04 天使の囁き
またやっちゃったなぁ〜。
「は〜ぁ……」
幸光、怒らせちゃった……。
みぞおちにいっぱつってのは、幸光が怒ってる証拠だよ〜。
今日、どんな顔してコーヒー持ってけばいいんだろ……。
いや、いけないのはあたしだよ。いろんなうそついて、幸光を無理やり連れてきたんだから。
でも、あたしは、幸光といっしょに、文化祭を楽しみたかったんだよ……。
わかってる? 幸光――。
「大丈夫だよ、春日ちゃん。幸光くんも、気にしてないよ、きっと」
しょげってなったあたしに、光が優しい言葉をかけてくれた。
それに続くように、みんなもなぐさめてくれる。
「う、うん、そうそう! 気にしてないって。だいじょうぶだいじょうぶ。全然、気に病む必要なんてないよ」
如月も、明るい笑顔でいってくれる。
「てか、あいつうれしそうだったしな。なんだかんだで、俺たちに会えたからさ」
「やかましい自過剰天パ」
「うっせうっせ」
瀬奈と劉之助の、漫才みたいなやり取り。
みんな……ありがとう。
「サンキュ、我が友よ。あたしは、この通り大丈夫。心配かけたな、諸君!」
あたしがおどけると、みんないっせいに気の抜けた、いつもの顔になった。
「だよね〜、やっぱり、そういってるほうが春日ちゃんらしいよ」
光、あたしいつもは諸君なんていってないよ?
「ま、オマエのことだもんで、あんま心配しとらんかったけど」
「蹴り殺されたいんか?」
「スミマセン」
ふん、男は弱いね。
「文化祭行こう、春日」
「うん、そうしよ、如月、みんな」
あたしの言葉に、みんなうなずく。
あたしは、あのときの誓いを護るから。
幸光を、光を、如月を。瀬奈を、劉之助を。
みんなを、護るから。
「さあ、楽しい文化祭の始まりだよ!」
でも、人間は欲張りだ。
あたしは、これだけじゃ満足いかなかったみたい。
心の奥底で、こんなことを考えてた。
ほんとは……幸光がいたら、もっと楽しかったのにな……。
「あーあ……」
またやっちまったよ……。
俺、兼田幸光は、ただいま屋上で懺悔タイムでございます。
ああいうことされると、いくら春日でも許せなくて……。
だから、つい子供っぽいことしちゃうんだよな……。
キズついたかな……キズついたよな……。
あいつだって、悪気があってやったわけじゃないはずなのにな。
俺と一緒に、文化祭に行きたかっただけなんだよな。
「謝んなくちゃな……春日に」
――でも、何で俺なんだろう? あいつなら、ほかに友達いっぱいいるじゃん。
≪それに悩み始めて小一時間経過≫
「さて、いくか」
おおきく伸びをして、俺はいす代わりの段差から腰を上げる。
弁当はもう済ました。あとは――春日にきちんと謝るだけか……。
結局、さっきの答えは出なかったけど。
春日、許してくれるかな……。
まあ、なるようになるか。悩んでたってムダだ。
俺は、屋上の出口の階段を下りようと、一歩踏み出した。
「――見つけたわ」
「――え?」
踏み出した一歩は、どこに着地するでもなく。
そのまま、白い闇に自由落下。
「あー、みんな〜どこ〜?」
どうも、いい年して迷子になりました本篠 春日です。
文化祭の人ごみにまぎれて、みんなバラバラになってしまったようです。
「どこいっちゃったの〜?」
大声で言っても、反応ナシ。きっと、人ごみのざわめきにかき消されちゃってんだ……。
しかたない、呼び出しかけてもらうか。
あたしは、さっきまでとは逆に歩き出す。
「目標捕捉。これより誘致する――」
「え――?」
あたしの足元には、真っ白な穴。
まわりの人たちが、ぐんぐん上に昇っていく(ように、みえた……)
そこで、あたしの意識は、ブラックアウト……。
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