26.捜索/2
キョロキョロしながら待つうちに、大輝の顔色が妙に悪いのに気付いた佑香。
「大輝? どうした? 走り過ぎて、お腹でも……?」
「な、なんでもねぇよっ」
「本当だ。今のうちに、トイレ借りて――」
と潤。「成元と何を食べたかだけ、言っていってくれよ」
「グラタンと、マウンテンバーガー。ドリンクバー2つに、サラダが一つ」
大輝はボツボツと言い並べ、応接セットに勝手に座り込んだ。
「ねぇ、大丈夫?」
「うっせーな」
「なによ、折角ひとが心配してあげてるのに――」
「頼んでねーよ!」
キリリと尖った声を上げる大輝の横顔を一瞥する潤。
推し量るように見つめた後で、佑香に言った。
「おい、成元の携帯には繋がらないのか?」
「えっ? あ……番号知らないのよ」
「知らない? 幼なじみなんだろ?」
「そうだけど。なんて言うのかな。小6の時に引っ越してから、あの子、ガラッと変わっちゃって。清廉に入ったのだって、入学式の時に知ったくらいで、もう全然交流なしって言うか――そんな仲なのよ、あたしと沙耶って」
「ふうん。そうなんだ」
潤はそれ以上尋ねようとはしなかった。
ここにいる面々のだれとも心を割って話すほどの仲でもない沙耶をこうして探していることが、奇異なものとして佑香の心をかすめた。
……なんで、今、こんなところに、このメンバーでいることになっちゃったわけ?
「待たせたね」
プライベートの声になった店長。
50代くらいだろうか。こめかみの辺りに白髪が固まって生えている。
「注文したものは?」
大輝がさっきと同じように伝えた。
「……えっと――じゃあ、これかな?」
「ありましたか?」
と潤。佑香も店長の脇に回りこんで、肩越しに印字ロールの細かな文字を覗き込む。
店長は咳払いを一つ。
佑香から少し離れるように座り直すと、ずれた老眼鏡を顔に押し上げた。
「お会計は2,340円で、時間は……18:46となってるね」
「6時46分ですね!?」と潤。
「その時、会計してくれた人ってどなたですか!?」と佑香。
大輝は黙りこくっている。
「平林と言う大学生なんだが、いつも6時から9時までのシフトが多いかな。昨日もそうで、今日は……うん、今日も6時からインの予定だな」
「今は、連絡とれませんか? 電話で、友だちがその時ひとりだったかどうかとか、聞いてもらえませんか?」
丁寧に尋ねる潤。
「うーん、授業中かも知れないし。覚えているかどうか……」
「お願いします!」
一番に頭を下げたのも潤だった。
「なんでもいいから情報が欲しいんです! 友だちに何かあってからでは――!」
「潤……」
その真剣さに、佑香は神妙な顔つきになる。
……あたし、薄情かも。だって、今――
沙耶への心配よりも、怒りや苛立ちに支配されていた胸の内を恥ずかしく思った。
大輝も、潤の顔をまじまじと見つめている。
「わかった。ちょっとかけてみよう。繋がるかどうかは、わからないよ」
店長はファイルをめくると、デスクの電話を取り上げ、老眼鏡を上げ下げしながら番号を押していく。
「……ジュン、オメェ――」
大輝が口の中で呟いた。
潤は聞こえないのか、一心に店長の動向を見守っている。
「……うーん、だめだな。電源が入っていないようだ。何回か連絡してみるから、君たちの連絡先を教えておいてくれれば、こちらから知らせるよ。誰かと一緒だったかだけ、聞けばいいんだろう?」
「はい! お願いします!」
北海道で静谷オーナーにしたのと同じように頭を下げた潤。
佑香もそれに続いた。
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