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ファイアーウォール
作:雨寺かえる



02 今日も今日とて恋する乙女。


  
 今日も今日とて、あたしは幸光ゆきみつにコーヒーを持っていく。

 学校なんて、体育と給食のためにあるようなもんさ! 授業なんて、クソ喰らえ!

 なんてったって、自称「不良少女」ですから! あたしは!

 

 ――そのわりには、みんなあたしと気軽に楽しくしゃべってくれるけど。

 なんでだろ? ほら、「不良」!なんだからさ、もうちょっとこう、恐れたり、怖がったりされてもいいと思うんだけどな……。

「それは……そう、そんな性格してるもん、春日かすがちゃん」

 そうやって話したら、おっとりした口調で返してくれた、あたしの親友、桃井ももい ひかるちゃん。

 長めの黒髪と垂れ眼がチャームポイントな、あたしのクラスメート。

 ――あたしは「悪友」のつもりなんだけど、光は「親友だもん!」っていって、きかない。なんでだろ?


「そんな性格ってのは?」

「あのね、春日ちゃんはね、人のこと差別しないでしょ? それに、いつも明るくて、元気で、こまったことなんか一度もないって顔してる」

 ……あたし、はたから見たらそんないい子ちゃんなの?

「そういう姿ってね、人にも元気を分け与えてくれるし、いっしょにいて安心するんだよ」

 笑顔でいう光。いや、そんなまぶしい笑顔でいわれて、あたし、直視できまセン。

「だからね、そういうひとのまわりには、いっぱい人が集まってくるの。自分も、元気になれるから」

 じゃ、不良になるには、その友達を捨てなきゃいけないの……?


 それは、ヤダ。


 どうしても。


 せっかく、幸光や光とも、クラスのみんなとも仲良くなれたのに、それをむざむざ手放すなんてようなことは、したくない。


 今この友達を手放して、真正の不良になったトコで、こんな楽しい毎日が遅れるとは想わない。


 でもな……それじゃ、不良の名が廃る……。

 悩めるあたしに、追い討ちをかける光の笑顔。

「それにね、春日ちゃん口は悪いけど、もっともなことしかいわないもん」

 笑顔を二乗していう光。

 本人に向かってばっさりと、口が悪いとは……いいやがりますな、お嬢さん。


 ま、そこはあたしの寛大な心でスルーしてあげて、あたしは本題のほうに触れる。

「その、もっともなことというのは?」

「ほら、先生とか、コトをうやむやにしたがるでしょ? そういうとき、そんなのナットクできねーよ!って一喝して、ことを明るみに出させるのは、いつも春日ちゃんだよ」

 『そんなのナットクできねーよ!』のところを、突然ドスの利いた声で叫ぶ光。びっくりしたよ……。



 でも……そうだったけか?

 あたしには、当然のこととしか思えないんだけど。

「そう。それが当然、って思えるのが、春日ちゃんのいいところなの」

 光は、うれしそうにうなずいた。

「あのね、大人になるとね、それが違うこと、悪いことだってわかってても、言葉に出せなくなる人がいっぱいになっちゃうの。いじめの輪の中にいる人も、ほんとは、いじめなんてしたくない、って想ってる人は、いると思う。でもね、それを口に出すのとでは、大違いなの。想うことより、数倍、ううん、数十……数百倍、勇気がいるの。それを、春日ちゃんみたいにあっさり言い切って、『当然』っていえる人は、ホントに少ないんだよ」

「…………」

「だから、春日ちゃん。その気持ち、大切にして、ずっと、『当然』っていえる人でいてね」

 そのことばが、一匹の迷える子羊に止めを刺した。

「うん! あたし、ずっとそういう人でいる。理不尽なことは、全部、この手、この口、この身体で、たたっ斬ってやる!」


 そう。最初から、迷う必要なんてなかったんだ。


「あたし、いい不良になる!」

 
 あたしは、あたしの道を行く。

 大切な友達を護る、苦難の道を。

 Going My Way!!


「……春日ちゃん、それ、不良っていわないよ……?;」


 余計なことをいう光の手をとって、あたしは宣言する。


「あたし、みんなを護るから。世の中の不条理、理不尽、悪事から、光を、幸光を、みんなを護るから! 約束する!」

「うん! 期待してるよ、春日ちゃん!」


 光は今日ずっと笑ってたけど、今このときの笑顔が、いちばんきれいな笑顔だった。



 そうして、あたしの「不良少女」宣言が早速崩れ去ったところで、あたしは寮に帰る。

 着替えて、エプロンして、棚のまえで考える。

 はい、こっから誰にも見せたことない、独り言タイムすたーと!

「今日はなんにしようかな〜。あいつガキだから苦いのだめだしな〜、いっかいもってってどんな反応してくれるかみてみようかな……。――そういえば、幸光、プログラムルームは、ニオイがないからヤダとか贅沢いってたな〜。じゃ、香りの強いやつ作ってやるか! え〜と、モカマタリ、ブラジルブルボン、ホンジュラスっと……」

 三つ豆袋をもってきて、それぞれから豆をだしてブレンドする。

 ナベにお水をばしゃばしゃ入れて、クッキングヒーターにかける。

 それから、三つの豆をコーヒーミルにかけて、沸騰寸前のお湯で溶かした。


 う〜ん、いい香り! これなら、幸光も喜ぶよ。 



 また、あたしに、あの笑顔をちょうだい。



 あたしは、コーヒーカップを両手に、幸光がいるプログラミングルームを訪れた。

「誰ですか〜」

 けだるい幸光の声が聞こえてくる。今日はじめて聞く幸光の声。

「やっほ、幸光! コーヒー持ってきたよ」


 あたしの声に振り返った幸光は、あたしに最高の笑顔をくれた。



 お久しぶりです、雨寺です。
 この作品にかぎらず、更新が遅れて申し訳ございません。
 最近は部活、体育大会の練習等で時間が上手く割けず、少しの間パソコン禁止令なるものが発令されてしまったため、このような結果になってしまいました。
 一回くすぶったエンジンが再燃焼するまで、今しばらく御待ち下さい。
 長文、失礼しました。雨寺でした。











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