挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
黄色いレインコート麗子 作者:ジュゲ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

30/85

第二十九話 ナメカワのキモチ

 どうして?
 なんでマッさんは告白してこないの。
 充分、私は気があるようにしているのに。
 気づいていないのかな?
 まさか。
 過去に彼女がいなかったならそれも考えられた。
 でも文化祭で彼女がいた事がわかった。
 なら絶対に気づくはず。
 しかもあのランクで満足してたんだから。
 まだハードルの下げ方が足りないのかな。
 朗読劇の読み合わせも何度も誘ったのに断られた。
 彼は真面目だから朗読劇目線で断ったのでしょうけど。
 朗読劇なんてお遊びなのに真面目なんだから。
 サイトウは本当に鼻につく男。
 自分のことをどの程度のものと思っているのかしらね。
 あのレベルで自惚れてるんだから世間が狭い。

 それにしてもマッさんは舵取りが難しいなぁ。
 やり過ぎれば彼に嫉妬の目が向きすぎるだろうし。
 そうなると臆病な彼のことだから尻込みしてしまうでしょう。
 とても告白するなんて気にはなれないかも。
 かといって、アプローチしないと気づかれない。
 それとなく手を触ろうかな?
 でも、私にはいつも誰かしらの視線が向いているし・・・それはダメね。
 それにビッチっぽくてイヤだし。

 マッさんが私のことを好きだったのは間違いない。
 一学期の時のあの目線。
 あれは私に惹かれている目だった。
 もとより私に惹かれない人の方が少ないけど。
 生徒はもとより、その親や先生ですら私を好きなんだから。
 もう慣れたけど時々邪魔臭くなる。

 でも数学のマドレーヌには困ったわね。
 ほとんどストーカー。
 三回告白されたのを断ったけど、まだ諦めていないみたい。
 今は国語のスズキを盾に防いでいるけど、下手すればエスカレートしかねないし。マッさんに対する彼の半ば嫌がらせに近い行為は増えている。執着心が強いのは困る。ほんと小物。なるべくあの手は使いたくないし。

 それにしてもなんで告白してこないのかな?
 私のことを嫌いになったとか。
 そんなはずはない。
 彼は何時も嬉しそうに私を見ている。
 あれは好きな人を見る目だ。
 好意はあるけど無理だと思っているんじゃないかな。
 彼は私のことを”憧れ”といっていた。
 まだ私を高く見すぎているんだ。
 この間を埋めないと告白しそうにないな。
 それとも、好きだけど彼女ほどではない・・・といったところなのか。

 麗子ほどでは。

 見た時は驚いた。
 全く気付かなかった。
 まるっきり別人だもの。
 美人は美人だけど、私とはタイプが違う美人かな。
 現代っぽい顔ではあるけど、整いすぎていて味気ない。CGみたいな。
 どちからというと中性美人ね。丹精で。
 スタイルもいいけどモデル型。
 貧弱な身体つきでデザイン人形みたい。
 私の方が出る所は出てるし、引っ込む所も引っ込んでいる。
 ほとんどの男性は私の方が好みでしょ。
 ピカソだって、ルノアールだって、少年嗜好のダビンチですら、昔から男が好きな女は膨よかな女性。豊かな女性。絵を見ればわかる。あんな爪楊枝みたいな女には本当の意味で女性の魅力なんてない。教養もなさそうだし成績も最低。思慮深そうにも見えないし・・・いや、でもこれは判らない。彼女は今ひとつ読めないのよね。
 なんで、彼は私に振り向かない。
 あの子にはあんなに素敵な顔を見せるのに。
 どうして私には見せてくれないの。
 付き合って確かめたい。
 早く。
 早く知りたい。
 愛が何かを。
 愛が欲しい。
 きっと彼と付き合えばわかるはず。
 私はいつでも準備が出来ている。
 今は彼に興味はないけど、きっと付き合えば何か掴めるはず。掴めたら後はいい。そこを足がかりに愛のある理想の相手を見つければ済むこと。何かを掴めば後は簡単なはず。候補は沢山いるんだし。何も彼を好きになることはない。悪い子じゃないけど私には平凡過ぎる。物足りない。もっと才気溢れていないと。

 あの時は本当に驚いた。
 マッさんの浮かれた声。
 近くを通った時どこかで聞いたことがあると思った。
 でもあの表情を遠目に見た時に釘付けになった。

 歓喜の顔。

 鳥肌が立った。
 学校では極平凡な彼があんなにも輝いている。
 特に魅力があるとは言い難い彼が光っているようだった。
 その相手が彼女。

 麗子だったなんて。

 本当に誰だかわからなかった。
 一度 見た顔はほとんど覚えられるのに。
 二学期がはじまって気がついた。
 彼が見ていたから。
 マッさんは彼女を気にしている。
 あの感じはあの時に似ている。
 まるっきり別人みたいだけど間違いない。

 麗子。

 汚い格好。
 浮浪者のような体臭の合間に甘い芳香。
 髪の毛はボサボサで長髪。
 前髪を垂らしいつも前かがみ。
 姿勢がいつも悪いから気付かなかったけど、背を伸ばせば確かに彼女ぐらいはある。
 雨が降るときまって真っ黄色の雨具を着てくる。
 最初見た時は頭がおかしいのかと思った。
 声をかけても「うん」しか言わない。
 さすがの私も匙を投げた唯一の女性。
 マドレーヌやササキ先生の話だとテストなんて名前以外は記入すらしないらしい。
 思い出したけど一学期の最初の頃は体育になるといつもどこかにいなくなっていた。アライ先生が「やらなくていいから出席はしなさい」と言ってから出るようにはなったけど、本当に何もやらない。さすがに彼女に関しては何も弁護出来ないわね。宿題もしない行事に協力もしない、声をかけても返事もしない。なんなの彼女は?あれの何がいいっていうのかしら。

 マッさんとはどこで接点があったんだろう。
 全く想像も出来ない。
 学校では話しているのを見たことがないし。
 それどころか相手にもされていない。
 でもマッさんは挨拶だけはしていた。
 思えばマッさんが挨拶しだしたのは一学期の途中からのような?
 どうして?何があったの。
 でもあの頃のマッさんはまだ私のことを好きだったように感じる。
 彼の言う”憧れ”ていた時期。
 今は違う。
 なんていうか少し遠い。
 親しくなったのに遠いっていうのもおかしいけど。
 彼の心がココにないからかもしれない。
 どうして?
 あんな女の何がいいんだろう。
 客観的に考えて彼女にないものをほとんど私は持っていると思う。
 清潔だし、知性も、教養も、美貌も、お金も、社会性もある。
 彼女は度々行事で必要なお金を入れないとササキ先生が言ってたっけ。
 かなりギリギリの生活のようだとマドレーヌも。
 確かに彼女も美貌はあるようだけど私が負けてはいない。

 ただ・・・
 声は綺麗だった。
 あの時、初めて聞いたような気さえする。
 声は負けたかも。
 通る声。
 透き通った声。
 マッさんは声フェチなのかな?
 彼女を相手にどうして告白出来るんだろう。
 麗子はどうして断った?
 そりゃ~確かにパッとしないけど。
 孤高のつもりなのかしら?
 単にタイプじゃないからとか。
 それとも・・・。
 何か理由があるのか。
 二人だけの秘密が。
 私の知らないことが。
 いざという時は私から告白しちゃっうって手もあるけどそれは最終手段にしたい。万が一ということもある。後々のことを考えても彼から告白させた方が楽だ。
 あの顔。
 どうすればそうする?
 皆に気付かれずに。
 デレデレした顔じゃない。
 余裕ぶってる顔でも、見栄っぱりな顔でもない。
 不遜な顔でもない。
 女を見下した顔でもない。
 優しいだけとも違う。
 興奮しているだけとも。

(あの表情が人を愛している顔なんだ)

 穏やかで、
 暖かくて、
 喜びと優しさが満ち溢れていて、
 光に包まれているような。
 私にないもの。
 私が経験したことないもの。
 私が向けられたことの無い顔。

 それが知りたい。
 どうすればああいう表情になるのか。
 知り得れば私の虚しさ埋まるはず。
 他のものでは埋められないもの。
 それがきっと彼にはある。
 それだけが私には無い。
 その穴だけが埋まらない。
 いざとなったらなりふり構ってられない。
 あれだけは欲しい。
 きっと私の人生で最後まで課題なりそうな気がする。
 麗子が彼を受け入れるとは思えないけど、彼女のことは何もわからない。
 何なのこの焦りは。
 イライラする。

 彼は振られたのに、なんであんなに楽しそうなの?
 嬉しそうに彼女を見るの。
 どうしてそんなことが出来る。
 悔しくないの?
 男として、人として。
 あんな汚い女に拒否られて。
 もー意味がわからないあの二人。
 そのわからない部分に私の埋まらない穴があるんだ。

 絶対に欲しい。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ