第十九話:手紙と疑惑
雲がなく、満月の映えるような夜。
家に入った少年は異変に気づいた。まぶしい月光に照らされたのは二人の遺体―。
少年はその遺体を認め、悲鳴をあげたが、その声は別人のもののように彼の耳には聞こえた。
少年はふと何物かの気配を感じ取って振り向くと、そこには見慣れない人が一人。暗かったが、光に照らし出されていたせいで、そこにいる人が女ということだけは分かった。女はフフフ・・・・・・と小さく笑いながら、少年に近づいてくる。
その瞬間、闇夜に三発の銃声が響いた―。
そしてどこからか聞こえる別の少年の悲鳴。朦朧とした状態の少年にとってその声は奇妙なように聞こえた。
次第に暑くなる室内、やがて少年は意識を失った。
次に見えたのは、一面の白の世界。一人の男の姿が彼の視界に飛び込んできた―。
「・・・輝君・・・・・・・・・輝君・・・・・・大輝君!」
その声に覚醒した大輝は、教室内の眼がいっせいに自分の方へ向いていることに気づいた。「この問題がわかるかしら?」という小林先生の足し算の問いに、即座に四十二、と答えた。
「答えは合っているけど・・・・・・具合が悪いの?」
「先生、大丈夫ですよ、いつものことですし・・・・・・。」
小林先生の憂いを大輝はさらりと流した。
学校から帰宅し、哀がゆっくりくつろいでいたところに、博士が何かを持ってきた。それは大きな封筒だった。
「哀君、君宛じゃよ。ポストに入っていたんじゃよ。」
哀が見てみると、確かに宛名は「灰原哀」になっていた。見た感じは普通の白い封筒で、怪しさを感じさせなかった。
哀が慎重に封筒の封をはがすと、一枚の手紙と、何やらMOらしきものが出てきた。
「どうして・・・・・・?」
凍りついたような顔で、哀は手紙とMOを見た。
「どうしたんだね、哀君。」
「見て。この前誰かに盗まれたMOが戻ってきたわ。この手紙と一緒にね。」
「で、その手紙にはなんと?」
「一番最初に書いてある言葉が問題よ!」
哀はそう言い、手紙を博士に差し出した。折りたたんである紙を開き、読もうとした博士は驚愕した。手紙はこのように始まっていたのだ。「親愛なる宮野志保様」と・・・・・・。
「もしかしてワシらの予想通りもうバレているのか・・・・・・君と、そしてもしかしたら新一君の正体が組織に。」
「手紙をよこした人物が組織の人ならね。それより博士、続きを読んでくれる?」
哀がそう急かして言うと、再び博士が手紙の中身を読み出した。
『親愛なる宮野志保様
貴女様から無断で持ち出したMOを返却いたします。MOは同封されておりますので、内容をご確認ください。大変ご迷惑をおかけしてすみませんでした。
貴女様と同じ科学者より』
手紙の内容はだいたいこのような感じで短く、宛名もはっきりとは分からなかった。
「返ってくるのがいやに早いわね。どういう裏があるのかしら?」
急いで哀が同封されていたMOをコンピューターに入れて開いてみると、そこにはきちんとAPTX4869のデータが表示されていた。中身はどこにも損傷がなく、薬のデータが改ざんされたようでもなかった。
哀は以前のようにデータが消えていなかったことに一安心したが、盗んだ者がこのデータそのものを必要としていたことは明々白々だった。組織が科学者シェリーがいない中で再びAPTX4869の研究をし始めたのだと仮定すると、非常にこちらはまずい状態に追い込まれる。そこで詳しく調べられたら、いままで幼児化するという仮定が疑惑の範囲内だったのが、実証されてしまう可能性があるのだ。
「形勢不利ね、私達。」
哀が険しい表情で呟いた。
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