ファイアーウォール(8/10)PDFで表示縦書き表示RDF


 
 こんにちは。雨寺です。
『ファイアーウォール』、気づけば一ヶ月放置してました……申し訳ございません。
 次々とアイデアが飛び出してくる一方、それを上手く文章に出来ないつらさというか……とにかく、放置していてごめんなさい。
 また近いうちに更新できたらいいn(蹴殴

 ……いや、します。申し訳ない。

 寒い日が続きますが、どうかご自愛下さい。
 それでは。雨寺でした。
 
ファイアーウォール
作:雨寺かえる



06 覚醒


「あの……天使さん?」

 俺は素直に手を挙げる。

火昏ほぐれでいいさ。なんだ? なんか、わからないことでもあった?」

「すべてがわからないんですが」

「…………」

 あの、そんな哀れみの視線を向けないで。

「……具体的に、なにが?」

 引きつった笑いを作って、火昏ほぐれさんがこちらを向く。

 俺はきっぱり、

「すべて。全部。オール」

 いい放ってやった。

「…………」

 あからさまにいやそうな顔をする火昏さん。天使って、もっと親切だと思ってた。

「だいたい、そっちがおかしいだろ」

 口を挟んだのは瀬奈。こっちも、明らかに不機嫌だ。

「突然なんの断りもなしに俺たちを拉致ってさ。俺たちが文句をいわれるのは、筋違いじゃないの?」

「……それで?」

 不敵な笑みを浮かべた火昏さん。

 天使って、こんなにも人をゾッとさせることができるのか……。

 俺の中の天使像が、爆撃を受けて崩れていく。(ドガァン、ガラガラガラ……)

「君たちはどうするつもりだい? このままお帰りになるかい? もっとも、帰り道を知っていれば……だけど」

「ぐ……っ」

 瀬奈が言葉につまる。

「テメー、汚えぞ!」

「なんとでもいいな」

 俺の暴言にも、天使は涼しい顔をくずさない。

「そう難しいことじゃないんだ。君たちへのお願いっていうのは」

「だからなんだ」

 冷たく跳ね除ける瀬奈。それを聞いて、対峙する火昏さんの表情が変わった。

 ひょうひょうとした雰囲気は消え、その顔は真剣そのもの。何人なんぴとたりともその集中を乱せはしないとまで思わせる。

 火昏さんは、その顔のまま俺たちにいう。

「それに……これは、この世では君たちにしかできない事だ」

「…………」

「君たちには、それを成し遂げる超能力チカラがある」

 超能力チカラ……?

「そう。超能力チカラ

「待って」

 瀬奈が、火昏さんの言葉を遮る。

「その……俺たちにしかできないことだってのは、わかった。でも、目的は何? あなたの話では、それがわからない」

 真剣な顔が、また崩れた。

「失礼。重要なことは最後に言おうと思っていたんだが。さすがに、頭のキレる瀬奈クンは欺けないようだ。いや、たいしたもんだ」

「おだてても何もでないぞ」

「いやはや、手厳しいな、瀬奈クンは」

 苦笑する火昏さん。その途端、再び無表情になる。

「簡潔に言おう」

 キッと見据えられた。

「もう、まもなく、この世は滅ぶ」





「……は?」

「……いや、だからね、この世は、壊滅するの」

「……ふぇ?」

「それを防ぐために、君たちの超能力チカラが必要なんだ」

「ほぇ?」

「……それ、ワザと?」

「うん」

「――そんなあっさり認めるなよ。虚しいから」

「知らんがな」

 瀬奈と同時にツッコむ。

 火昏さんが、引きつった笑いを浮かべて聞いてきた。

「信じる気、ナイよな?」

「うん!」

 元気よく返事する。いきなり信じろというほうが、間違ってるだろう。常人じゃないぜ。(あ、まず人じゃなかった)

「そっかそっか、そうだよな……!」

 その刹那――




「じゃ、信じさせてあげるよ――嫌でもね」

 火昏さんが、怪しく、そして爽やかに笑って、浮き上がった。

「……っ!!」

 紅い風が俺たちを揺さぶる。火昏さんの背中には、いつの間にか煌く紅葉色の翼。羽ばたくたびに黄金の粒子が舞い上がる。

「なっ……なにを」

 涼やかな風は快く感じるはずなのに、今の俺らには不快感の根源以外の何者でもない。

 いや、違う。不快感じゃない。違和感。胸の奥の、頭の奥底に潜む、異物が蠢いている……そんな感覚。

 たった今まで、白と俺と瀬奈と火昏さんの色彩イロしか感じなかった部屋に突然、紅、オレンジ、山吹色が吹き流される。

「……っ、瀬奈! これっ……な、なんなんだよっ!」

「俺がっ、知るわけ、ない……だろっ!」

 火昏さんの翼が放つ茜色の光が、眼に刺さるほど強くなっていく。

「教えてあげよう。――これはキミたちの超能力チカラの、開放。や、正確にいうなら、覚醒・・、かもな?」

 代わりにこたえた火昏さんの台詞が終わった瞬間に、俺の中の違和感はついに弾け飛んだ。

「くっ……ぐあぁあぁ!!」

 奥底から飛びでる叫び。隣の瀬奈も叫んだらしいが、俺の耳には入ってこない。瀬奈の叫びを、掻き消すぐらいの声だった。



 金風颯颯きんぷうさっさつ。ヤツの通り名は、間違っていなかった。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 緩やかな微風が通り過ぎていく。

「悪かったな……手荒な真似をして」

 地に手をつけ荒い息をつく俺たちを見下ろして、バツの悪そうな火昏が翼を優しくひらめかせている。

 俺は思った。ヤツの風は、人を翻弄する。

「てめ……なんの……」

 かすれた声がのどを通る。罵ってやろうかと思ったけど、のどの状態を考えて止めにした。

「ほんとに、悪い。これは、お詫びだ」

 ヤツは茜色に光らせた翼で、俺たちの背中を撫でた。

 途端に、息苦しさが消えていく。翼に拭い取られたかのように。

 復活した俺は立ち上がって、火昏と対峙する。

「何をした」

超能力チカラの覚醒。キミたちはもう、超能力チカラが使える。その証拠に、手を見てみな」

 俺の視線を真っ向から受け止めて、火昏は真剣な顔でいった。

 いわれて見ると、確かに、右手が薄く発光している。いや、発光ていうより、オーラみたいなものがほとばしってる感じだ。

 瀬奈の手も、薄く輝いている。

 視線を戻すと、火昏は真剣な顔を崩さず、静かに口を開いた。

「さっきは、本当に悪いことをした。手荒な真似はしたくなかったんだが、俺のいうこと、信じてもらうにはああするしかないと思った」

 ……俺の心の中で、天使と悪魔が言い争っている。

天使『幸光ゆきみつ! もういいよ。これだけいってるんだから、許してあげよう?』
悪魔『幸光! まだまだ生温いだろうが。土下座くらいさせなきゃ、気が済まないよな?』

 ……俺は、天使の案を採用した。

「もういいよ。もう平気だから」

 それを聞いた火昏は、ニマリと笑う。(背中が、ぞくりとした……)

 同じく復活した瀬奈が、火昏に聞く。

「……で、その、超能力チカラって、なんなんだ?」



「……それは、実際に試してみるといい」

 ニヤリと笑ったまま、火昏が羽ばたく。両手を高く掲げて。

 俺が天使案を採用したことを後悔した刹那、火昏は声高らかに言い放った。

「さぁ、実技試験・・・・だ! 俺を屈服させて、評価『A』もらってみせろよ!」

 火昏の掲げた手に、光が集まる。その茜色の光は輪郭を描き、実体の無い物を創りあげた。

 火昏の左右の手の中それぞれに、無実体の発光物がおさまる。

「俺は本気の30%でいくからな。 なぁに、死にやしないって。銃弾・・だって光なんだから。人間には効かないさ」

 光る二丁の機関銃・・・の銃口は、俺たちをじっと睨んでいる。

 火昏のダークレッドの迷彩服と、やけに似合うと思った。



「……瀬奈? ――生きてる?」

「……何とかね」

 ――俺は、心の中の悪魔がせせら笑う声を、確かに聞いた。
 












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