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俺だけ入れる隠しダンジョン 〜こっそり鍛えて世界最強〜 作者:瀬戸メグル

一章

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11話 君のアレを、はむはむしたい

 依頼の魔物退治のため、僕とエマはアロネ草原に足を運んだ。
 魔物といっても今日はゴブリン退治じゃない。

 ビッグラビットというウサギ系の敵だ。
 普通はこの平原に現れることはないけど、たまにここに流れ着いてそのまま棲みつくことがあるらしい。

 そうなると、問題が起きる。
 ビッグラビットは居場所を見つけるとそこに同種を連れてくるので、あっという間に数が増える。
 ゴブリンより強いし、草を食い荒らすので環境にも良くない。
 ということで、国が依頼を出したという経緯だ。

「ビッグラビットどこにいるのかな〜?」
「あっちのほう、行ってみようか」

 この草原、だいぶ広いんだよね。エマと二人で草原を彷徨い歩く。
 ラビットより先に、ゴブリンに遭遇した。
 この辺のは単独行動が多いけど、今回のは二体で組んでいる。

「ギッギォォー!」

 だいぶ興奮してるのか、二体が並走しながら突貫してきた。

「くるよ」
「あたし、右のやるね!」

 じゃあ僕は左、と。レベルは10で……オスか。ゴブリンにもオスとメスがいて、オスの場合は股間に余計なモノが付属しているので一目でわかる。

 ビッグラビット戦もあるので多少セーブしよう。
 石弾30を敵の股間めがけて放つ。命中。ギャウンと悲鳴をあげ敵が腰を引く。激痛からか頭の位置が下がった。
 肉薄して、剣を振り下ろす。

 ズバッッッ!
 そこを切断――できたらカッコいいんだけどね。
 思いのほか頭蓋骨が固く、剣が頭の途中で止まった。まあ、相手はすでに絶命してるので良かったけど。
 もし、もう一体がここで襲いかかってきたらヤバかった。

「ギャ!?」

 さてさて、そのもう一体は短く叫んで吹っ飛ぶ。
 エマから風の塊が撃たれたのだ。
【風撃】という魔法だ。相手が倒れこんだとこを馬のりになり、首に短剣を刺し込んで倒す。

 うん、乱れのない良い動きだ。……当たり前か。僕よりずっと戦闘のキャリアが長いんだから。
 こっちは黄金スライムとかで楽して得たレベルだもんな。
 ともあれ、エマは両手短剣術とさっきの魔法を駆使していつも戦う。

「うわ、やっぱノルの方が倒すの速い……」
「ははは、それはどうかな? この僕の格好を見たまえ」

 頭蓋骨から剣を抜き出す作業で手間取っているんだ。
 エマが一緒に柄を握って、手伝ってくれる。ふわっと風に乗って薫香が届く。

「……髪、いい匂いだね」
「は!? きゅ、急になに?」
「いや、別に変な意味はないよ。良い石鹸使ってるんだろうなって」
「ううん……そうかなぁ? ノルは使わないの?」
「うちに石鹸はないよ。あっても父上がすぐ売りにいく」
「おじさん……」

 この間もそれでアリスと母上に責められまくり、最終的にジャンピング土下座で謝罪していた。

 それはそうと、髪の毛をクンクンするのって、なんか変態チックだよねえ。
 思い立ったら吉日という言葉を思い出した。
 幼なじみだからこそ、頼めることもあった。

「……本気で言ってる?」
「言ってるよ。僕には必要なんだ」
「じゃあ、やってもいいけど、ちゃんと理由を教えて。大事なこと隠してるでしょ」

 結局のところ、僕はエマに隠し事ができない。人生の大部分を一緒に過ごしてるわけで、ほとんどが見抜かれてしまうのだ。
 隠しダンジョンのこと、能力のこと、LPのこと、僕は洗いざらい吐いた。
 もちろん、他言無用と約束をしてからだけど。

「――じゃあ、あたしも隠しダンジョン連れって!」
「ごめん、それは師匠に禁止されてるんだ」

 ノル君以外は入っちゃダメだからねー、と言いつけられてある。
 それに、僕自身もあまりエマを連れていきたくない。
 黄金スライムはまだしも、デッドリーパーみたいなのは戦って欲しくない。

「ずっるいよ。ノルばっかり強くなるじゃん」
「そこは、僕も一応対策を考えてはいるけど」
「ふん、だ。そういうことならビッグラビットはあたし一人で倒すもん。手を出さないでね」

 いくらかスネたようにして、エマは先に行く。年相応に子供っぽいところもあるのがエマだ。 そこも可愛いんだけどね。

 ま、危なくなったら僕も加勢に入るとしよう。

「あ、いた」

 だだっ広い場所で、ビッグラビットは普通に草をモシャモシャしていた。食い過ぎたのか周りの地面がすっかりハゲている。

 デッカいなぁ。
 見た目は普通のウサギに角を三本生やした感じ。しかし体格がキュートなウサギとは、ほど遠い。
 縦に二メートルはあるし肉付きもだいぶ良い。草食なのに、よくこんなに栄養吸収できるね。

 この魔物はベースがウサギの癖にやたら攻撃的で、人を見ると必ず襲ってくる。
 今回もその習性を裏切らない。
 重たそうな体を存外軽快に動かして攻めてくる。

「やったるぞーーー!」

 エマが気合いを入れ、まずは風撃!

 お、当たった。でもラビットも踏ん張る。ズザーッと足を滑らすようにして後退。

「もう一発!」

 また撃つ。今度はダメだった。ピョンと1ステップでラビットが逃げたのだ。
 それなら、とエマは突進する。両手には、逆手に握った短剣がそれぞれある。
 シュ、シュ、シュシュ、と素早く両腕を動かして敵の白い体に赤筋を創り出していく。

 このかん、ラビットだって反撃はしている。
 頭を振り回して、尖った三本角で突き刺そうと狙う。でもエマの動作は機敏でかすりもしない。
 ちなみにラビットのレベルは十四。強敵とは言えないかな。

 スカ、スカ、スカ――

 空振りばっかのビッグラビットくん。
 こりゃダメだと悟ったのか攻撃方法を変えてくる。
 大跳躍だ。

「む」

 エマが警戒する。ラビットの着地点はエマの頭をターゲットにしているようだ。 さすがにあの体重で乗られたら死亡もあり得る。


 彼女は直撃しないよう、必至に走る。ラビットが着地、地面が揺れる。
 間断なく、すぐにまたジャンプした。エマがさらに逃げる。
 こんなことが繰り返され、ついには捕まりそうになってしまう。

「きゃっ!?」

 これはやばい!
 彼女が踏みつぶされそうになったので、僕は全力で石弾100を放った。
 空中で直撃、落下中のラビットの巨体が石ごと持ってかれる。おかげでエマに落下することはなかった。

「トドメを」
「う、うん」

 エマが疾走し、敵がのっそりと起き上がったところに会心の一撃を入れる。急所に決まったので、さすがのラビットも耐えられなかったようだ。
 ……あ、レベル上がったみたいだね。
 ぜぇぜぇと息を切らしているエマ。その肩にお疲れ様と僕は手を乗せる。

「ノルゥ……助けてくれて、……ありがとぅ」

 だいぶ落ち込んでる。自分一人で倒す計算だったのが、上手くいかなかったからだ。

「最後は危なかったけど、それ以外は良かったよ」
「なんで、なんで倒せなかったと思う? 結構切ったのに」
「多分、傷が浅かったんだと思う。あいつ、案外肉厚なんだよ」

 短剣は、手数が出る分どうしても威力に劣る。 あいつみたいなデカい敵とはあまり相性が良くない。


「元気だそうよ。レベル19になってるしさ」
「……うん」

 あらら、本格的に落ち込んでるな。
 何か僕にできることは――いっぱいあるじゃん……。
 彼女にスキルを与えればいいよね? もしくはグレードアップさせるとか。
 使い慣れてるだろうし、両手短剣術Bを創りだそうとして――僕は思い直す。

 創作スキルって、創ると自動で僕のモノになる。それを避けるには、付与スキルを使う必要があるのだが、付与にもLPが発生する。
 二度手間+LP消費も多い。

 ならば編集した方がいいのでは? 彼女は短剣術Cをすでに会得しているのだから。
 ちょっと説明文を見てみよう。

<両手を使った短剣の扱いが上手くなる>

 これをどのようにイジればいいだろう?

 試しに、扱いが『すごく』上手くなる、にしてみた。

『すごく』追加 500LP  両手短剣術C→両手短剣術B

 キターーーーーッ!

 実際、創作スキルで両手短剣術Bを創るより安い! しかも、あっちは付与でさらにLPを消費することを考えると格段にお得。

 でも500か……。

 今700だから、ちょっとキツいかも。

「僕の能力なら、エマを強くすることはできる。でもLPが足りない」
「どうやれば、LP貯まるの?」
「今この状況下だと……。一つ、考えがあるんだ」
「何でも言って! あたしに出来ることなら何でもする!」
「二言はないね?」
「もちろん」

 そこで、僕はスッとエマの背後に立つ。何をするのかと、どこか緊張した様子の彼女。僕は思いきって告げてみる。

「耳を、食べてみていい?」
「はあぁ?」
「や、食べるって言っても本当に食べるわけじゃなくて、甘噛み的な」
「え、え、そ、それがLP貯める方法なの!?」
「他にも思いつくことはあるけど、一番キワどくないのがこれなんだ」

 唖然とした顔をするエマだったけど飲み込みは早くて、それでLPが貯まるならとすぐに覚悟を決める。

「どんときて!!」
「どんといきます」

 はむ、と思い切ってエマの耳をいただく。といっても、歯は立てずに唇で挟む感じだ。

「ひゃぁっ」

 ガクッとエマの肩の位置が落ちる。でもどうにか堪えて持ち直したので、さらにはむはむと何回か耳を食べてみる。
 耳たぶが、驚くほど柔らかくて気持ちいい。
 軟骨はコリコリしてて、これも悪くない。

「ひゃうん!? の、のるぅまだぁ?」

 どうもエマは耳が弱いらしく、膝がガクガクしてきた。
 そろそろ限界だ、早くLP貯まって!

 そう念じた甲斐があったのか確認したらLPが700→1300にアップしていた。

「やった、成功だよ」

 僕はすぐに、編集スキルで彼女の両手短剣術をBにあげた。500消費したので残りは800だ。
 これで強くなったよ、と吉報を伝えようとしたんだけど――

「まだ効いてる感じ?」

 生まれたての子牛のように、エマは未だに膝をガクガクさせていた。
 耳、そこまで弱かったんだ……。
 ずっと一緒に過ごしてきたのに、全然知らなかった。

 幼なじみってのは、中々に難しいもんだね。



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