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『ゆめや』
作:夢月こもも



28.駐車場


【駐車場】
 ……踊らされてる?
 走ってきた大輝の顔を注視する佑香。
 怒りとは少し違う感情が横切った。
「ジュン!」
 大輝が呼びかけると、潤は静かな目を向けた。
「どうした?」
「オ、オレよ――オレッ!」
「だから、どうしたっ?」
 大輝は、喉元まで出かかった言葉を、どうやって吐き出したらいいかわからないといった顔だ。
 沈黙に耐えられない性格の佑香。
「大輝、今あんた、だれに電話してたのっ!?」
「ウッ……」
「黙ってないで、なんとか言いなさいよっ!」
「……」
 潤が口を挿む。
「佑香は、ちょっとの間、何にも言うな」
「なっ、なんでよっ!?」
「いいから」
 大輝に向き直った潤。
「――なぁ、ダイ。朝、俺に言ってくれたこと、本当のことなんだろ? 佑香が心配だから忠告してくれたんだよな?」
「あたしを? 心配? 大輝が?」
 潤は無言で手の平を佑香にかざした。佑香は「んっ」と口を噤む。
「なっ、ダイ、そうだよな?」
「こ……こんなつもりじゃなかったんだ……アイツ……」
 大輝が観念したように話し出した。
「『泊まる所は大丈夫だから』っつったんだよ。だから、オレ、安心してっつーか――アイツ、マジなにしでかすかわかんねぇと思ったから……だから――」
 照り付ける陽射しをものともせず、潤は微動だにしない。
 一方の大輝は、だれが見ても挙動不審と思えるほど、汗をかき、一言ずつに肩を揺らす。
 その肩に、潤が手を置いた。
「ダイキ――全部……頭から、全部話してくれないか。知ってること全部だ。今度は、作ったり、隠したりしないで、全部だぞ」
「オメェ、気付いてたのか――?」
 固まった大輝。潤は、ただ首を横に振って言う。
「信じてるよ。ダイが心底から悪いヤツじゃないってこと、俺は信じてる。だから――」
 大輝は、ゴクリと喉を鳴らした。
【駐車場】
「オ、オレ……」
 大輝が言いかけた時、3台置いた奥の車に人影が揺れた。エンジンを吹かす音がする。
「あ、大輝、危ないからっ」
 佑香が大輝の腕まくりした袖をつまんで、手前に引っ張った。
「さっ、さわんじゃねぇよ!」
 その指先をパシッとはたかれて、鼻白む佑香。
「そんな汚そうにしなくたってっ――失礼ねっ!」
 プイッと膨れながら、車が通り過ぎたあとを無意識に見る。
 車体の下になっていた場所に目を留めた。
「あ……?」
 引き寄せられるように駆け寄り、地面から拾い上げたものに見入る。
「なんだ? どうした?」
 潤の声に振り向いた佑香は、巣から落ちた雛を両手に包みこむように、驚きと、困惑と、憐みの混じった顔をしている。
「これ……これ! 沙耶のよ!」
「なにっ!?」
 男子2人が両脇に寄った。
 手の平には、布製の小さなてるてる坊主。
「これがっ!?」
「うん、間違いないっ! あの子、これ、いつもカバンにぶら下げてたものっ」
「マジかよ……」
 呻く大輝。「やっぱ……やっぱ――っ!」
 潤が尋ねる。
「ダイキ、正直に言えよっ。さっき成元にかけてたんだろっ!? 出なかったのかっ!?」
 観念した顔の大輝が、苦しげに唸る。
「出ねぇのか、出られねぇのか……」
「大輝! あんたあたしたちのこと、からかって喜んでるんじゃ――」

「ガァァァーッ!!」
 大輝が、いきなり両拳を握って叫んだ。「オレが引き受けなきゃ、アイツ、マジやると思ったからっ! オメェらのどっちがやられても、いけねぇと思ったからっ!」
「俺たち? 狙ってるのは佑香じゃなかったのか?」
 聞き返した潤に続ける佑香。
「ね……狙ってるって――?」
 大輝は、早口で昨日の記憶を話し始めた。
「昨日、オレがアイツとこの店に入った時……」







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