幼馴染みの彼女とミルクティーと。
俺には幼馴染みの女の子がいる。
家はお隣同士で、物心が付く前から高校生である今日まで、ずっと一緒だ。
何かで一緒に笑って、何かを取り合う為に喧嘩して、何かで一緒に泣いたり、一緒に何かで遊んで楽しんだりした。
これからも……多分、一緒だと思う。大人になっても。
中学生になり、彼女が制服を着る様になってからは、感じ方が変わった。
ずっと一緒に居るのに、何故こんなに胸が痛むのだろう?
俺は彼女を好きだと思っていたのだろうか? しかし、ただの幼馴染みの筈だと自分に言い聞かせ続けた。
彼女は俺の事をどう感じているのだろう?
俺はそんな考え事しながら、寒い朝の通学路を歩いていた。
それが高校一年の今日まで続き、そして十二月二十四日の今日は、二学期末の終業式だ。
彼女は今日も一緒に居るが、俺が考え事をしていたので、俺より先を歩いていた。
烏の濡れ羽色の長い髪と、ライラックカラーの毛糸マフラーを靡かせながら。
彼女が巻いているマフラーは、白い毛糸で×印の模様が小さいのと大きいのが規則的に編まれているのが見える。
通学路の横に並ぶ樹は、冬である事を知らせる様に、枝だけの姿で立っていた。
立ち並ぶ樹の隙間から朝陽の光が射し、彼女がその光を浴びると、長い髪がマフラーの色と同化仕掛かり、綺麗に映えた。
ドキドキと疑問がぶつかり合い、不思議な感覚だ。
いつに胸に抱えている悩みを打ち明けようか、と毎日タイミングを窺っているが、中々気恥ずかしくて打ち明けられずにいる。
突然、彼女が立ち止まって振り向く。
振り向いた彼女は、紙パックのミルクティーから伸びているストローをくわえて飲んでいた。
思えば、毎朝、コンビニに寄るとミルクティーを買って行き、飲んでる気がする。
俺がこんなにも悩んでいるのに……と、少し溜め息が出てしまった。
彼女はジッと俺を見つめる。
……何だ?
俺は恥ずかしくなり、彼女を見ない様、周りの景色へ目を逸らす。
視線を少し彼女に向けても尚、彼女はジッと俺を見つめていた。
溜め息が出たのが不味かっただろうか?
彼女の方へ顔を戻し、ゴメンと言おうかと思った瞬間、彼女から先に話し掛けられた。
「毎朝、何に悩んでいるの?」
「あ……あぁ、お前って……ミルクティー好きだよな思って……」
可愛らしく首を傾げる彼女に、しどろもどろと俺は誤魔化して答えた。やはり素直には答え辛い。
それでも彼女は笑顔で答えた。
「うん、美味しいし」
「……そう。じゃ、俺もこれからミルクティー買おう」
彼女は先の通学路へ向き直ろうとする。
すると、彼女の口から、思ってもみなかった言葉が出た。
「……キスと口づけ、どっちがほしい?」
キスと口づけ……
キスといえば――ドラマとかで男と女がやっているアレ。
そういえば、どんな味がするんだろう……?
心臓の鼓動が急に早まる。多分、今まで以上に胸が痛くて熱い。
口づけは――
「って、どっちかと云えば一緒じゃね? 間接キスとかじゃ……」
俺はそれに気づくと落ち着きを取り戻し、同時につい素直な言葉が出てしまう。彼女はムッとして。
「わたしのキスが欲しくないの?」
頬を染めて、少し強気で言って来る。
俺はそんな彼女にたじろぎ、情けなくも弱弱しく素直に答えた。
「……ホシイデス」
「なら、よろしい」
何故かえっへん胸張りと偉そうな彼女。
俺は二度目の溜め息をついた。
「……でも、今は此処じゃ出来ないから、間接キスだけあげるよ」
そう言って、彼女が先程まで飲んでたミルクティーを差し出され、先を行かれる。
……
「……あ」
俺は呆然と立っていたが、ハッとしてミルクティーを一口飲むと、彼女の後を追う様に小走りした。