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『ゆめや』
作:夢月こもも



31.孤独/3


佑香は慌てて“てるてる坊主”を出し、うめの手の平に載せる。
「お借りしますね」
 うめはそれを両手で挟むと、額を寄せた。一心にこいねがう姿に、三人は一度見合わせた顔をまた戻す。
「……ふぅ。沙耶ちゃんは無事よ」
「本当ですかっ!?」とは潤。
「ええ。自分から家出したの。“また”危ない目にも遭ったけれど、今はひとり」
 同時に種類の違う溜め息が漏れた。
「はぁー」とは佑香。
「ったく、心配掛けやがって……」とは大輝。
「でもね……早く止めないと」
「え?」
 最初に声にしたのは佑香。「止めるって、何を?」
「実は……このお嬢さんは、ここにも来たことがあるの」
「言ってました」
 横から口を出す大輝。「怒鳴られて、願いごとも聞いて貰えなかったって」
 うめは頷き、肩を落とした。
「あの時、むげに追い返したりしないで、もっと親身になってあげていれば、こんなことにはならなかったのかもしれないわね。本当に申し訳ないことをしてしまって……」
 三人を順番に見る。「ここに持ってきたお金が浮いてしまったことで、余分なことを考えるに至ってしまったようだけれど、それを夕べ悪い男たちに取られてしまったの。このお人形はその時にもげてしまったものだわ。それで沙耶ちゃんは……またそのお金を作ろうとしているの」
「じゃ、じゃあ――!?」
 うめは渋い顔で頷いた。一同が見合う様子に、かかとを立てる。
「急ぎましょう。三人さんは、初めての試みだけれど――」
 綾乃父娘を思い出していた。「多分、同時に出来るはずなの」
 佑香を中にして、三人に腰を下ろさせた。目を瞑らせた6本の手を交互に重ね、その背後からそれぞれの首の付け根や頭頂部に手を置くうめ。声に出すことで、わざと三人の注意を引いた。
「この子たちを、大事なお友達のところに導いて下さい。掛け替えのない魂が汚されぬうちに、取り返しのつかないことになる前に、どうかこの子たちの真直ぐな気持ちを、お友達の心に届けて――」
 そう念じながら、一方では沙耶に詫びていた。
 ……ごめんなさいね。表面しか見て上げていなくて。
 1分経ったかどうか。うめが汗ばんだ若い背中に問い掛ける。
「……あなたがたなら、“ここ”がどこだかわかる?」
「俺はわからないな……佑香は?」
 目を閉じたままの佑香が頷く。
「待って、待って――知ってる気がするんだけど……えっと……あ! やだ、沙耶の前の家よ! うちのすぐそば!」
「そう。そうね。でも、もう今はそこを出て……」
 見えている景色を、念で送るうめ。「このにぎやかな通りがどこだか……私にはわからないけれど」
「……えっと、えっと……これって……渋谷? あ、あの子、塾が渋谷だから定期持ってるはず!」
「……だな」
 と大輝。「○○○通りだろ」
「おばあさん、今、成元がここに?」
「いいえ、今は……ここよ」
 うめは潤の背中に手を当てる。
「……喫茶店?」
 ひとりで座っている沙耶の映像が、順番に送られた。頬杖をついて外を眺めている姿だ。
「沙耶っ!」
「店ん中まではわかんねぇな」
 大輝の呟きに、佑香の足が反応した。
「じゃ、行って探そう!? 一軒ずつ覗いて歩けば――!」
「だな」
「うん」
 終わりの合図もないうちに、立ち上がろうとする三人。
「いいえ、待って頂戴……」
 うめは、苦しげに胸を押さえた。「お一人には残って欲しいの。沙耶ちゃん、もうすぐまた移動し出すから、連絡係にお一人はどうしても――」
「大丈夫ですかっ!?」
 佑香がうめの背を擦る。「潤、じゃあ、あたしが――」
「いえ、あなたじゃなくて――」
 うめは肩で息をしながら、男子二人の片方に目を留める。







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