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リル
作:リル



no name


あたしには名前はありません。

父親が誰なのか。
母親が誰なのか。
わかりません。

物心がついた時、あたしは『リル』と呼ばれていましたが、あたしはもちろん、日本人です。

今、あたしは【OL】というやつをやっています。意味は..わかりませんが、【OL】と言われます。

TVで見るそれとは違う気がします。昼休みに、カーディガンを肩にかけてお財布を握りしめて、ビル街を歩いてOL仲間とランチになんて行くこともありません。

会社の窓から見えるのは工場と広いゴルフ練習場で、構内は自転車でヘルメットをかぶって移動します。
車通勤なので、もちろん【Suica】なんてものは持ったこともありません。

あたしの上司は作業着を着ています。周りにスーツを着ている人は名古屋からたまに現れる社長、ただ一人です。

通勤途中には、工場が建ち並んでいます。国道沿いの工業団地内にあたしの職場はあります。

道を少し入ると、閑静な住宅街があり、2km四方に渡る大きな公園があります。公園を囲んだ桜並木の道を走るとサッカースタジアムが現れます。家はもうすぐです。

家に帰ると、猫が待っています。
名前は【ヤヤ】です。昔はノラ猫でした。
あたしと同じです。

あたしの家は、とあるマンションの一階の一室です。
小さな庭がついています。

夏になると、屋上で花火を見ます。隣のフットサルコートは夜まで洸々と光が照らされています。遠くからは、サッカーの応援と、踏み切りの音が風にのって聞こえてきます。

ここには居心地のいい風が吹きます。

ギラギラの都会ではないこの町で、一人ではない一人の時間が満喫できます。

柔らかい風が部屋を通り抜けます。
布団の足元には【ヤヤ】がいます。

起こさないように気をつけて、トイレに起きます。
最近は暗い部屋でも眠れるようになりました。だんだんとこの生活があたしの身体に馴染んできました。

明日も早い。
早く眠らなきゃ。














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