『デザートバイキング 90分―1,500円★★
カップルや夫婦、友人同士もOK!!』
こんな看板を見て、博司は呆れ返っていた。
「ねえ、朱美のいう"バイキング"ってこのこと・・・?」
隣に立っていた巻き髪の女―一応彼女の朱美に聞いた。
「勿論よぉ〜、付き合ってくれるわよねぇ〜?」
はぁ〜これだから女は・・・
俺はひそかに先程財布の中身を確認したのだが、3,000円と少ししか入っていなかった。
危うくとんだ目に遭うところだったわけだ・・・。
『次のお客様ー』
!!
もう俺たちの番なのか!
さっき並んだばかりじゃないか、最後尾に!!
まあそれはさておき、俺たちは一番奥の窓際の席に案内された。
店内はどちらかというと小奇麗で、シックな感じにまとめられていた。
ガサツな感じのBGMではなく、ムード系のBGM。
気のせいか、店員の格好も清楚感がある。
「気に入った?」
朱美はるんるん気分でクロスを広げている。
っておい、デザート取りに行かないのかよ?
「うん?デザートなら博司、先に行ってきてぇ」
いや・・・笑顔で言われなくても行きますけど・・・そもそも誘ったの朱美だろ?
「いいじゃん、早くぅ!朱美も行きたいんだからぁ・・・あ、ほらあ、フランボワーズケーキ!」
まったく・・・これじゃあ話にならないな・・・
「じゃ、俺取り行ってくるわ」
「うん、じゃあ飲み物頼んどくねぇ!」
大げさにバイバイする朱美―。
まったく、付き合い始めて今日ほどテンションの高い日、あったかな?
・・・
バイキングスペースには朱美の言ったフランボワーズケーキをはじめ、ムース、プディング、ケーキ、アイス、ババロアなど信じられないくらいの種類のデザートがこれでもか!と盛られていた。
けれどもっと信じられなかったのは・・・
お、男ばっかり・・・?
そう、店内を見渡すと女の子はほとんど朱美同様、席に座っている。
な、なんじゃこりゃ?
ドン――
「あ、すみませ―」
「博司!」
「ゆ、祐二!」
「なにやってんだよ?ってバイキングか」
「祐二こそ・・・」
「俺はさ・・・彼女に誘われてじゃなくて、彼女を誘って」
「へぇー。祐二ってバイキング趣味なのか?」
「いや・・・そうじゃなくてさ」
「え、じゃあ?」
「ところでお前は彼女―朱美ちゃんだっけ、に誘われて来たわけ?」
「うん、そうだけどー」
「じゃあ話が早いや」
「お待たせー」
「あー、博司遅かったじゃんーってたったこんだけ?」
「うん・・・喋りこんでたらつい・・・」
「もぅー、バイキングはモトとらなきゃあ」
そう言うとじゃあねと軽く手を振って、朱美はバイキングスペースに向かっていった。
「あのー、すみません・・・」
「はい、なんでしょう?」
俺が声をかけたのは若い女店員。
「これで・・・」
そう言って俺は6万円と1枚の紙切れをを差し出す。
「『これで』何を?」
「手数料込みです。ココに書いてあること―暴いてもらえますか?どんな形でもいいですから」
暫くの間があり、分かりました、と女店員は笑ってそれらを引き取った。
「おまたせー!」
朱美は両手に大皿を持ち、その上に半端ない量のデザートを盛っていた。
「あーっ、博司、もうお皿空っぽじゃん!取ってきて良いよぉ? あ、サワー、おかわりするって飲んでないじゃぁん・・・」
「ひろ・・し・・・?」
ニヤリ
「え・・・?」
「本条朱美サン、アナタ、罪ヲ犯シマシタネ?」
「え・・・え、え?」
「本条朱美、ココ『デザートパーラー』ニテ恋人安川博司サンヲ毒殺シヨウト試ミ、サワーノ中ニMGBヲ投入。以上ハ共謀罪ニ該当スルトミナシ、現行犯トシテ逮捕スル」
「そ、そ、そんなわけないじゃない!」
「ナラバコノグラス内ノサワーヲオ飲ミ下サイ」
「わ、分かったわよ・・・う、裏切った博司が悪いんだからあ・・・あ・・・」
パリ―ン
「本条朱美19歳、3時04分52秒、死亡ヲ確認。安川博司ニ対スル共謀罪ノ為、自ラ毒物ヲ投入シタ飲料ヲ飲ミ、自滅。コレニヨリMGB投入ノ事実ヲ裏付ケタ」
博司はマイクで拾ったその声を聞いて満足していた。
「な?だから言ったろ、彼女は浮気してたんだよ、それも一端のIT社長だかなんだかとさ」
「ああ、らしいね。俺を殺そうとしていたんだし」
「そうさ、危ないところだったろ?」
「それにしても、祐二、お前彼女は?」
「ああ、アイツ?アイツは今頃店内でサヨウナラ、かな」
「え・・・『サヨウナラ』って・・・?」
「俺の彼女の場合はさ、博司においての俺みたいにチクれる奴がいなかったからね」
「じゃあ今頃・・・」
「そうさ、MGB入りのコーヒーでも飲んで、お陀仏だろうね―」
実際90分もかからない、だからだったのだ・・・
『デザートパーラー』―表向きはカップルや夫婦、友人と連れ立っていける気軽な"デザートバイキング"
けれどその裏に隠された目的を知らず、今日も情報誌は書きたてる。
『空前のデザートバイキングブーム!!』と。
そして、それとは何の関係もないようにテレビは連日、何人もの行方不明者を放送する・・・
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