No.4「バトル オブ ライフ」
『雫はPSP患者じゃないんだから』
一瞬の静けさが漂う教室、そういう綾の顔をみんなは見つめる
「え!! 何それ!? どういうこと!?」
突然みかんが俺の首を絞めつけながら問い詰めてくる
……って
「グッ! ……く、これから、話、すのに首を、絞め……」
チーン
綾は天高く昇り始めた。さらば、綾……
「……あ、あぁ! 綾、大丈夫! いったい誰がこんなことを……」
「お前だよお前」
賢は一つ溜息をついて
「はぁ……、で、どういう意味なんだ綾? まさかそこまで言っといて知りませんじゃすまされねーぞ」
「ゲホッ、ッゴホ……今死の淵が見えたぜ……ったく、少しは他人の痛みとか考えろよな」
「はーい、すみませんでしたー!」
まったく返事だけはいいんだから
「んじゃ、雫について話すぞ。まず俺と雫が出会ったことを話さないといけないんだが……」
――そう、俺があいつと出会ったのは秋の深夜二時、とある住宅街を一人歩いていた時だ。しかし、秋とは言うものの、その時の様子はすでに住宅街は凍りつき、まるで氷河期に入ってしまったかのように道は静かだった……
「……全く俺は何をやっているんだか」
俺の記憶はとても曖昧で、過去のことは何が本当で何が偽物なのかがわからない。だが、それでもただ一つ明確に記憶に残っていること、それはこうやって深夜の誰もいない住宅街を一人歩き、『何か』を探すことだった
何かを探さなくてはならないのに何を探していいかがわからない、もしかしたら何も探すものはないのかもしれない。そんな思いで一人夜の住宅街を歩く綾
「ふぅ、ここまできたか」
住宅街を抜けるとそこには今はもうやっていない寂れた病院がある。
『栗間病院』
ここは、五年前に建てられた大きな病院だったが、二年前に重大な医療ミスがあったらしく、すぐさま廃止されそのまま誰もこの病院にこなくなり廃墟と化してしまったわけだ
「しょうがない、このまま帰るか」
この病院にとりわけ目的があるわけでもないので、そう言い残し俺が住宅街へ振り向いたときに事は起こった
『……テ』
「ん?」
今、誰かの『声』がしなかったか? そう思い、再び耳を澄ますと
『……ケテ』
やはりほんの微かだが誰かの声がする。いや、むしろ声というより『念』か
「どこからこんな……病院か?」
そう、この念は病院の方から発せられているようだ
「…………」
一応手持ちに天然のどこか知らん山から取れる事が売りの『涼水(130円)』があることを確認する。……よし、五本はあるな
「……行くか」
そう言って俺はまず一本目の涼水を使って病院の入り口をこじ開け中に入る
そして俺は後悔したんだ、この病院の本当の目的を知って……
ん? じゃあ何でこんなことをしたかって?
それは、その時俺は無性に何かしたかったからさ
検察官と無機質な廊下を歩く瞑
「……もう! 途中でアナウンスが鳴るから凄いいいところで終わってしまいましたわ」
その足が向かう先はプール。今度は3年7組と戦うらしい
「さっさと終わらせて早く綾君に話を聞かないと」
その足を進めるたびにプール特有の塩素の匂いが近づいてくる。正直この匂いは嫌いだ
「着きました」
渋いおっさん顔の検察官はプールの鍵が事前に開けられていることを確かめ、そう瞑に言ってきた
「なるほど……、先に『敵』は来ているということね」
やはり特別教室だからだろうか、なぜか私たちが先に目的の場所へ行ったことがない気がする
「では、私はこれで失礼します」
そう言って検察官は早々どこかに行ってしまった。多分私に殺されないか内心ひやひやしていたんだろう
「ふふっ、楽しみね。果たして私のロジックを壊せる強敵はいるのかしら」
最初は乗り気じゃなかったが、こんな緊張感もいいものだ。敵はどんな能力を使って私を楽しませてくれるのか、どんな形相で死んでいくのか
はたまた、私が死んでしまうのか……
そうしてやってきたプール、水はどうやら入っていない。
殺意が辺りに立ち込める。まるで今にも槍か何かが飛んできそうだ
と、そのとき
「うぉぉぉぉぉ!」
暗闇の視界から長身の男が発狂しながら跳躍し、瞑にナイフで斬りつけてきた。が、しかし、そんなものは瞑にとっては奇襲でもなんでもなく、その男の攻撃を受け流す
「ふん、この程度じゃあ私はやれませんわよ」
そうして体制が鈍ったその男に反撃の一撃を食らわそうとした時
「!!」
瞑の中で悪寒が走る。この男、『私を誘ってる』
「まずいわ!」
そう言ってからの瞑はまさに鬼のごとき速さでその男から離れる。その後コンマの差で体制を崩した風の長身の男から鋭い後ろ回し蹴りが飛んできた
「っくそ! よけられたか! って、あれ? 女じゃん?! まさか女にこの蹴りを避けられるとは……」
その男からしたら先ほどの後ろ回し蹴りを女の私に避けられたのが意外だったのか目を丸くしながらこっちを見ている
「あら、女の私じゃ不服かしら? 別に手加減してくれてもいいのよ?」
「……いや、まぐれとはいえあの蹴りを避けられる女は油断できない。今度は全力でいかせてもらう」
そうして始まったプールサイドでの戦い、今度は瞑から攻撃を仕掛けていくことにする
「いゃゃゃゃゃゃゃゃゃ!」
気合の一声とともに繰り出される変化自在の手刀や足刀、そのどれもが当たってしまったら一撃で倒されてしまうであろう破壊力を持っている
「右か! いや左か! ……っくそ、流れが読めん!」
かろうじて男は避けているものの瞑の変則的な技の数々に当たるのはもはや時間の問題に思えた
「ハァ!!」
瞑の手刀が男の右腕を切り裂く
「……っく、グァァァァァァァァァァァ!!」
鮮血が迸り、男は倒れこんだ。かろうじて右腕はつながっているものの、男は出血部をおさえもがき苦しんでいる
なんてかるい……、瞑は男のあられもない姿を無表情に見つめ
「あなたの実力はこんなものなの? 能力を使うどころかまだ実力の五分の一も出してませんわ」
と、男の右腕の出血部に蹴りをくらわす
「っグぁ! ……油断した、まさか我流とは」
「ふふ、どう? いくら強くてもあなたのような典型的な格闘技じゃ私には指一本触れることすら叶いませんわよ」
そういってどんどん男の腕を蹴りつける瞑
「っグ! っク! アァ!」
グシャ、グチュ、グチャ
男の腕を蹴り潰すこの感触、この血の濃厚なる匂い、この紅に染まりゆく景色
その情景が余り余ってか瞑は一首口ずさむ
『ちはやぶる 男もきかず 月の夜に からくれなゐに 水くくるとは』
<月の夜のあるひと時
まるで紅のしぼり染め
紅葉の錦の唐くれない
男にもこんな美しさがあったとは
聞いたこともない
なんとみごとな美しさ>
「……終わりよ」
そう言って男の腕から頭に狙いを定めたとき
ガシッ!
「!」
男は瞑の足を右腕でつかんで投げとばす
「……っく!」
すぐに体制を整えて男を見つめると、さっきまでもがき苦しんでいた右腕がいとも簡単に動いている
「神経は完璧に切ったはず……、となると『能力』ね」
のっそりと立ち上がる男、さっきまでとは雰囲気そのものが違う
「……このアマ、ぜってぇぶっ殺してやる」
そういう男を集中してみていると体にある変化が起こっているのが伺えた
「この男、『細胞変異』の能力をもっているわね」
細胞変異
この男、自分の細胞を自由に操り活性化させ、神経の回復を常人の数万倍にまで高めたのだろう
「しかし、そういう能力には必ず副作用があるもの」
そぅ、賢でいう体の力を暗示によって無理に開放するために生じるその後の異常な疲労感等がまさにそれだ
「多分この男は元の体の力を100%出し切るんじゃない、元の能力を300%にするんだわ」
細胞を活性化させることにより、本来ならありえない程の筋量の増加、それに伴う身体能力の向上
人差し指を口にくわえ、考えをより推考させる
「……多分、副作用は異常な程の細胞の酷使による寿命の衰退、その度合いからいくとあなたは既に限界を超えている」
「ふん、これだけの時間でよくここまで推察できたもんだ。お前の言っていることはほとんど当たっている」
そう、俺にはもう寿命がない
これまでの戦いとつい先ほどの腕の回復、そしてこの筋量の増加、もう俺の体はこの戦いで朽ちるだろう
「しかし、最後にぎりぎりお前を倒すだけの寿命は残っていたようだ。さっきまでの比ではないこの俺の格闘技受けてみよ!」
手持ちのナイフを瞑に投げつけそのまま突進してくる標的、その動作はまるで賢の無敵モードの姿を見ているようだ
「っく、このままだとこっちが殺されてしまいますわ」
しょうがない、能力を使いますか……
目をつぶり、意識を集中させる
「性別男、身長184cm、体重68kg、血液型ARH+……」
飛んできたナイフを目をつぶりながらかわし、その後の男の攻撃をもかわしつつ今までに戦っていてわかった男の情報をつらつらと並べていく
「っくそ! なぜあたらない!」
男は苛立ちを覚える。何故かって? こんな女ごときにまだ一つもダメージを与えられないなんてこれほど男にとっての屈辱はないだろう
「……強度6.75、瞬発力5.48、思考能力……」
いまだ瞑は人外の速さで男の情報を喋り続ける。その言葉だけ聴いているとまるでコンピュータか何かが高速で音を発しているかのようだ
「てめぇ! 俺をなめんのもいい加減にしろぉ!」
男の筋肉がさらに増してゆく、これは5oo%っていうところだろう。しかし……
「……能力『細胞変異』、効果筋肉の増強および肉体の回復……ALL OK、全ての情報を神経に伝達、後に攻撃抹殺せよ」
私の準備の方が早かったみたいね
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ついさっきまで細身だった男の体が今では神話の超人ハルク並みに筋肉をさらけ出している。その怪力男の正拳突きに似た渾身の一撃
バシィ!!
一瞬時間が止まったのかと思った。なぜなら俺の目の前には全力で放ったはずのこの一撃を片腕でいとも簡単につかんでいる少女がいたからだ
「……な、そ、そんなばかな……」
俺の攻撃がきかないだと?
信じられない
「っふふ、こんなか弱い乙女に負けそうなのが信じられないっていう顔ね」
少女は俺の手を握り締めたまま話し始める
「あなたはミスを犯した。一つ、開始直後堂々と私の前に現れたためにたやすく私に情報を与えてしまった。これにより私の能力『神経推考』で私の神経系全てにあなたの情報を送ることになった。よって何も考えなくてもあなたの攻撃なら『穴』が見えてしまう、本人でさえ気付かないあなたの隠れた弱点、その『穴』を……」
そう、いくら強靭であろうとも、いくら頑丈であろうともその人が神ではない限り『穴』があるものなのだ。それは強くなれば強くなるほど見えにくいものとなるが、瞑には本人の一定の情報があれば見えてしまう。人は頭で考える生き物だが、瞑の場合特殊な能力によって神経全体で相手の特徴を知ってしまう。そうなってしまえばたとえどんな早い攻撃でも、どんな威力の高い攻撃でも通用しなくなるのだ
だって、瞑にはその人自身より遥かにその人を知ってしまうのだから……
「……そしてもう一つ、あなたは重大なミスを犯したわ」
少女は片手で俺の手を強く握りしめながら
「私が『女』であることを侮辱したこと」
もう片方の手で少女は撫でるように俺の胸をさすり
「この罪は……、万死に値しますわ」
刹那、俺の心臓をまるでマジックでも見ているかのように鮮やかに抜き取った
有田 智一は臆病だった
小学二年から道場で空手を習い、中学校からは全国大会でも十分通用するぐらいに成長した智一、なぜ彼がここまでできるようになったのっかというとある一つの理由があったからだ
それは『対人恐怖症』
智一は生まれつき人が怖かった。何故か知らないけれど人と目を合わせると自分が壊れていくような感覚に陥るからだ
それを心配した親は少しでも強くなれるように智一を道場に通わせる
毎日毎日稽古の日々、智一はこの厳しい日々を乗り越えてゆくとともに人に対する考え方が徐々に変わっていった
人に壊される前に相手を壊してしまえばいい、と……
智一は体格にも恵まれ、メキメキと力をつけていき、更に強くなった自分に自信を持ったのか、人間関係の方面も徐々に改善され友達と呼べる人も増え始めた
しかし、ある事件が起こる……
それは中学三年生の全国大会準決勝の時、この相手が悪かった
朝生 賢
まず元々朝生家というのは武道の家系の中でも特に異質、棒術、剣術、拳術、合気等、そのほとんどの武術の頂点をを手中に収めているという家系で、その中でも特に武術の才能とセンスを備えているのがこの朝生賢
身なりはどこぞの落ちぶれた不良のような外見だが、その技のキレ、華麗さ、威力、そのどれをとっても化け物じみた能力だという
「っく……、しかし負けねぇぞ、この俺が負けるはずないんだ」
目の前には鮮やかな赤い髪をした長髪の男が立っている、試合はあと十秒もすれば始まるだろう。もう一度自分に気合を入れなおす、するといきなり目の前の男は眠そうな顔をしながら話しかけてきた
「のぅ、少年、拙者は空手というものが嫌いでのぅ、誤って殺してしまうかもしれんが許してやってくれ」
拙者ぁ?! なんだこいつ、身なりとは全然話し方がちげぇじゃねぇか!!
しかもなんていう自信過剰、こいつは言う程の奴ではないのかも知れない
「始め!」
ッウ! 集中も無しに始まってしまった。とりあえず相手の出方をうかがわ……
「御免」
「え?」
開始ニ秒、決まりは朝生賢による上段突き、これにより智一は生死不明の重症をおう
そして四ヵ月後……
意識は取り戻したものの、もう空手を続けることはできない体になってしまった、と医者は言った
智一は、病院のベットの上でうつろな目をしたまま
「天上が、白い……、なんて無機質な白なんだ」
片手で蛍光灯の光を和らげながら
「また、弱い俺に戻ってしまった」
と一言だけつぶやいた
それからの智一はまさしく堕落の一言だった
人間が怖い、人間が怖い、人間が怖い
怖い、こわい、コワイ、怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!
そうして引きこもりの生活を送り始める。自由に動かない自分の体、今にも発狂しそうなほど怖い人間の存在
俺はもう、壊れてしまう
と、その時、自分のパソコンに一通メールが届いた。こんなになってしまった俺にメールが届くはずもなく、どうせ広告か何かだろうと思ってみてみるとたった一言
『殺せ』
とだけ書かれていたメールがあった
そのメールを見た瞬間脳内で何かがつぶやく
コロセ
ころせ
ニンゲンナンテコロシテシマエ
「駄目なんだ、俺はもうそんな力はない」
そう、人間を壊したくて始めた空手は自身を空手によって壊された
もう、俺には何も残されていない……
ナンダ、ソンナコト
「何だとは何だ、だってしょうがないじゃないか」
自分の脳内に向かって反論する。我ながらおかしいことだ
ソノクライ、ドウニデモナルサ
頭が熱い、このままだと俺の脳みそは溶けてしまう
「グァァァァァァァァ!」
サァ、コロシテシマエ……
「……」
ゆっくりと、それでいてしっかりと立ちながら智一は一言
「ああ、俺は人を殺したい」
まずは、武道家からだ……
某日、去年の空手全国大会出場者たちは全員謎の死を遂げた。死因は『撲殺』、何度も何度も殴られた形跡があり、空手関係者によほどの恨みがあるのではないかと推測される
なお、前大会の優勝者朝生賢だけは二ヶ月前から行方不明となっており消息不明、引き続き調査を行っている
「ふふ、ふふふふふふ」
今、俺の目の前には自分の心臓と美しい笑みを浮かべた少女がいる
「や……めて……」
怖い
「ん? なんですの?」
その瞳が怖い
「ころ……さ……ないで」
その唇が怖い
「ふふ、だめですわ。だって、ここはそういうところですもの」
グシャ!
勢いよく俺の心臓がつぶれる、その血潮は最後の灯火
ああ、壊された
結局俺は壊された
だったら最後に一言残したかった
『俺は生きたかった』と……
誰よりも、誰よりも生きて生きて生き延びたかった
ただ、それだけだった……
…………
二年一組、ここでは今、壮絶な戦いが起こっている
「りょ〜う〜!! さっさとあの雫って奴の出会いを言っちゃいなさいよ〜!!」
みかんの右ストレートパンチ! 綾はそれをぎりぎりのところでかわす
「だから! 瞑が帰ってきたらまた話すっつーの!!」
「ふぅ、夫婦コントなんかやってないでしっかりと瞑の戦いでも見ておけよな……、いつか戦うかもしれないってのに」
一人かやの外の賢、いいなぁ……
「っるっせーんだよ! このうんこ! てめーがいるだけでこの教室が臭いったらありゃしない!!」
「ってめ! 人がせっかく忠告してやってんのに!! このデブみかんが!!」
「んじゃコラァ! 糞野郎! もっぺん言ってみろや!!」
やっぱよくない。早く帰ってきてくれ、瞑……
「ん、あ、あれ?」
黒板のモニターを見ると丁度瞑が男を殺しているところだった。が、しかし、一つの違和感が綾の頭によぎる……
「プールの水が入っている」
そう、確かに最初の方はプールの水が入っていなかったはずだ。だったら何故……
「もしかしたら雫の奴……」
今度はもう見逃していられないな。そう思い教室の扉を開ける
「このボケ! カス! お前なんか……って、りょう〜、どこいくのぉ?」
みかんが俺の腕にひっついてきた。なんと変わり身の早いことで……
「っう! ……ちょっとトイレにね」
「ふ〜ん、じゃあみかんもついてく〜!」
「はぁ! だめだっておい! なんでお前がついてくんだよ!」
「え〜、い〜じゃんい〜じゃん! 一緒におしっこしようよ〜!」
「お前はばかか」
バシッ!! 賢がみかんんの後ろからみかんに突っ込みをくらわす
「イタッ! 何すんねん!」
そうしてカウンターの後ろ回し蹴りをくらいながら賢は無言で綾にサインを送る
『行って来い』と……
「おけ、サンキュー賢」
意識が飛び沈み行く賢に止めをさそうとするみかんを後ろでに綾は教室を抜け出した
…………
標的の一人はなんとも情けない死に方をしていったものだ。しかし、このバトルはニ対一、もう一人『強力』なのがいるということはまだまだ油断できない
「さぁ、そろそろ姿を現したらどうですか、雫さん?」
そういって瞑は並々まで水が入っているプールを見つめる。そう、瞑は戦いながらもこの水かさの上昇に気付いていた
「ふふ、さすがりぅと一緒のクラスだけある。そこら辺のPSP患者よりよっぽど強いのぅ」
プールの水は渦となり、中心部に集まってゆく
「それはそれは、光栄ですわ、お楽しみいただけたみたいで」
中心部に集まった水は水球となり宙にとどまる
「強い女はりぅにとって悪影響じゃ。瞑とやら、ここでわしにあったことを後悔するんじゃな」
その水球は弾け飛び、一瞬水のイルミネーションが辺りに散らばったかと思うとそこにはみかん戦の時に姿を消した銀髪の少女、雫が立っていた
「あなたこそ後悔するわよ、なにせこの私を相手にするんですもの」
そうして始まろうとしている女の戦い、どちらが勝つかはわからない。ただ一つだけいえるのは
この戦いは、ハンパねぇ |