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第4話:新井佐久奈
「そう言えば森。おじさん達、まだ帰って来ないのか?」
森の朝飯も食べて登校中。オレ達は普通に雑談をしながら学園へ向かっていた。
「父さん達? 後2、3年は帰って来ないんじゃない?」
「一時帰国もなし?」
「少なくともそんな話はないわね」
「……何の仕事してんだろうな? おじさん」
森の父親は外国で働いているらしい。母親もそれについて行ってるから森は一人暮らしなわけだ。
「きっと地球の平和を守ってるんだよぉ」
「……あり得そうか? 森」
「あの両親って、絵に書いたように普通だからね。多分サラリーマンか何かだと思う」
「え~……つまんないよぉ」
「仕事に面白さを求めるな」
「どちらにせよ、アンタ達の父親達に比べれば、あたしの父親の仕事は普通よ」
「そりゃ、冒険者よりかはな……」
ていうか冒険者より普通じゃない仕事ってなんだろう? リアルRPGの主人公とかだろうか?
「本当にアンタ達家族って面白いわよね。……ん? あれって新井さんじゃない?」
急に立ち止まった森が指差す方向には数人が何か揉めている様子が見えた。
「? 新井って誰だよ?」
オレと森の共通の知り合いに新井という奴はいない。美奈の方の知り合いだろうか。
「いや、私もよく知らないんだけどね。確か私達の入学式の時に新入生代表だった娘。美人が多いって事で有名なうちの学園でもトップクラスで可愛いし、性格も清楚可憐で人気があるらしいわよ? 男子の中でアイドル的に扱われてるって聞いてるけど、雪、アンタ知らないの?」
「いや、それはなんて言うか……」
「ゆっくんに女の子の事を話す男子なんていないんだよぉ」
「ああ……そう言えば、アンタもアイドル的に扱われてたわね」
「うるさいよ……」
誰も男として接してくれないなんて悲しすぎるのに、普通に触れるなよ。
「まぁ、それはそれとして……その新井ってこがどうしたんだ?」
「うん。あそこにいるの新井さん以外みんな男みたいなのよね」
「あん? だからどうしたんだ?」
「もぉ! ゆっくんてば鈍いんだよぉ! ナンパとかそう言うのだよ。ゆっくんだって人一倍そう言うのに絡まれてるのにどうして気づかないの?」
「うるさいよ」
男が男にナンパされることなんて忘れさせてくれよ。
「しっかしナンパか……あれってマジでうざい奴がいるからな」
「経験者は語るってやつね。あたしもナンパはされるんだけどなぁ……なんでモテないんだろ?」
性格以外ないだろ。
「むぐぅ……私はナンパもされたことないんだよう」
ガキをナンパするような犯罪者はこの辺にはいないからな。
「まぁいいか。軽く追い払ってくるからお前ら先に学園にむかっとけ」
「ゆっくんてば正義の味方みたいなんだよぉ」
「別に。他人とは思えないだけだよ」
「あんたって本当にお節介やきよね」
「オレらの母親みたいな奴にそれだけはいわれたくねぇ」
「まぁ、ほどほどにね」
「それじゃあ、ゆっくんまたね」
「ああ。不審者には気をつけろよ」
オレはそれだけ言って、新井とか言う奴と、ナンパらしき奴たちのもとへ歩いて行く。後ろで『子どもじゃないんだよぉ!』とかいう叫びが聞こえた気がしたがもちろん無視。
「げへへ……姉ちゃん可愛いじゃねえか」
……帰っていいか? なにその今時ありえないセリフ。
オレはナンパしている奴らの言葉を聞いてオレはうんざりする。
「えっと……その……困ります」
そりゃ困るよな。今時少年漫画でも使われそうにない笑い方する奴らにナンパされたら。
「少しいいか?」
オレは脈絡なんてものを無視してナンパ男達に話かける。こうして見るとナンパ男達は3人だった。余裕だな。
「あん? なんだお前?」
ナンパ男達のリーダーっぽい奴が反応をしめす。
「道に迷ったからちょっと……」
「そんなことよりも何でそんな恰好してんだ?」
あれ? なんかオレの発言無視された?
「えっと……この制服なんか変か?」
「だって、それ男物じゃん。もしかして男装の麗人ってやつか? うわっ、初めてみた!」
あれ? もしかしてここ問答無用で殴っていい場面?
「まさか男ってことないよな? 声も柔らかい感じで高いし、胸はないけど、俺がいままでで見たなかでも一番可愛いし」
あれ? これって問答無用で殺していい場面か?
「よし! 今から一緒にホテルへ直行だ!」
よし。決まり。ナンパ撲滅作戦スタートだ。
「しね」
とりあえずオレはれっきとした男であるオレに暴言の数々をいった男に心臓のある辺りに当て身をする。心臓の弱い奴だったら真面目に死ぬくらいのを。
「ナンパなんて滅べばいいんだ……」
バタリと倒れた男を踏みつけオレは残りの二人のナンパ野郎をみる。
「えっと……あれだ! 女の子が暴力をふるったらだめだよ!」
「そうだ! そんなに可愛いんだからもったいない!」
「死刑決定」
オレは二人まとめて蹴り飛ばした。
「なんだよ……誰も立ち上がらないのか」
弱すぎるだろ。せっかくなぶれるように手加減したのに……。
オレはピクリとも動かない男達を見てがっかりする。
ちなみに怪我はさせてないので警察はともかく病院代を請求されることはないだろう。それにナンパするような奴らは無駄にプライド高いから、警察沙汰は好まないのは経験上知っている。
飛燕閃迅流ひえんせんじんりゅうの欠片も使えなかったな」
少し生身相手に練習したかったんだが……。
親父に問答無用で仕込まれた武術だが、オレが歩くようになった頃から今までずっとやってきたことだから、流石に愛着のような物があった。ちなみに修行に嫌気がさすのは小学生の時点で終わっている。
(……ていうか、ナンパを粛清するのに必要だからな)
できれば、鍛えられて男らしい体つきになればいいと思うんだが、どういうわけか力はついても筋肉がつくことはない。謎だ。
(へぇ……こうしてみると本当に可愛いな)
オレは改めて新井というこを観察した。一言で言い表すなら大和撫子というところか。長い黒髪は煌びやかに光っていて、見ているだけで吸い込まれそうな深い深淵をも持っている。森が言ってたように清楚可憐というのが似合う。可愛らしく、優しそうな顔で、学園のアイドルっていうのがぴったりだ。
(……こんなに可愛い子と同じ扱いを受けてるオレって)
「どうしたの? 保科雪」
少し落ち込んでいるところで新井さんに話しかけられる。
「いや……可愛いなって思って……」
オレは茶かすように本音を言った。
「あはは……殺すわよ」
「……は?」
え? この子今殺すって言った?
「保科雪。あんたに一つだけ言っとく。私はあんたが嫌い」
え? 何? 嫌い? 初対面なのに? というか何この変わりよう? さっきまでの大和撫子はどこに?
「だから、月夜のない夜には気をつけなさい」
えー……なんでこんなに嫌われてんの? オレ……。
「でわ……また会いましょう保科君」
「ぇ……ぁ……じゃあまた」
大和撫子な感じになった新井さんにオレは呆然と返事をし、去りゆく彼女を呆然と見送るのだった……。
久し振りの更新。そしてメインヒロイン登場。ツンデレというかデレツンというかそんなキャラ。普段は学園のアイドルとして清楚可憐に過ごしているが雪の前では敵意丸出しの女の子。裏主人公でもあります。


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