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黄色いレインコート麗子 作者:ジュゲ
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第十四話 告白

「マジ?」
「マジ、マジ」
「洒落臭えー」
「どういう意味?」
「BBAまじウゼってこと」
「あ、マーちゃん来た」
 僕は気晴らしにマキらと遊ぶことにした。
 誘われていたゲーム大会は既に終わっていたが、反省会をするつもりだとボイチャで聞く。休み前は宿題をすべて終わらせない限り何処にも行かないと誘いを断っていたけど到底終わる見込みはない。意地をはってもしょうがないと考えを新たにする。
「宿題終わったんか?当然、見せてくれるよな」
「マジで!やっぱりマーちゃんはガリ勉くんだったか」
「いいなー」
「聞いてくれよ、終わるどころか・・・」
「え?なになに」
 薄いリアクションを見て事態の深刻さを察したか皆が一斉に沈黙した。昨夜は細かい話はしなかった。どうにも直接会わないと伝わりづらいような気がする。
 僕は夏休みスタートダッシュ大コケの醜態を話した。最初はなんとなく誤魔化しながら話そうかとも思ったが、驚くほど正直になれた気がする。彼女のこと以外は包み隠さず話す。連中のウキウキした顔がなんとも感に触るかと思いきや、遠慮無く笑ってくれて寧ろスッキリする。そして反省会の集まりはいつしか親への愚痴大会へと変化し、ミツの家へ場所を移す。
 両親は2人ともフリーランスで休みは不定だと言っていた。両親の部屋にミツの四畳半、台所にユニットバスといった感じ。ミツのお母さんは美人で、うちらが遊びに来るのを喜んでくれるけど、いつも「狭くてゴメンね」が口癖だったけど、むしろ僕は落ち着いた。子供の頃を思い出すからかもしれない。
「ところでさ、ミツなんか最近元気ないな?」
 唐突に変化球を投げてくるのは何時もマキだ。
「そう?」
「そう?ってヤスさ、お前のオイニー師匠だろ。気づけよ」
「私としたことがぁぁぁ」
(嫌な師匠だな・・・)
「ミツだろ、最初にシカコの匂いが凄いって騒ぎ出したの」
 マキがシカコという度に心臓に棘が刺さる。
「ちょっとさ、マキ、そのシカコって言い方をヤメない?」
「なんでだよ。前から俺はシカコって言ってただろ」
「そうだけど」
「あの・・・」
 普段は無口なミツが唐突に割って入った。
「どうした?」
「レイちゃんて、最近、しないよね」
「レイちゃんって誰?」
 マキがヤスと目が合ったが、ヤスは首を傾げる。
「その、クラスの、マキのいうシカコさん」
「えっ!」
(レ、レ、レイちゃんだって、はあっ?)
 思わず声に出てしまった。
 その声に二人が驚き、ビクっとする。
「うるせーよ、ビックリしたわ~」
「レイ、ちゃん?しないって・・・ちょっと待て、しないって・・・なに?」
 心臓が急に鼓動を速める。彼女の言葉がフラッシュバックする。

「私とやりたい」

「しないって・・・しない?え?しないっ?」
「落ち着けって!どうしたんだよ、おかしいぞ」
「あ、ああ?俺おかしいかな?宿題のしすぎか、夏の暑さか・・」
 マキのお陰で少し冷静になった。
 おかしい?俺、おかしいのか。そう見えていたのか。それよりも・・・
(ミツと麗子さんはどういう関係なんだ)

「ほら、匂いが・・・」

(匂い?え?匂いとどういう関係が)
「あ?・・・匂いが、しない・・・」
「「ああ~」」
 三人ともわかったようだ。
 ミツは悪いヤツじゃないんだが発想が突飛で言葉が足りない。度々ついていけないことがある。
「そういえばマイコも言っていたな、最近のシカ・・・その幽霊は臭くないって」
「幽霊よばわりか・・・」
「うざってーなー。好きに呼ばせろよ~」
(最もな話ではある)
「レイちゃん・・・とか」
「無理」
「レイ・・・YOU・・・レイ!」
「同じだろ」
(笑うのは無理もない)
「いや違う。幽霊じゃなくて、YOUレイ」
 マキを指さしわざとらしく決めてみせる。あー恥ずかしい。
「意味わかんね~」
「気持ちとアクセントの問題だよ!頼む!」
「最近のお前めんどくせーな」
 シカコという語源が何かは知らないけどやっぱり嫌なものを感じる。でもマキの彼女も大概だ。アイツにこういう発想はないだろうから恐らくマイコちゃんが裏でそう呼んでいるんだろう。
(可愛い顔して女は怖い)
「ミツ、まさかそれで元気なかったとか」
「だって、あの子って一種独特な匂いがして好きだった・・・」
(一種独特ってなんだ・・・すげー気になる。第一男の癖に匂いに敏感とか変態にもほどあるだろ。高2にして上級者かよ)
「それだけ聞くと単なるド変態だな」
 マキのツッコミが的確すぎて笑う。
「ヤスもそう言うんだけど俺らにはよくわからん」
 そう言ったらミツが俺を睨んだ。
(え?)
 彼がこんな顔を見せたことは一度もなかった。
「ずるいよ」
「え?なにが」
 この顔は何か知っている?
「僕はレイちゃんが好きなのに」

「「えーーーっ!」」

「ちょっと待て!なんだ今の大胆な告白は」
「え!ミツ・・・お前・・・まさか・・え?」
「落ち着け、こっちこい深呼吸だ」
 ミツを除いた三人でスクラムを組む形になり、マキの合図に合わせて深呼吸を三回。
(突然過ぎるだろミツ、何なんだよお前、相変わらず意味わかんね)
「唐突にもほどがあるだろ」
 僕らの思いをマキが代弁してくれた。
「だって・・・」
(僕はてっきりソッチ系かと思っていたのに油断していた。そもそも彼女の言い方からしててっきりいないかもって思っていたのに・・・騙された)
「好きなのか?」
 マキの問に僕は固唾をのむ。
「うん・・・」
「俺も好きだけどね」
 ヤスがサラっと言う。

「「えーーーっ!」」

「ちょっと待って、お前ら、どうしてそうなった!」
 マキが動転している。動物園の熊のように行ったり来たりしだした。
(ん、でも待てよ?)
「ヤっさんの言う、好きって・・・匂いだろ」
「うん。だから言ったじゃん」
「いやいやいや、ミツのいう好きは・・・え?」
 ミツと目があう。
「うん」
 今度はマキと。

「「おいいい、いい加減にしろよ」」

 またシンクロした。
「なんでだよ~真剣なんだ。深刻なんだよ。二人にはわからないだろうけど」
(良かった、良かったーっ!焦った、死ぬかと思った)
(あれ?)
「で、なんで俺がズルいわけ?」
 恨めしい顔を向ける。
「マーちゃんが挨拶するようになってから彼女は匂わなくなったんだから」
(・・・・まずい。その話題はまずい)
「聞きづてなりませんな」
 ヤスが食いついてくる。
「そうだよ、そもそもなんでお前は急に挨拶月間をはじめたんだ?」
 マキが鋭いことを。なんでお前はそう肝心な時に。
(どうする、どうするよ)
「まさかと思うがお前・・・」
「な、なんだよ!」
「滑川と付き合ってるんじゃねーだろうな!そういやこの前、廊下で話しているの見たぞ。滑川だけはぜってー許さねーぞ」
「ないし!んなことあったら真っ先に自慢するだろ」
 自分でも驚くほどポンと出た。彼女はクラスで一番人気だし狙っているヤツも多い。とても僕レベルが入るいる隙間はなかった。
「だよな~」
「追求ミジカッ!」
「そうだ。この際だから言っとくけど俺もマイコのこと言ったんだから、お前らも彼女できたら絶対言えよな」
「わかってるよ」
「で、なんでだよ挨拶月間」
(諦めて無かったか)
「んー・・・彼女欲しいなーと思ってさ。女子と話す機会あんまないでしょ。何事も挨拶からでしょ」
 口から出任せとはこのことだろう。いやでもあながち嘘でもない。何せ彼女が欲しいのは事実だ。
「マキの彼女から俺らの彼女探してもらってくれよ~」
 ヤスが身をくねらせ妙に甘ったるい声をする。
(うん、キモい)
「そのことだけどさ」
 以前、マイコちゃんが彼女になったことを告白してきた時にマキに誰か紹介するようせびったことを不意に思い出した。
「お前は普通に紹介してもいいらしいぞ」
 僕を見た。
「え?マジで」
「ああ」
「俺らは?」
「ヤスとミツは変態過ぎて紹介したくないって。特にヤス。お前はクンクンさせるクセやめろって。マジできもいから。俺でも時々ゾッとするぞ。友達だから言うんだからな。今のうち治せって」
「うー・・・気をつける。でもミツなんてクンクンさせないで嗅いでるけどね。それは?」
「クンクンは邪道ですよヤス君。空間に漂っている匂いを拾ってこそのマイスターです」
「し、師匠・・・」
「うあーやだー変態だー。なんでこんなヤツらと一緒の部屋にいるのかね俺ら。お前らは一生右手を恋人にしてろ」

 その後、ゲーム大会の反省会が始まり大いに盛り上がった。
 この一週間の憂さが驚くほど飛んで行くのがわかる。
(これだ、これこそが俺の夏休みなんだ)
 話はうやむやに終えたかに思った。

 帰り道、二人になるとマキが口を開く。
「さっきの話な、お前がその気なら本当に紹介してもいいらしいぞ」
「え、マジで・・・誰よそれ?」
「知らん。教えてくれんかった」
「なんだ」
「ヤツの友達らしいから、冷やかしなら紹介したくないって。で、どうよ」
「いや是非お願いしたいね。それが本当なら」
「わかった。いいんだな?ああ見えて怒ったらこえーぞ。裏切ったらケツの毛まで抜かれるかもな」
「え?お前ら・・・」
「ちげーよ!たとえだ、想像すんな」
「でもさ・・・付き合うかどうかは顔合わせ後の話だろ?」
 何か後ろめたさが過った。
「そりゃそうだろ。相手も気に入るかわかんねーんだし。そもそもアイツの言う相手がどこまで本気かわかんねーし。じゃーいいんだな。言っとくからな」
「う・・・うん」
「なんだよ今更、歯切れ悪いなぁ。・・・お前さ」
「なに?」
「気になるヤツでもいるの?」

「・・・」

 答えられなかった。
 気にならないと言えば嘘になる。
 でも好きか、付き合いたいか と問われれば、そうではないと答えられる。
 マキはいいヤツだ。彼女が出来たら紹介したい。誰であれ喜んでくれるだろう。ダブルデートなんて夢だけど。
 彼女は、麗子さんは友達ですらない。まだ、言葉を僅かに交わしただけの知り合い。そうだ、辛うじて知り合い程度の関係だ。僕は彼女のことを何も知らない。

「やっぱ滑川か?」
「彼女は憧れでしょ」
「だよなー。じゃ、誰なんだ?」
「・・・」
「また、だんまりか」
「うーん・・・」
「わかった。やっぱ言わないでおく。決心がついたら言ってくれ。お前がOKなら話は早いかもしれんから。そっちの決着つけてからにしよう」
「すまん・・・母さんのことで色々あったし自分でも頭がゴチャゴチャしてわからないんだ」
 それは本音だった。
「BBAが気掛かりなら、彼女いる、いらないとは関係ないだろ?」
 全く、察しがいいのか悪いのか。
「ま、そうだけど。とにかく、今は・・・」
「ま、なんだ・・・彼女が出来れば混乱しないぞ」
 なんだその表情は。
 何をもってマキがそう言ったのかは想像もしたくないが。
「お前はさ、慎重すぎんだよ。もっと動け。反省会は今日みたいに終わってからしろ」
「そうもいかないんだよ性格だから・・・」
 期せずして叔父さんと似たようなことを同級生から言われるとは。
 マキの口がかたいなら言っていたかもしれない。自分でも時折もどかしくなる。石橋を叩いて渡るこの性格に。でも、どうしようも出来ない。
(告白・・・こ・く・は・く。もししたら初めてか・・・)
 知らず告白を考えはじめている自分がいた。
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