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The Souleater//魂ヲ喰ライシ者
作:朝倉 由那



第参話「呪法師………それは力を秘めし者」


 さて、ミラさんとフィリウスが言うには地属性当主のお屋敷はこの街の近く。お屋敷っつってもグランディオーソ家みたいな城ではなく、割と一般家庭向きの物件らしい。まあ、オレみたいな庶民には手の届かないような不動産ですがね。
「ところで、地属性当主ってのはどんな奴なんだ?」こいつなら多分知ってるだろう。
「詳しくは知らない。若い男とは聞いてる。特性、『兆弾』。“全物ヲ弾キ飛バシ者”の二つ名。無論、地属性。武器はメイス。化身は………知らん」
「それだけ知ってりゃ十分だろ」ミッシェルもシロ君もローラもそこまで知らなかったぞ。
「呪法師としての腕は当主としては未熟らしいが、仕事の腕はピカイチらしい」
「さっきから『らしい』ばっかだな」何も知らないオレが言えた義理じゃないがな。
「仕方ないだろ。俺は闇属性だからな」
「そういや、お前の呪法師としてのステータスは?」そういや、まだ聞いてなかったな。
「………なんで俺が呪法師だって分かったんだ? ただの呪文師かもしれないだろ」
「いや、だって化身限定解放してたし。ゴーレム止めた呪法って限定解放呪法だろ」
 あの時は咄嗟だったから判断できなかったが、今になって思い返すとあれは相当な力を持った“呪法”だった。【深淵・影縫い】だっけか? 忍法に影縫いってあったな。動きを止める技だったと思う。
「………相当な力を持ってる呪法師みたいだな。並な奴だと分からないぞ、化身を解放してるとかしてないとかなんて」
「そうなのか?」正確に分かるというより、体から溢れ出てる“呪力”を感じ取れるってくらいだけどな。
「そうだ。というか、お前って変な奴だな。あれだけの“呪法”を使えてるのにそんな事も知らないなんてな」
「………んで? お前の事、教え………その前にオレが言うんだっけ」
 こいつのポリシーは等価交換って言ってたような。人に聞く前にオレが言えってか。
「オレは“魂ヲ喰ライシ者”。特性、吸収。属性、風。そんなもんか?」
「………“暗黒ヲ導キ出シ者”。陰影。影を操る。闇」………なんというか、非常にぶっきらぼうですね。
 影を操る、か。なら、あの時の長剣は影でできてた訳か。地面に手を当てて長剣を引き抜いてたし。武器の無限生成。相当便利な能力だと思うが、オレの『堕天使の翼』も似たようなもんか? どっか行っても戻ってくるし、オレ以外の人の手に渡っても呼び戻せるし。

「ところで、ルーシア・スフォルツァンドって知ってるか?」ふと思いついた事を聞いてみる。アイツの事はほとんど知らないのに、向こうはオレの事を熟知してるみたいでなんか不公平だから。ミラさんは全く教えてくれなかったし。
「………知ってる。と言うより、お前は知らないのか?」
「知らん。有名人なのか、アイツって?」ジャスミンも知ってたし、なかなかな著名人なのかもしれない。
「有名も何も、光属性の当主だ。知らなかったのか?」平然と答えるフィリウス。
「へっ? 当主? あんなちっこいのが?」正直、相当驚きだ。当主と言えばもっと老齢な大人なイメージがあるんだがな。まあ、グラウスさんはそんなに年食ってないとは思うけど………15歳のミッシェルが娘なら40前後だろう。
「あのカラクリは誰も分らない。見たまんまの年齢なのか、はたまた外見が幼いだけなのか………それはともかくとして、彼女が著名なのは、特性を二つ持つという異常な呪法師だからだ」
「特性が………二つ?」
「あぁ。知られている限りだと化身は一つなのに特性を二つ持つ呪法師で、両方とも詳しい事は不明。一方は完全に闇の中で、もう一方も憶測が行き交っている。『どんな剣でも操ることが出来る』とか『何も無い所から何でも作り出す』とかな。使ってるのを見た奴の証言がバラバラ過ぎるんだ。知ってるのは本人と一握りの身内ぐらいだろう」フィリウスは淡々と説明してくれた。
 特性が二つ。そんな事がありえるのか? ………と言っても、オレは“呪法”のメカニズムとか詳しい話は知らない訳であるから、納得できないだけであり得る話なんだろう。
「属性当主の中でもトップクラスの“呪力”、能力を持つ。おかげで俺んとこの当主は頭が上がらない」
「ほ〜ほ〜。………って事は、ジャスミンじゃ歯が立たないのも当然か」
「………………………」


「やっほ〜! 二人とも元気〜?」
 と、割かし真面目雰囲気だったのに、一気に崩されてしまった。
「………何ですか、ミラさん?」脱力系のオーラを纏いながらドアの所に立っているのは紛れもなく元気ハツラツなミラさんだ。地球(アース)にいたら『元気ハツラツ〜?』 『オフコース!!』のCMに間違いなく出ていただろう。
「暇だったから遊びに来たよ〜」(ミラさんとしては)もっともらしい理由ですね、ハイ。
「まあ、オレ達も暇を持て余して男同士で寂しく語り合ってたくらいですしね」できるなら女の子と語り合いたいくらいだ。野郎と語り合うのは修学旅行の真夜中だけで十分だ。
「じゃ、私も一つ語っちゃおうかな?」
「………あんまり騒がしくするな」冷静にツッコミを入れるフィリウス。それではオレの役どころがなくなってしまうのだが、気にしない事にしよう。
「う〜ん、じゃあ“呪法”について詳しい事を教えようかな?」真面目な話題を提示するミラさん。
「“呪法”って、どんなのですか?」
「圧縮詠唱。それに化身の全解放と真覚醒」
 圧縮詠唱。それは図書館でジャスミンが使った奴だが、ミッシェルん家では教わんなかったやつだし、図書館の時も詳しくは聞いてない。それに、全解放もラドンを軽くやった程度だからさっぱり分からん。
「なんだ、圧縮詠唱もまともに知らないのか?」さり気なくムッとさせる言い方をするフィリウス。
「うるせぇよ。使った事ないし一回見たこっきりだし………」

「圧縮詠唱呪法って言うのは、前にも軽く言ったのと同じで、個人が使える“呪法”の中では最強の威力を誇ってる。 “呪法”は『一般呪法』 『限定解放呪法』 『全解放呪法』 『圧縮詠唱呪法』の四段階に分かれてるのは知ってるよね?」
「まぁ、軽くは」ミラさんの言葉に軽く頷く。
「『一般呪法』はリョー君の使ってる【疾風燕返し】と同格の“呪法”。 『限定解放呪法』は【ソウルドレイン=黄昏】系の“呪法”。 『全解放呪法』はリョー君はまだ使った事ないし、『圧縮詠唱呪法』は並な呪法師じゃ発動できない」
「名前の通り、『限定解放呪法』は化身を限定解放してないと発動できないし、『全解放呪法』は全解放してないと使えない。 『圧縮詠唱呪法』は更に複雑で真覚醒状態じゃないと発動できない」意外な事に、フィリウスまでもが説明を始める。
「“呪法”発動の原理から考えると、『一般呪法』だけは他の“呪法”とは別の存在。 『限定解放呪法』以上の“呪法”は発動に使う“呪力”が特性を帯びてるから各個人個人の特性が出てくる。だから、厳密にいえば『一般呪法』だけは誰のでも使う事ができるんだよ」
「ぅおぁ? でも、誰かが使う“呪法”って言うのは他人が使う事が出来ないんじゃ………」確かミッシェルはそう言っていた。
「『限定解放呪法』以上の“呪法”は確かに発動は不可能だ。だが、『一般呪法』は“呪式”さえ正確に展開できれば発動する事は無理じゃない」
「例えるなら、『一般呪法』って言うのはピアノの楽曲みたいなものかな? どんなピアノの曲でも誰であろうと演奏する事はできるでしょ? でも、知らない曲を即興で演奏する事は難しいし普通は無理でしょ? 『一般呪法』はそんな感じかな?」
 フィリウスの説明に分かりやすい補足を入れるミラさん。
「なるへそなるへそ。オレはピアノはやらん、つ〜かできんが、何となく分かった。って事は、ミラさんがオレの【疾風燕返し】を使ったり、フィリウスが【大地壱刹・白銀の襲撃】を使う事も無理すればできる訳か」
「だから、普通はリョー君みたく簡単に“呪法”を発動するのは無理な訳なの」オレが自己納得してる中、ミラさんが付け加えた。

「その一方、『限定解放呪法』以上は発動できるのは完全に個人の“呪力”特性が必要だから他人には発動不可能。“呪式”展開も複雑でその“呪式”の構成を覚えるだけでも相当難しい。『圧縮詠唱呪法』は普通の“呪式”の上に詠唱を重ねてそれをつなぎ合わせて更に強力な効果を生み出す“呪法”だ」フィリウスが続きを説明し始めた。
「普通は大きな呪法陣を展開して、それを通した“呪法”を更に詠唱を通して効果を爆発的に跳ね上げるんだよ。別に織り合わせる“呪式”は詠唱じゃなくても大丈夫なんだけど、呪法陣展開した上でもう一つ展開するのは普通は相当難しいし、無展開の“呪式”は圧縮詠唱の“呪式”として使うのはまず不可能。“呪力”を編みあげながら唱えるだけでいいから普通は詠唱が使われる。だから『圧縮詠唱』って言うんだ」珍しく非常に長く話すミラさん。こんな話すのはシロ君とローラだけで十分なんだが。


「それで、化身の解放の方に話を変えるけど………」
「化身の解放には限定解放、全解放、真覚醒の三段階がある」ミラさんのセリフを奪うフィリウス。
「全部を解放した状態を全解放、とすると限定解放はその規模を抑えた解放。真覚醒は全ての“呪力”エネルギーを覚醒させた状態だよ。リョー君は真覚醒についてまだ知らないよね?」
「ハイ。全解放も一回やっただけだし」ルーシアに導かれて第参相(ラドン)を解放した時の事を思い出しながら頷く。全開放は後にも先にもそれっきりで、感覚的にやり方をつかんだだけで詳しい仕組みも原理も分かっちゃいない。
「全開放は、化身の持つ“呪力”エネルギーを無制限で解放すること。それでも体がもつ自然のリミッターが働くから潜在的な“呪力”全てを空間に放出する訳じゃない」淡々と説明するフィリウス。
「限定解放とやり方は同じなんだけど、解放の時に意識的に全部の制限を無くすようにする。だから、発動する“呪法”の威力も格段に上がるし連射速度もあげられる。一番の効果は解放中は“呪力”の回復量が消費量を圧倒的に上回るから理論上は“呪法”は無尽蔵に打てるよ」
 続けるミラさん。そろそろ頭がこんがらがってくる頃だ。
「大概は全開放すると体の外見に何らかの変化が起こる。例えば、オーラが出てきたり武器が光を放ったり背中から翼が生えてきたりな。それは化身の姿に似る事もあれば全く違う事もある」
「あっ、だからあの時翼が出てきたのか」第参相ラドンを解放した時に腕輪と同じ緑色の光を放つ翼が現れていた。それこそが全開放の証だという事らしい。

「全開放はこんな感じに限定解放と似た感じ。でも、真覚醒はかなりシステムが違う。覚醒させた時に化身がこっちと完全に同調シンクロして、体から離れる」
「は?」思いがけない言葉にすっとんきょうな声をあげてしまった。
「聞いた通りだ。解放したら化身が確立した存在として呪法師と対等の立場で“呪力”を解放する。だから呪法師の持つ全ての制限、限界を無視して最高レベルの“呪法”を使いこなす事ができる」難しい言葉を並べるフィリウスさん。
「化身は呪法師と“呪力”によって結びついていて、化身とのシンクロ率が高ければ高いほ“呪力”の限界は上がるし“呪法”もより強力に使えるようになる。化身の性格なんかは呪法師に似る事が多いから、ほとんどの場合化身とは共感できたりフルシンクロまでシンクロ率を高める事もできる」ミラさんまでもが訳の分からん事を言う。
「つまり、真覚醒が呪法師の最強状態って事か」無理やり自己完結する。これ以上電波話を聞くと頭がパンクしちまう。
「簡単にいえばね。それに、リョー君は経験が浅いからまだ真覚醒できないだろうし。使える“呪法”も【疾風燕返し】だけだしね」
「そういえば、呪法師って“呪法”を二つしか覚えられないんですか? みんな使ってるのは二つだけだし」ふと思いついた事を聞いてみる。ミッシェルにしろ、ローラにしろ、シロ君にしろ、ミラさんにしろ、一般呪法を使ったのは二種類だけだ。
「別に覚えられる“呪法”の限界が二種類と言う訳ではない。だが、人としての限界が二種類なんだ。そもそも、呪法の発動は『呪力の展開』 → 『呪式の発現』 → 『呪力エネルギーの解放』 → 『呪法のイメージ化』 → 『呪力の変換』 → 『呪法の発動』という流れを行う一連の行動の事を言う。最も難しいのは『呪式の発現』で、“呪式”を構成する“呪力”の情報を頭に叩き込むだけで並な呪文師は限界がきてしまう。その一方、強力な呪法師は一般呪法に加えて限定解放呪法などの高位呪法を覚える事が出来る。呪法師の差はまずここから出て来て覚えられる呪式構成の情報量がいかに多いかが勝負になる。強力かつ複雑な“呪法”を発動させるための“呪式”はより複雑になり、その“呪法”をイメージする事も相当難しくなってくる。つまり、これらの情報を瞬時に引き出せるくらいに暗記できる限界が二種類くらいだって事だ」
「………………………………」
 読者のみなさん。読まなくていいです。最後の一文だけ読めば多分大丈夫です。
「………意味分かるか、んな長文」こんな話すのはシロ君とローラだけで十分だ、と既に言ったはずだがな。
「つまり、ポケ○ンだって技を四つしか覚えられないでしょ。それと同じだよ」
 いろんな意味で訳の分からない説明をしてくれるミラさん。この世界は本当にアースではないのかと疑いたい。
「………理解するのは諦めます。と言う事で、オレも覚えようと思ったら【疾風燕返し】以外の呪法も覚えられるって事ですよね」
「う〜ん………どうだろう? リョー君の場合は特別だからなぁ」ミラさんが顎に手を添えて考え込む。
「言っとくが、呪法を独自で作り出すのは一朝一夕でできるような芸当じゃないぞ」
 オレにとどめの一撃を叩き込んだフィリウス。

 そんなこんなで、訳の分からない会話は幕を閉じた。いろんなトコがうやむやになり訳の分からないままになり、作者の未熟さを露見させ………そして、物語は急展開を迎える事になるのだが、今はまだ誰も知らない………


 三話です。終わりの方の長いとこは読まなくてもいいです。読まなくても全く支障はありません。サンデーのページ下についてる手のマーク以上に無意味です。
 それでは、次回もお楽しみに & 感想と評価を頂けたら嬉しいです。






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