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第3話:山川森
「はぁ……結局、朝飯は抜きか」
大惨事となっている台所で料理ができるわけもなく、冷蔵庫の中身はすべて炭となっていたので、当然のごとくなにも食べていないオレと美奈だった。
「?……雪、朝ごはん食べないの?」
「は? 朝ごはんって……どこに?」
「ん……そこの皿にのせてるでしょ?」
……母さん。あなたは私に炭を食べろとおっしゃるのですか?
「……責任とって美奈が食べろよ?」
「さ、さすがの私でも無理だよぉ〜」
「?……二人とも食べないの?……それなら私が食べていい?」
「「むしろ食べてください」」
「ん…………………ん……おいしい」
「「………………………」」
無言になるオレと美奈だった。


「し~ん! 起きてるか?」
オレと美奈は台所の惨事やオレの母親を無視し、隣の家に来ていた。
「ふぅ……あんたたちじゃないんだから起きてるわよ」
オレの呼びかけに応じてやってきた幼馴染はどこか呆れたような顔をしていた。
「おはよう。森」
「おはよう森ちゃん」
「はいはい。おはよう二人とも」


山川森やまかわしん。オレと美奈の幼馴染。ショートカットのさっぱりした髪型に、無駄に整った顔立ち。無駄にスマートな体型。容姿だけを見れば、中性的な魅力で両性からモテそうだが、性格がさっぱりしすぎているせいで、どうしても恋愛とは程遠い位置に存在する奴。一応性別上は女。ただ、あまりこいつに性別とかは無意味な気がするのはオレだけじゃないだろう。


「そろそろ、学校に行こうと思うんだが、準備はできてるか?」
「別に行くのはかまわないけど、少し時間はあるわよね?」
「ん? まぁ、余裕はけっこうあるな」
とある母親のおかげで朝食の時間分、空いたからな。
「朝食食べていきなさい。どうせ、何も食べられなかったんでしょ?」
「……なんで知ってんだよ?」
「もしかして、森ちゃんて超能力者?」
「なわけないでしょ……。普通に爆発の音が聞こえたからね。どうせ、また氷華さんが料理したんでしょ?」
「おっしゃる通り……」
むしろ、オレや美奈が爆発に気付かないのがおかしいよな。
「ちゃんと朝食用意してあるから、さっさと食べましょ」
「うぅ。いつもありがとね。森ちゃん」
「何を泣きまねしてるのよ美奈」
「だって、なんだか私たちのお母さんみたいなんだもん。森ちゃんは私の第2のお母さんだよ」
「お? それいいな。森、オレの母親になってくれ」
第2とかじゃなくて、一番目の。
「……あんたたちの母親ね。あながち間違った表現じゃないかも」
意外なことだが、この幼馴染。家事全般が得意という一面を持っている。料理は人並み以上に上手だし、オレと美奈の部屋の掃除は森が主導で行われるほどだ。
「なんか、オレ達って森に頼りすぎてないか?」
「むぐ……そうかも」
実はいい加減、森も嫌気がさしてるかも……。
「別に、あんたたちが気にすることはないわよ。あんたたちの面倒見るのは半分趣味みたいなものだし。それに、なんだかんだ言ってあんたたちのこと好きだからね。そんだけ可愛いのよ」
「……ねぇ、ゆっくん」
「そうだな、美奈」
オレと美奈は心を同じくする。
「ど、どうしたのよ? あんたたち……」
「「お母さん!」」
オレと美奈は同時に森に抱きついていた。感謝の気持ち半分と、照れ隠し半分で。
「こ、こら! 離れなさい! 恥ずかしいでしょ! ていうか土足で上がるな!」
やっぱりこの幼馴染を恋愛対象にはできないよなぁと思うオレだった……。


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