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『ゆめや』
作:夢月こもも



24.失踪/2


佑香はフクロウのように首だけを左右に大きく振って、素早く見回した。
どの顔も、興味なさげだ。
……仲のいい子。仲の――。
数度瞬きをし、挙げかけた右手を拳にした佑香。
「そうか……。いや、実はな。夕べから、自宅に戻っていないそうなんだ。今さっきになって、お母さんから学校に連絡が来た。遅くなることは今までにもあったそうなんだが、一晩中帰らなかったのは初めてらしい。もちろん、高校生で外泊などもってのほかだが、それより安全確認が第一だ。本当に、だれも、成元の行動を知らないのか?」
……沙耶――まさか、援交? でも、あのためのお金なら、潤は戻ったんだから、もう――
佑香は目まぐるしく表情を変えた。床を見たり、窓の外に目をやったり。
その仕草を、全体に注意を払いながら尋ねていた森田が見つける。
「なんだ? 木田はなにか思い当たることでもあるのか? 情報なら何でもいいから言ってみろ」
「え――あ、あの……」
……そんなこと、チクれるはずないじゃん!
 森田が催促する。
「家出にしても、事件に巻き込まれたにしろ、無事を確認するまでは、学校も大騒ぎだ。こんなことは考えたくないが、一刻を争う事態になっていないとも限らないし、ご両親も大変心配しておられる。知っているなら――」
「あ、あの先生、廊下で――」
振り返った潤と目が合った。
眉の厳しい表情を見て、口止めされたように感じた。
……なに? 潤、なんて言っているの?
問い返す間もなく、森田が皆に自習をしているよう告げた。
「さ、木田。来い」
 急ぐ森田の表情を見て、思わず席を立った佑香だったが、途端にどこまで喋ったものか、判断が鈍った。
「先生、俺も、ちょっと思い当たることが――」
潤も立ち上がった。
お前も来いと言わんばかりに、手の平で乱暴に呼ぶ森田。
佑香と潤は急いで廊下に出る。

「で、どうした? お前たち、何を知っている?」
森田は廊下の窓側に寄り、抑え目の声で、佑香と潤を交互に見る。
2人も互いに譲り合った。というよりも、間合いを計りつつ、まだ迷っているようだった。
「何だ! 早くしろ! もしもこれが、誘拐だったり、事件だったりしたらどうするんだ!? こうしている間にも、成元が――!」
そこに、森田の背中で「ガララ」と教室の戸が閉まるのが聞こえた。
3人とも目を呼ばれると、うつむいた大輝と、担任の大場の姿があった。咄嗟に潤が呼びかける。
「ダイッ!」
その声に顔を上げた大輝は、また佑香と潤の2ショットを目にしたのだが、その反応は昨日のものとは打って変わったものだった。
「お、お前、もう……?」と大輝。
素早く首を振った潤を見て、ほっとしたような、困ったような顔になる。
「なんなの? 男子2人が、沙耶のことでなに?」
先生2人など眼中にないかのように、佑香が潤と大輝2人に問いかける。
その様子に、自然と担任たちが合流した。
職歴が長い森田の面前だが、二組の大場は今朝やり込められた潤と佑香に歩み寄る。
「森田先生、こいつらが成元のことをなにか?」
「いや、まだなにも。なんだか言い難そうなんだが――ほら、お前たち、なんでもいいから言ってみろ。先生たちは、成元の無事を確認したいだけなんだから!」
 大場は黙っていられない。潤に鼻面を突きつけて見上げるように睨む。
「さぁ、早く言え! 警察沙汰になったら、困るんだよ! 学校の名が新聞にでも出るようなことになったりしたら――」
森田が口を挿む。
「大場先生。そんなことは二の次だ。とにかく見つけるのを先決に」
大場の腹立たしげな鼻息を、大輝が横から睨んだ。
「先生がそんなだから、アイツ――……」
「なにっ!? 俺がどうしたっ!? はっきり言ってみろ!」
大輝が挑戦的な顔になった。
「アイツ! 自分がいなくなっても、森田先生がジュンにしたのと同じように、大場先生にも大事に扱ってもらえるかどうか、試してるんじゃねぇのかなっ!?」
「なにをっ!? なに、バカなことを!?」
「まぁ、まぁ、言い分を聞こう」
森田が割って入った。「なぁ、日野も落ち着いて話せ。成元は、家出したのか?」
「い、いや、別に、そうは言ってなかったけど……」
明らかに態度の違う大輝に、大場は声を荒げる。
「お前っ! いつ成元からそんな話を聞いたんだ!? いい加減なことを言うと、承知しないぞ!」
「るっせーな! クソ大場には、なに言ったって、通じやしねぇんだよっ!」
「お、お前っ! 担任に向かって、なんて口を!」
大場の肩を、ぐっと掴んだ森田。
「大場先生。ここはこらえて。――な、日野。ちゃんと話してくれ。今、こうしている間にも、もしも成元が大変な事態に陥っていたらどうする。なにか知っているんだろ? ちゃんと――」
大輝は面々を一瞥すると、ボソッと呟くように言った。
「森田先生になら話すよ。それから、木田にも聞かれたくない……」
「な、なんであたしはダメなのっ!? 沙耶は小学校の時も一緒で――!」
「ん? さっき『仲のいい者はいないか』と聞いたはずだぞ」と森田。
「小さい頃は、よかったんです! でも、今は――!」
「まぁ、いい。ちょっと外せ。――大場先生は、他の生徒を一旦みてやって下さい。詳細は僕からあとで――」
「……はい。では、お願いします」
大場はさも不満げな顔だったが、騒がしくなり始めた自分のクラスに戻っていった。
佑香は、廊下の奥(4組側)にスタスタと進み、自分は教室には入らずここで待つと意思表示をしている。
森田は「仕方ない」と言った顔で、大輝に目を戻した。
「で、日野は成元と、いつ、どこで、何を話したんだ?」







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