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第3話 幼女は待ち人を歌う−3
  黒の組織壊滅の12年前 12月24日 午前11時10分 緑台警察病院

 あーちゃんの事情聴取に来ているのは、児童相談所と警視庁。
 言うまでもなく、共に公的機関同士だ。

 では、事情聴取の順番はどうなるか?

 警視庁も児童相談所も、両方とも公的機関だが、合同で事情を聴くような機関ではない。
 合同で聴取を行わないのなら、当然、どちらかが先に聴取を行い、どちらかが後にまわる。

 これまで、事情聴取がまともに出来てなかったことへの焦りがあったのだろうか、
 少なくともあーちゃんの件に限れば、児童相談所の人間に、警察への遠慮は無かった。
 警視庁の人間も、『警察だから先に来たほうを押しのけても良い』とする決まりは無く。

 ……従って、先に事情聴取を始めるのは、来るのが早かった児童相談所のほうだ。

   ◇   ◇

 あーちゃんの病室前の廊下で、女性刑事と警部は、事情聴取の順番を待つ。
 職務中にたまたま生じた、待ち時間。
 2人の間で会話が繰り広げられても、その話題は、必然的に仕事のことに限られる。

「あの子、今後はどうなるんでしょうか? 『身元が分かった』とは聞いてますが……」

 不意に女性の刑事がそう訊ねてきた。

 彼女は、あくまで事情聴取の助っ人だ。
 警部達と比較すれば、事件の詳報を知る時間に差は生じ得る。
 だから警部は、警視庁を発つ前に聞いた事を告げる。

「愛知県警の人間が、あす夕方にこちらに来るらしい。
 ……先ほど連絡があったそうだ」

「そうですか」

「さすがに今になって、失踪した刑事の一家の子が見つかるとは思ってなかったらしい。
 元々、よく分からないことが多い事件ヤマだが、よく分からないまま重大さが増してきているな」

「……そうですか」

 女性の刑事は呟き、そのまま黙りきってしまった。
 長くない会話はそれで終わり、沈黙が場を支配する。

 真相を知りたいのに、分からぬことが多い。
 この事情聴取は、事実解明のための貴重な糸口だ。

 そういう状況を理解しているから、警部たちは静かに事情聴取の順番を待つ。

   ◇   ◇

 ……待つこと10分。

「〜〜〜〜〜〜!」

 言葉になってない、明らかにおかしな声が沈黙を破る。
 
「「?」」

 思わず声のする場所、……あーちゃんの病室を2人は見た。
 直後。
 病室のドアが開き、飛び出してくる、

「あ〜!」

 案の定、本日2回目の飛び出し。
 ただし今回は何故か半泣き状態で、警部のほうを見ていないらしい、あーちゃん。
 
「何があったの!?」

 女性刑事の問う声に答えず、迷走しかける幼児、とっさに警部は前に回り込んだ。
 そのままぶつかりそうになり、そこでやっと目の前を見、よろめき……、

 今度は、警部の腕にしがみついた。
 けれども半泣きの顔は、しがみついてもなお叫ぶのを止めず。

「……何があったんですか?」

 腕にあーちゃんをしがみつかせたまま、警部は病室から出てきた職員に訊いた。

 こんな年齢の幼児なら、泣くこと自体は珍しくはないだろう。
 しかしこれは捜査だ。
 こうなった原因はぜひとも知りたい。

「あ、あのですね」

 問われ、地味な職員の片方、メガネの男性が言う。
 警部の顔をじっと見て、複雑な顔で。

「どういうわけか私達には、その、なつかなかったようでして……」
あとがき

 結局、日付は変わった後の投稿になりました。
 来週もまたコンスタントに投稿できればいいんですけれど、
 ……どうなることやら(汗)。

7月25日
 ひどい誤植をいくつも発見、修正しました。
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