第二話:取引
人通りのほとんどない道路に一人の男が立っていた。その男はどこか挙動不審だった。何かに怯えているように見える。
そこに、体格が良く、サングラスをかけている男がやってきた。全身黒ずくめの格好をして
いて、顔がまったく見えない。
その体格の良い男が怯えて立っているもう一人の男に話しかけた。
「よお。例のソフトの完成品、きちんと持ってきたんだろうな。」
「そ、それがウォッカさん、完成する直前で私のパソコンの調子が悪くなってしまいまして。ですから、まだ完成していないんですよ・・・・・・。」
「何だと! まだ完成していないのか。いつ完成品をもってくるつもりだ!」
ウォッカはイライラと興奮で、少し大きな声になりながら話した。
「ほ、本当にあと少しだけなんです! 三日後までには完成させますから。ですから三日後の同じ時間、同じ場所で待ち合わせしましょう。今日未完成品を渡したところで何の意味もないでしょう?」
「仕方ないな。必ず三日後に完成させて持って来るんだぞ。もし完成してなかったらどうなるか分かっているんだろうな。絶対三日後までに・・・・・・」
そのとき、取引をしている二人のもとに、一台のポルシェがやってきた。そして車から降りた男は長身長髪で、ウォッカと同じく全身黒ずくめの格好をしていた。
その男が冷たい声でウォッカに話しかけた。
「何をしているウォッカ。取引の期限は『今日』だったはずだ。何を先延ばしにしている?」
「しかし兄貴。こいつは自分のパソコンが壊れてしまったためにまだソフトが完成していないとぬかしてやすぜ。ですから三日後にまたこいつと・・・・・・」
「フン。それならばこの男はもう用済みだ。この男より優秀なシステムエンジニアくらいどこにでも転がっている・・・・・・。」
その言葉を聞いたシステムエンジニアは恐怖で顔が蒼ざめながらも、必死に長身長髪の男に
懇願した。
「ジンさん、お願いします。三日後までには絶対にソフトを完成させますから!」
「フン、パソコンが壊れているのは嘘なんじゃないのか? まだ完成してない理由の口実に
したいだけだろう。」
ジンが冷たく言い捨てた。
「う、ウソなんかではありませんよ! パソコンの調子が本当に二日前から悪いんだ!」
しかしジンはこの言葉を完全に無視した。ポケットからベレッタを一丁取り出し、その銃口をシステムエンジニアの頭に向けた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! ここで私を撃ったところであなたたちには何の得にもならない! まだソフトは完成していないんですよ。」
「さっき言った言葉を聞いていなかったのか? お前なんかよりも優秀な奴はどこにでもいる。完成していないのならばお前はもう用済みだ・・・・・・。」
「だ、だけどここで私を撃ったらいくらここが人通りの少ないところだとしても、その銃声で警察が来ますよ。」
「お前の目はどうなっている。消音器を装着しているからそんなに大きな音にはならないはずだが? この暗闇のなかではお前のような細い目ではこの消音器も見えないのか。」
ジンはなかなか銃口を下げようとはしない。
「ま、まさか最初からこうするつもりだったんですか? 最初から私を殺すつもりで・・・・・・。」
「当たり前だ。この罠にひっかかったお前が悪い・・・・・・。」
パシュッ!
そう言ってジンは銃の引き金を引いた。弾は逸れることなくそのシステムエンジニアの頭部に命中した。
「やっと死んだか・・・・・・。」
ジンは冷たい目で遺体を見下ろした。
「しかし、兄貴。まだ邪魔な女が一人いますぜ。今度取引をする女ですが・・・・・・。」
ウォッカが言った。
「その女なら取引をするつもりで殺してしまえばいい。例の場所に爆弾を仕掛けるのだ。どれだけ犠牲者が出たとしても構わん。」
そうしてジンとウォッカはポルシェに乗り込み、その場から逃走した。目撃者がいたとも知らずに・・・・・・。
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