03 Let`s go to our school!
「お、幸光だ! お久!」
「うす」
「うが、反応うっす! もっと元気にいかなかんて!」
俺、いま、およそ一ヵ月半ぶりの学校にいます。
明らかに、俺が迷惑がってるってしってるのにうるさくいうのは、俺の親友、蓮 劉之助と、辻倉 瀬奈。春日には及ばないけど、こいつらのとの付き合いは長い。
台詞の順でいえば、先に声をかけてきたのが瀬奈で、名古屋弁で突っ込んだのが劉之助だ。
瀬奈の髪の毛は特徴的で、茶色い髪が軽く外はねしてる、天然パーマ。その髪の毛は、童顔の瀬奈の顔にはぴったりだけど、男子生徒の制服には、あまり似合っていない。
スポーツ刈りの劉之助の名古屋弁は、両親譲り。ここの一家は、全員名古屋弁ユーザーだ。
「おまえ、プログラムはもう完成したん?」
劉之助がはずむように聞いてくる。遊んでもらえる犬みたいにニコニコしてて、俺はちょっと尊敬を覚える。
俺ははじめてこいつらに会ったとき、こんな風に、すっと笑えなかった。
昔の俺には、刺激の強い笑顔だった。
眼に刺さるぐらい眩しい笑顔だった。
こいつらに感化されて、自然に笑えるようになったなら、俺はこいつらに感謝しよう。
「プログラムはまだだけど、今日はちょっとな。たまにはいいんじゃないかって思ってな。息抜き兼ねて、お前らの顔見に来た」
そういったら、瀬奈は後ろアタマで腕を組んだ。
「なんだそれ、変なの」
うっせ、オマエの髪の毛のほうがもっと変だバーカ。
「あ〜、俺の髪にさわんじゃねえよ〜!結構気にしてんだからさ〜!」
「そ〜お? 私はその髪型、似合ってると思うよ」
突然横から出てきたのは、俺たちの友達、木幡 如月。こいつも、付き合いが長い。まあ、最初は春日経由からの友達だったんだけど。
「わ、久しぶり、幸光くん!元気してた?」
俺に気づくのがやたら遅い如月。
なに、それは俺を蔑ろにしてたわけ?
「う、ううん! 違う違う! まさか、いるとは思わなくt」
途中で「しまった!」みたいな顔になる。
モウ……オソイヨ……。
ミンナ……いぢめハヨクナイヨ……?
「はい! もう男なんだからいつまでもいじけてないで!」
い、いたいいたい痛い遺体異体!
春日が、縮こまった俺の背中を、げしげし蹴る。
「わ、やめてあげてよ〜。春日ちゃん、昨日の誓いはどこへやらだよ〜」
間延びした声をあげるのは、桃井 光。光、もうちょっと本気で止めてくれ。俺死ぬかもだから。
「――は、そうだった。ゴメン、光!」
春日、謝る人が違う。俺。俺に謝れ。
「ううん、いいの。覚えてくれてたら」
光も無視ですかそうですか。
「くそ、どこのどいつだ、幸光をいぢめたのは!」
――いや、お前だ。
俺たちは、オリンピックに出たら金メダル獲れそうなぐらい、見事にシンクロした。
「よし、幸光、学校行くぞ」
今日の朝、ルームに突然あらわれた春日は、突然いい放ちました。
……は?
「いや、だから、学校」
「却下」
「えー、なんで〜」
春日のふざけた考えを、一刀両断のもと斬り捨てたら、案の定反撃が来た。
「だってさ、幸光、空が見たいっていってただろ? したら、学校の屋上が一番きれいに見えるじゃん、空がさ」
春日の魅力的なことばに、俺は一瞬、一瞬だけ、心を揺らした。
でも、俺はすぐ信念を取り戻す。
「いいよ別に。空ならここの休憩室でも見れる」
「よくないよ。だってもうみんなに幸光が来るっていっちゃったもん」
卑怯者め。
「如月とか、すごい喜んでたよ。瀬奈も光も」
「ぐ……っ」
「幸光が来なかったら、みんながっかりするだろうな〜」
挑発的な眼で迫り来る春日。こ、コワイ……;
「みんなで屋上でお昼食べよっていっちゃったしな〜」
学校:ルーム = 60:40
「今日は快晴で、雲ひとつないっていってたし〜」
学校:ルーム = 50:50
「今日の授業、幸光の得意なプログラミングだし〜」
学校:ルーム = 120:−20
「さ、行こうか」
「ほんとに調子イイね、幸光……」
春日を見ると、苦笑いを浮かべてる。でも、そのほほが、すこし赤く染まってるのは、なんでだろ?
というわけで、ほぼ脅迫に負けてきたわけだが……。
曇った空と時間割表を見て、俺は春日を教室のスミに連れて行く。
「おい春日、みんな俺が来ること知ってたんじゃねーのか?」
「あれ、あたしそんなこといったっけ?」
…………。
「今日さ、雲ひとつない快晴だっていわなかったか?」
「あれ、雲ばっかりの曇りだっていったよ」
…………。
「今日の授業は、俺の得意なプログラミングじゃなかったか?」
「え、前からいってたじゃん、文化祭だって」
……はぁ〜〜!?
「おっ……まえ、ぜ、全部ウソ……」
「どこ行く? 何食べる? 出店がいっぱいでてrグハッ」
「ふざけんな。俺はフケる」
あまりにも調子に乗りすぎたバカのみぞおちにいっぱつ入れてから、俺はずんずん歩いて教室から出て行く。
春日の気持ちと、この後起こる奇怪な出来事のことなんか、考えもせずに。
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