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黄色いレインコート麗子 作者:ジュゲ
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第一話 シカコ

彼女はシカコと呼ばれている。
「話しかけてもシカトするからじゃね?」
と言うのもいれば、
「シカバネのようだからでしょ」
という同級生も。
どうやら正確なところ誰もわからず呼んでいたようだ。
気づいたらというやつだろう。そういえば僕は彼女のことを呼んだ事がなかった。
 シカコという響きからは良いものは感じないからかもしれない。由来はどうあれネガティブな意味でつけられたのだろうことが皆の言い方からもわかる。自分は彼女に対してこれといった感情を抱いたことはない。いや、”汚いのはちょっと困る”とは思った。でもそれは仕方がないかもしれないと思うようになった。父に彼女のことをそれとなく言ったら、こう返ってきた。
「人それぞれの事情があるんだ。そういうお前だって部屋を見ろ。だろ?自分のことはわからないものなんだよ。それに、その子は色々と大変な思いをしているんだろうよ」
なるほどと思った。
(改めて考えてみるとよく虐めにあっていないもんだ)
 でも、なんとなくわからないでもない。彼女はどこか普通じゃない。
(なんて言うか、すごく綺麗だ)
 それしか言葉が浮かばなかった。

 あの日から気になって仕方がない。彼女のことを思うとドキドキする。本当にドキドキという言葉がピッタリだ。心臓の鼓動が聞こえそうなぐらいで周りに聞こえやしないか気がきじゃない。恥ずかしいじゃないか。
 僕の右斜後に彼女はいる。背中の右半分だけが熱くなる。休み時間、わざと窓際に行き、友達と話す振りして彼女を見始めて二日が過ぎる。昨日はあまり眠れなかった。

 雨の中で佇む君。
 色あせた黄色い傘。
 斑に白くなった黄色いレインコート。
 傷だらけの黄色い長靴。
 まさに学校で見たことがある出で立ち。
 幼稚園の前で立っている。
 身体を右に左にと揺さぶっているようだけど。
 少し遠目に見ると彼女がいかにスタイルがいいかがわかった。話には聞いたことがある。細くて長い足、同様に手、雨のせいか肌がやけに白く見える。そして本当に背が高い。
(ひょっとすると僕より高いんじゃないか?)
 それよりも彼女は学校の時とまるで別人のような空気を纏っている。まるで別人みたいだ。それにしてもどうして幼稚園の前に。誰かを待っているのか。
(まさか子持ち!?・・・援交で・・・噂は本当だった?とか)
 雨あしがつよくなってきた。
 最近は梅雨の雨なのか夏の雨なのかわからない。
 フードから横顔がのぞく。
 僕の全身に何か電流のようなものが走った。
(あああ)
 僅かに覗いた横顔は笑みをたたえ。
 何やら呟いている。
 歌を謳っている?
 間違いない、彼女だ、名前は・・・。
(綺麗だ・・・)
 僕は我を忘れて見入っていた。
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