プロローグ〜保科雪〜
別に自分が特別な人間だと思ったことはない。それでも小さい頃から『普通』になりたい……そう思ってきた。
具体的に言うとこんな感じだ。
1:普通の両親が欲しい。
2:普通な交友関係が欲しい。
3:普通な容姿が欲しい。
具体的にはこんなところだろうか。他にも人並み程度の幸運が欲しいとかもあるが、これに関しては上の3つが主な原因として奪われているので、それをどうにかしないとどうしようもない。
まぁ結論から言うと、オレはどうしようもなく不幸なわけで、それをどうにかしたいわけだ。
とりあえず最初に言っておく。オレは男だ。言葉遣いが男口調な女の子ではけしてない。それだけは覚えていて欲しい。ついでに女装の趣味なんてないことも覚えてくれているとなおよい。
「ゆっく~ん。一緒にお風呂入ろう?」
ガチャンとドアの開く音と一緒に従妹の美奈の声が聞こえる。
「……美奈。いろいろツッコミたいことがあるがいいか?」
「え…………。え、えっと……うん。ゆっくんなら怖くないだろうし、初めてはゆっくんがいいと思ってたから……いいよ」
「……………………」
「……………………」
……ああなるほど。
「って下ネタかよ!?」
「むぐぅ~……人の本気をそんなふうに言うのは感心しないんだよぉ」
「……とりあえずこいつの発言は流して……。一応言っておく。オレは既に風呂に入った後だ」
「うんうん。というわけで一緒に入ろう」
「一応言っておく。オレは男でお前は性別上は女だ」
「うんうん。というわけで一緒に入ろう」
「ちなみにオレはお前が嫌いだ」
「うんうん……ってゆっくんひどいよ!」
「まぁ嫌いというのは冗談だとして……とっとと一人で風呂に入ってこい」
「むぐぅ……ん? ゆっくん、それなに?」
「なにって……あぁこれか?」
オレが机に開いてあるノートを指さすと美奈はうなずく。
「これはだな……日記だ。……絶対に読むな――っていきなり読んでんじゃねぇ!」
読むなと釘をさす前に美奈は日記を奪いとり、パラパラとめくり読み出す。
「う~ん……ねぇゆっくん。何で日記なのに誰かに話しかけるような書き方なの?」
「あぁ、それはアレだ……いつかそれを出版しようと思ってな」
「あぁ~……うん。ガンバッテネ?」
「棒読みでありがとよ。……まぁさすがに出版は無理でも読み直した時に面白いようにな」
「なるほどねぇ……ところでいつから書いてたの? 私全然気づかなかったよぉ」
「そりゃそうだろ。今日から書き始めたんだから」
「むぐ? 何でいきなり始めたの?」
「別に。不幸の記録をとっておけば対策がねれるかと思ってな。今日は始業式で明日はお前の入学式だし区切りがいいと思ってな」
「ふ~ん……つまりこれは『ゆっくんの日記』なんだね」
「もしくは『不幸の日記』だな」
「なんだか面白そうだね。たまに読んでいいかな?」
「はぁ……ダメだって言っても読むんだろ?」
「えへへ。流石ゆっくん。私のこと分かってるね」
「妹みたいなものだからな」
「うん。私もゆっくんのことお姉ちゃんみたいに思ってる」
「………なんだかなぁ」
別に今さらだから何も言わないけど……
「何て言うかアレだ………不幸だ」
こうしてオレの日常は過ぎていくのだった。
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