第十話:不信
「ええと、大輝君の席は・・・・・・。」
小林先生がキョロキョロと教室中を見た。しかし小林先生が席の場所を言う前に大輝は空いていた机のところに座った。
「ここが僕の席ですね、先生。」
大輝が抑揚のない声で確認した。
「え、ええ。そうね・・・・・・。それじゃあ、みんな。大輝君も席に着いたから授業にしましょう。」
先生が手をパンパンと叩いた。
ねえ、お兄ちゃん。僕なかなか友達できない・・・・・・。
青空の下、二人の少年が手をつないで歩いていた。一人は高校生位、もう一人はまだ十歳にも満たない子供だった。
どうしてそう思う? お前は。
さあ・・・・・・。ただこういうとなんだけど僕のレベルに見合う人がなかなかいないというか・・・・・・。でもこれではまるで他人を見下しているように思えるんだ・・・・・・。
まあ、お前はお前の好きにすればいいんだよ・・・・・・。
小林先生は授業にまじめに参加していなさそうに見えた大輝を注意しようとして、彼の顔を見た。
「え?」
「どうしたの、小林先生。」
コナンが尋ねた。
「いや、何でもないわ。授業を続けましょう。」
小林先生が自分を落ち着かせるように言った。
哀は小林先生が転入生を紹介していた時からその彼、大輝の視線が気になっていた。その眼を見ると組織にいた時の自分を思い出して寒気を感じ、彼も組織の一員なのでは、と思った。哀は考えていた。彼の授業態度を見て自分の気のせいだったのか、それともそうではないのかが分からなかったのだ。頭が悪いフリをしているだけかもしれないと思うだけで不信感、恐怖感がつのる一方だった。
「おい、お前何ボーっとしているんだよ。」
大輝の隣の生徒がヒソヒソ声で大輝に話しかけた。
「ああ、悪い・・・・・・。寝不足気味でね・・・・・・。」
大輝はゆっくりと返答した。
隣の生徒が彼のノートを覗くとそこにはその生徒にとっては理解できないような絵や文字ばかりが描いてあった。黒板の文字はそのノートに全く写されていない。こんな時に授業も聞かずに何の考えに没頭しているというのか。隣の生徒には全くわけが解らなかった。
一日の授業が全て終わり、大輝を歩美達が少年探偵団のメンバーにしようとしているところだったが、哀だけは大輝の近くに近づき難かった。彼から独特のオーラを感じ取っていたのだ。探偵団の者達から感じる陽だまりのような暖かさとは違い、彼からは何か重苦しいような雰囲気が感じ取れた。
「探偵団の君達はいったいどんな活動をしているんだ・・・・・・。」
大輝は感情の起伏も見せずに言った。
「そりゃあペット捜しのような小さなものもあるけどよ。それでもいままでに何回も殺人事件だって解決してきたんだぜ。」
元太が探偵団のアピールをした。
「それで、江戸川君や灰原さんも探偵団にいるんだな・・・・・・。」
「うん。コナン君も哀ちゃんも小学生とは思えないほど賢いんだよ。」
歩美が元気に言った。
哀はそれ以上自分やコナンのことを話してほしくなかったが、この子達に不信感を抱かせたくない、組織のことに巻き込みたくない、そして何よりも彼に変なことを感づかれたくないという思いから何も言うことができなかった。
「ちょっと江戸川君、あなた何とも思わないの?」
哀が強い口調で、ただしコナン以外には聞こえないように言った。
「何とも思わないのって何がだ? 少なくとも俺は何も感じねえけど。」
「あ、そう・・・・・・。」
哀はあきらめたように言った。
結局、大輝はその後たくさん歩美達に質問をした結果、探偵団のメンバーになることが決まったのだった。
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