
親をなくしてから二人で生きていた。これかも二人で生きていきたい。
そんなことを考えながらアレクのもとへかけよる。
「アレク!アレク!」
セリアはオーガニクスの足をたたき、何度もアレクを呼んだ。
するとオーガニクスの胸元が開いてアレクが流れ落ちる様に出てきた。
「アレク!」
「セリア・・・ボクは・・・」
アレクはそう言うと嘔吐した。
戦いというアレクが無縁の事にたいして、身体と脳が拒否反応をしていた。
「大丈夫アレク?」
セリアはアレクの背中さすって介護する。
「はぁはぁ・・僕が」
「?なにがあったのアレク?
「僕から攻撃した・・・僕から手を出したんだ!」
「え?」

「なんで僕が!」
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