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少々トンデモ設定の異世界召喚モノです。
本編
序話




「この辺りのバランスが悪いんだよなー、このクソゲーめっ」

 そう悪態を吐きつつもプレイを止められない彼は、ポータブルゲーム機のボタンをぽちぽちと押しながら裏山にある古い神社の境内を歩いていた。

 彼は参拝する目的でここに来た訳ではない。人気(ひとけ)が無く静かで快適にプレイ出来る環境を求めるうちに、この場所が定番になったのだ。
 家では母親が『またゲームばっかりして!』と五月蝿いので、外にプレイ安住の地を求めた結果である。

「くそ〜、折角手に入ってもポイントが足りないから弄りようが無い……こうなったらチート使うか」

 プレイ中の画面に写っている3Dで描かれたアイテムをカーソルで動かしながら、彼は『最終手段(かいぞうコード)』の使用を考えていた。手に入れたアイテムを好みのステータスに変更して使えるシステムが売りのRPG(ロールプレイングゲーム)

 ゲームの内容自体はオーソドックスな冒険活劇風の有り触れたモノだったが、このゲームの売りであるアイテム・カスタマイズ・クリエートシステムは中々のやり込み要素があって、彼をこのゲームにハマらせている部分でもあった。

 しかし、明らかにバランスを間違えた自由度の低さが、多くのプレイヤー達からブーイングを呼んでいる。彼がこのポータブルゲーム機で使える『最終手段』のディスクを取り出そうと、カバンに意識を向けたその時――

――来タレ邪神ヨ――

 頭の中に声が響き、同時に身体を引きぬかれるような感覚が全身を襲う。

『な、なんだっ!』

 突然の浮遊感に階段辺りで足を踏み外したかと身を竦ませた彼は、思わず頭を庇いながら自分の足元に視線を向けて唖然となった。自分自身がそこにいる。頭より少し高い位置から自分の後姿を見下ろしているのだ。

『うおっ 幽体離脱か! ……いや、なんか変だぞ?』

 高い位置から見下ろす自分自身は、何かに驚いたように周囲をキョロキョロと見渡している。やがてゲーム機を鞄に仕舞うと、首を傾げながら足早に去って行った。

『なんだこれ……、一体どう……なっ……て――』

 視界が水の中のように揺れて徐々に暗転して行き、朦朧とする意識の中、彼は星々に囲まれた宇宙のような暗い空間に浮かぶ巨大な皿と、その上に広がる広大な大地を見たような気がした。

『……象と亀は……居ないんだな……』






 その世界は、世界と世界の狭間に存在していた。全天に見渡せる星々のような輝きは、その一つ一つが狭間の世界から見える沢山の異なる世界。星の数ほどの異世界と繋がる狭間の世界に、ポツリと浮かぶ巨大な円盤状の大地。

 そこに住む人々はこの大地を『カルツィオ』と呼び、国を建て、繁栄し、衰退し、滅び滅ぼし、子を産み育て、連綿と続く人の生活と営みによって悠久の歴史を紡いでいた。
 カルツィオに住む彼等が大地を飛び出し、この世界の全貌を知るには、まだ後数万年の時が必要であった。


 そんなカルツィオの歴史を見守り続ける、この世界の始まりから存在する『意思』がある。この世界の神とも言えるその存在は、世界の維持と循環を促す為、定期的に異なる世界から使者を喚ぶ。

 異なる世界からの来訪者は、カルツィオの大地に様々な波紋を呼び起こし、停滞を打ち溶かして新しい流れを作り、世界の循環に貢献してくれる。

 ある時は、巨大な体躯を持った『竜』と呼ばれる存在。ある時は、人間から見るに異形と形容される姿の『怪物』などが喚ばれ、彼等はこの世界の神たる存在に与えられた力を持って世界の循環に大いなる貢献を果たした。

 今回また、世界に循環を促す時期が訪れた事に伴い、この世界の神たる存在は異世界からの来訪者を喚ぶ。

――来タレ邪神ヨ――

 無限とも言える程に連なった異なる世界。数ある異世界の中から喚ばれたのは、人間型の若い男だった。

――汝ノ望ム(ちから)ヲ示セ――

 ()が思い浮かべた力は、今までに喚ばれた者達には見られ無い一風変わったモノだった。殆どの来訪者は、敵を打ち倒す強大な力や、永遠に続く生命を望んだ。
 尤も、敵を打ち倒す強大な力を望んだ者は、やがて老いては打ち倒され、永遠に続く生命を得た者は、永遠に繰り返される離別を嘆いて自ら生命の終焉を選んだが。

――汝ノ望ム(ちから)を与エヨウ――

 異世界の若者から引き抜かれた『その若者の意思』は、カルツィオの大地に肉体を得て光臨を果たした。







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