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↓登場人物の設定のようなもの。

僕・・・××
青年・・・彼
タイトル未定
作:高比良 柚与


0.
 ありがとう、さようなら。
 言葉は輪廻する。


1.

 おはようございます。と、誰もいない部屋に呟いて、僕は自室へ入った。
「誰か・・・・・・。僕を殺してくれる人はいないのかな・・・・・・?」
 窓の外で、太陽が白く耀いている。外に出れば、熱気が僕を飲み込むのだろう。と思った。
 
 暑いのは嫌。
 寒いのも嫌。
 暑すぎるのは嫌。
 寒すぎるのも嫌。

 この国は、僕を死なせないつもりだろうか? 暑ければ死体は腐って、検視官の人に迷惑がかかるし、寒ければ、死体は内から外へ冷える。
 どちらも嫌な死んだ後で、どちらも嫌な――選択肢だ。
「・・・・・・死にたい」
 こんな生活・・・・・・、こんな人生・・・・・・。真っ平ごめんだ。こんな思いをするくらいなら、まだ死んだ方がマシだ。
 そんなことを思っていたら、家のチャイムが鳴った。
「こんにちは――××さん」
 扉の向こうの人は僕を呼ぶ。どうやら男のようだ。
「はい。どちら様で・・・・・・」
「あ・間違った。おはようございますだった」
 独り言を呟く僕の真正面に立つ少年のような、青年。
「おはようございます。殺し屋です」
 扉を開いた後に言われたので、閉めるタイミングをすっかり逃してしまった。もう既に十秒以上は経ってしまっている。
「・・・・・・・・・はい?」
「だから、殺し屋です。死にたがり屋の××さん。・・・・・・いや、違うな。殺されたがり屋の××さん。かな」
 目の前に立つ青年は女子のような笑顔で言った。
「死にたいのに死ねない××さんを殺しに来ました。二日以内に殺せといわれているので、その内に殺害する予定なので、よろしくお願いします」
 ・・・・・・・・・この男は何をしに来たのか、二時間後に僕は理解した。


2.

「理解していて頂いてよかったです。実は自分、派遣の人間なんですよ」
「はぁ・・・・・・」
 コイツは本当に殺し屋か? と思わせるくらい、彼は素直な青年だった。こうして殺しを繰り返す事によって、人は心から穢れていくのだな・・・・・・。
 そう思った。
 って、そんなこと思っても僕には何の関係もないけれど。
「××さん、何でそんなに死に方に拘るんですか? 面倒じゃないですか」
 面倒・・・・・・?
「いや、別に面倒じゃないよ。てか、死に方に拘るって・・・・・・。死ぬときに辛いのって、誰でも嫌じゃないか。苦しかったり、眩暈がしたりするくらいなら、まだ生きる方を選ぶよ」
「・・・・・・・・・へぇ」
 彼は、納得したのか、していないのか。微妙な返事を返してきた。
 てか、そもそも殺し屋に派遣社員とかあるのか? つか、会社?? 組織じゃなくて??
 ・・・・・・・・・・・・?
「うん。まぁ、大体は分かりました。辛い思いとかしたくないんですよね。はい」
「・・・・・・・・・」
 分かってんのか? コイツ。
 とか思ったけど、僕は彼に任せることにした。


3.

「いやいやいやいや! だから何で窒息死!? もう、自棄になってんじゃねぇよ! お前、本当に殺し屋か?! 普通に考えろ。窒息って、苦しいじゃねぇか!」
「必至に考えてあげたのに、全部断った××さんが悪いんですよ! 何で、全部拒否するんですか!? 最後のやつなんてもう、ジェスチャーだったたじゃないですか! そこまで拒否らなくてもいいのに・・・・・・。そこまで言うんでしたら、××さんも考えてください!」
「お前が提案したの、全部苦しみを伴うんだよ! てか、考えるの、お前の役目だろ?!」
 僕と彼は、僕の死に方について口論していた。
「先に言ったじゃないか! 苦しかったり、眩暈がしたりするのは嫌だって!!!」
「ですけど、死ぬ時に苦しみは付き物です。それくらい我慢してください。毒薬飲むわけじゃないんですから」
 我慢できないから言ってるんですけど・・・・・・・・・。
 僕の言葉も虚しく、彼は携帯を広げてどこかに電話をしだした。何だコイツ?
「もしもし? 俺ですけど。はい、・・・・・・はい、そうです。えぇ。この人ってこんなに我侭だったんですか? ・・・・・・・・・・・・はァ!?」
 彼は耳に当てていた携帯を取り落とした。呆然とした顔で、僕を見ている。
「あんた・・・・・・。そんな人だったんですか・・・・・・・・・?」
「うん? 何の話?」
 携帯の向こうで男が喋っていた。
「もしもし、T君? お久し振りだねぇ。うん、元気? 僕の方は知っての通りさ。そうだよ、あの日から何も変わっちゃいないよ」
 
 あはは。そうそう、そんな感じ。ははははははは。
 
 彼は未だ呆然とした顔で僕のほうを見ている。
「それで――彼には何が出来るんだ?」
 へぇ、そんだけ。どんだけぇ〜ははは。

◆◇――◇◆

「す・・・・・・いませんでしたぁ!」
「何? いきなり。びっくり出来ないよ。いきなり過ぎて」
 彼は今、僕に向かって何故か土下座をしている。別に、何もしなくていいのにさ。
 へ、今まで僕に刃向かった罰さ。
「・・・・・・・・・××さんが、望む死に方で、よろしくお願いします」


4.

 走馬灯って、あれだろ。脳内限定レイトショーみたいなやつ。・・・・・・・・・だっけ?

「え?! 眉間に一発ですか?」
「そうだよ。その方が早いから」
 驚く彼に対して、僕は冷静に言った。いくら殺し屋派遣社員でも、人間の急所か弱点は知っているだろうよ。そう僕は薄っすらと思った。
「君、新人の中で一番射撃の命中力よかったんでしょ? てか、高いんだろ? なら僕をたった一発の弾だけでころせる・・・・・・・・・。ころしてくれるだろう?」
 殺してくれる筈だ。そう思った。
「え、でもですね・・・・・・××さん、あなたは」
「追われてるよ。元仲間にね。裏切ったしね、奴等を」
 彼の表情は沈んでいた。てか、沈むのって僕じゃない? 何でコイツ??
「だったら・・・・・・、ここにいる俺も危ないんじゃ・・・・・・・・・!」
「自分優先かよ。僕が君を殺すよ」
「いや、それは・・・・・・・・・」
 彼がここにいては危ないと思ったのは、彼がここに来た瞬間から。でも、よくここにこれたものだと思う。この周辺は多分、奴等が見張っている筈だ。号室だって、とっくに割れている筈だ。
「しにたくなかったら帰っていいよ。多分、奴等も動き出す筈だし・・・・・・」
 その時、家のチャイムが鳴った。本日二度目の来客。今日はどうした? 別に、パーティーなんかやってないんですけど。
 覗き穴から、外を窺う。
 あぁ、もう来たの? 早いよ、君たち。
「はい」
 扉を開けると、黒スーツの男が四、五人。容赦なく入ってきた。ある意味、不法侵入。
「貴様・・・・・・・・・××か?」
「ご覧の通り、××とは」
 僕のことだ。
「俺のことだ」
 僕と黒スーツの会話に、彼が割り込んで来た。何で僕の名前を名乗ったのか、分からなかった。
「は?」
「・・・・・・・・・××さん、ここから逃げてください。即急に」
 彼は小声で僕に言った。


5.

 どんまい、自分。
 この場を任すか、任さないかは自分次第だ。
「えっとね、君・・・・・・。逃げるのは君の方だよ」
「いいえ。あなたです」
 彼の目は真っ直ぐだった。最初・・・・・・数時間前に会った時とは全く違う目をしていた。僕は直感した。
 
 彼は、僕が何故死にたいのか、分かったんだ。
 何故僕が、
 こんなにも、
 殺されたがったのか。
 分かったんだ。
 分かってしまったんだ。

「・・・・・・・・・。そうか。だったら、君は早く逃げなよ。ここにいても、短い人生に幕を下ろすだけになってしまう。楽しくない僕に付き合って死ぬより、楽しい人生に付き合って死になよ」
「どう言う意味かよく分かりませんが・・・・・・。俺は逃げませんよ。あなたは、未だ死んではいけない人間だ」
 彼は本当に知ってしまったらしい。
「まだ死んじゃいけない? ・・・・・・・・・もう死んでもいい頃合さ。君も殺し屋なら分かるだろう? ・・・・・・裏切りは、己の命で償わないと意味を成さないものだよ」
「やっぱり、それがあなたを縛り付けていたんですね。俺が予想した通りだ」
 彼は僕の盾になるように、目の前に立った。黒スーツの男。四、五人はスーツの内から黒い光を放つ一丁の拳銃を出して、彼に突きつけた。
「俺のことは気にしないで下さい。死んだら、あの人が処理しにくる筈ですから」
 あの人=T君
 という式が浮かんだ。なるほどね、そりゃT君なら来るわな。だって、T君は死体処理班の担当だからね。
「お別れの挨拶は済んだのか? ××」
「冗談言えよ。俺はお前等なんかに殺されるほど、弱かねぇぜ」
 彼は僕を名乗って、目前の男と会話をする。そうこうしている内に、ベレッタM92の牙は、彼に向く。
「貴様が行った行為、死んで侘びるがいい」
先ず、先頭の男が。引き金を引いて、彼に向かって撃った。その弾を見事かわした彼は、次に飛んで来る弾に備えて態勢を整える。
「・・・・・・ちょっと待ってくれよ。何で、君が・・・・・・・・・・・・」
「貴様、何者だ?」
「・・・・・・・・・・・・僕が××だよ。彼はこのことに一切関係ない。僕の知人だ」
 気が付けば、彼の前に飛び出していて。
 気が付けば、彼に取り押さえられていた。
「何やってるんですか!? 早く逃げてくださいよ!!!」
「これは僕に関係しているんだ。君には、巻き込まれる理由なんてないんだ。だから、ここを早く――」
 彼が、僕の視界から消えた。床に、うつ伏せて、倒れていた。
「何をごちゃごちゃと・・・・・・。貴様が××であるのなら、殺すだけだ!」
 黒スーツの男が構える。倒れている彼は、背中を撃たれていた。
「・・・・・・・・・僕に関わると、皆こうなるんだ・・・・・・・・・・・・。いいよ。僕を殺せよ。ぐだぐだ生きても――苦しいだけだし」
 だん。
 と。
「・・・・・・・・・」
「な」
「・・・・・・・・・」
 額に、いや、眉間に、何かが当った。少し前まで平気で触っていた、鉄の、鉛の重さが、それを弾丸だと、理解した。
 崩れる。
「・・・・・・・・・」
 有無を言わさず、
 崩れ墜ちる。


6.

 言葉が、輪廻する。
 僕の中で、輪を描く。
 
 死んだ。

 僕は死んだ。
 死ねなかったけど死んだ。
 死にたかったから死んだ。

 ありがとう。
 僕を殺してくれて。
 さようなら。
 僕を殺した人。

 ありがとう、さようなら。
 僕の中で、言葉は輪廻する。
 僕の中で、言葉が輪廻する。

 ありがとう。
 僕を殺してくれて。
 さようなら。
 僕を看取ってくれて。
 さようなら。
 僕を殺しに訪ねて来てくれた人。
 ありがとう。
 僕のことを()ってくれて。
 君に殺されて、僕は充分満足だ。
 これでやっと、僕は
 楽に逝ける。

 ありがとう、さようなら。
 僕の中で、輪廻は止まった――。



 学校で休憩中に思いついた、冒頭の“ありがとう、さようなら。”から作った、即興の小説(?)です。
 数人の人に読んでもらったけど、
「暗い。暗すぎるだろ」
 とかダメ出しをされましたが、ここに載せることにしました。暗すぎました。すいません・・・orz
 こんな、「また殺し屋?」みたいな話ですが・・・。
 区切りの数字は特に意味はありません。ただ、何となく付けて見たと言う感じでした。













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