夏になるとさ、無性に肝試しがやりたくなる。
まぁ、夏=肝試しなんてもんは単なる刷り込みで、別に暑くなったから恐怖を求めるわけじゃない。
人間ってのは恐怖を恐れるくせに、なぜか自ら“その中”に入っていこうとする。
まぁそんなわけで、俺は今年もいつもと同じように、友達数人と心霊スポットに行くことにした。
○△山。そこのどこかにある墓場を見つけてしまうと、三日以内その人に死が訪れると言われる、イワクツキの心霊スポット。
俺達は夜を待って、その心霊スポットに行くことにした。
クネクネしている山道を車で登っていく。
しばらくして丁度いい場所を見つけて、車をそこに停める。
好奇心やら恐怖心やらで高鳴った心臓を落ち着けながら、墓場を見つけるべく俺達は山を登った。
さて、
どれくらい経ったろうか?
二時間近く歩いて、結局俺達は墓を発見できないまま、山頂に着いてしまっていた。
勿論、ここまで墓場なんて見つけていない。それどころか、樹木以外何にも見つけていなかった。
「・・・おかしいな」
俺は予定とは違った、怖くもなんとも無い展開に拍子抜けした。
「所詮は噂話だ。こんなもんだよ」
周りを見渡す俺に、友達が言って肩に手を置く。
そんなもんか、と、俺は肩を落として、
「あ〜・・・、マジで期待外れだ―――――」
ガサガサ・・・
「――――たよッ!!?」
言い終わる直前、
音がした。
俺達が立っている右側、草木が生い茂る場所から。
思わず俺は飛び退いて、友達の間にスライドするように身を隠した。
「お、おい・・・、今、音・・・・」
「した・・・、な・・・」
友達全員で、視線を草むらに集める。
俺達は無意識の内に体を固めて、鼓動を高鳴らせていた。
と、
次の瞬間―――
「ッ!!」
―――突如草むらから現れるオッサン。
どこにでも居るような、少し小太りしたオッサンだ。
幽霊か!?とも一瞬考えたが、足もあるし、第一こんなリアリティに溢れるオッサン霊なんて怖くも無い。
「な、何だよ〜」
友達のその一言に、俺達の気も緩まった。
俺達はなんともいえぬ安心感に肩の力を抜き、
「マジビビッたって、マジで!」
「あはは」
笑った。気を紛らわすかのように笑った。
何かスゲェ安心した。
が、
「オイ・・・」
突然オッサンが何かを言ったので、俺らはまたびくついて身を固まらせた。
一瞬で俺達の空気を凍らせて、オッサンはこう言った。
「お前等、ここに肝試しに来たんだろう?」と。
「だったら気をつけろ。昔ここで殺人事件があったんだ。知らないか?」
言って、オッサンは首をかしげた。
俺達は顔を見合わせたが、誰もそんな話は聞いた事がない。
その空気を呼んだんだろう。オッサンはそのまま続けた。
「そん時にちっさい女の子が殺されてなァ、今でもこの辺りに出るって噂だ。もしも車に乗ってて女の子が『助けて』と言ってきても、絶対に扉を開けちゃいけない。そのままあの世に連れて行かれちまうからな」
気をつけな。オッサンはそれだけ言うと、再び暗闇の中に消えて行ってしまった。
ダッ
誰がともなく、気付いたら俺達はダッシュしていた。
ダッシュで、登ってきた坂道を逆に下っていく。
完全に、オッサンの話に呑まれてた。
友達を押しのける勢いで、何度か転びそうになりながらも何とか車まで到達した。
全員の姿は確認できる。よくある怖い話なんかみたいに、誰かが欠けている、という事はなかった。
飛び乗るように車へ搭乗し、エンジンをつける。難なくエンジンは点いた。
ここまでで心霊的な事は起こってない。
「とっとと出せよッ!」
「解ってるよッ!」
ギュキャキャキャキャ・・・!
タイヤをスピンさせながらも、急いで山道を下る。
対向車もない。走ってる車は俺等のくらいなもんだ。
それが逆に、恐怖心をあおった。
クネクネした山道を、さっきとは逆に走って行き―――
――瞬間、
「おい!前!」
「え!?あ―――ッ!」
キキキ―――――ッ
急ブレーキで車を止めた。
見えたからだ。
小さな子供が。
ライトに照らされて、
車道の真ん中に。
あれは多分、
女の子――――
間髪入れずに、車の外から声がする。
「助けて!」
と。
ダンッ ダンッ ダンダンッ
女の子が車のボディを必死で叩いている。その音と、「助けて!」という声に、俺達は半パニック状態に陥った。
これがあのオッサンが言ってた女の子の霊だ!
解った瞬間には、俺は友達に叫んでた。
「おい!おいッ!早く!早く車出せって!」
「だから、解ってるってッ!」
女の子の霊から逃げるようにして、俺達は再び車を出した。
もうそっからは殆ど覚えてない。
気付いたら家の近くまで来てて、みんなちゃんと居て、あの女の子の霊を連れてきてるような感じでもなかった。
安心して、俺達はそのまま解散した。
何事も無く日は過ぎて、
そして数日後。
俺と友達数人は、俺の家に集まっていた。
特別意味があるわけじゃない。単純に、遊ぶために皆を呼んでいた。
『○△道路では渋滞が続き―――――』
テレビからは聞き手の居ないニュースが垂れ流しになっている。
誰もそれに耳を傾けてることなくニュースは進んだが、
『次のニュースです。○△山で殺人事件が――――』
このニュースが流れた瞬間、全員の視線がテレビに向いた。
「お、おい、この山って、俺等が行ったトコだよな・・・?」
「そうだ、あの山だよ」
「あ、じゃあこの殺人事件って、あのオッサンが言ってた・・・?」
「え・・・、でもおかしくないか?日付が・・・」
オッサンは事件が起きたのは“昔”と言っていたが、ニュースが告げる日付では、事件が起こったのは最近のこと。
それも、この日付は・・・。
「これって・・・、俺等が山に行った日じゃねぇ・・・?」
そう、その殺人が起きた日というのは、俺達があの山に行った日。
ニュースは告げる。
『容疑者の○○○○被告は、深夜に殺して、そのまま埋めたと供述しているとの事で――――』
と。
「おい・・・」
俺達の間に、嫌な予感がよぎった。
『被害者の○○○○ちゃんは五歳の女の子で――――』
アナウンサーが告げると同時に、その女の子の画像がディスプレイに表示された。
瞬間、
「―――――ッ」
俺達は凍りついた。
その子こそ、俺達が車に乗っていたとき、駆け寄って助けを求めてきた女の子だった。
「マジかよ・・・」
ニュースが告げる死亡推定時刻からすると、あの時の彼女は幽霊何かではなく、実在する、助けを求める少女だったらしい。
「じゃあ、あの時俺等が助けてりゃ・・・・」
俺達は今までにない後悔に身を打たれて項垂れた。
しかし、
さらに恐怖に陥るのは、これから―――
『これが、○○○○被告の顔写真です』
アナウンサーが告げる。
俺達はそれを見た瞬間、背筋が凍った。
ディスプレイに表示された犯人。それは、
あの、山で見たオッサンだったんだ。 |