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写真の貴方へ捧げる愛を
作:三亜野 雪子






誰よりも

愛しています





放課後、それはそれぞれの生徒が自分が好きな部活に取り組む時間。

私は自分のカメラを片手に、貴方を撮る。

火照った赤い顔に気付かないふりをして。

誰もいない教室からただ貴方を見据えて。

無心でシャッターを押して、欲を満たす。


「笑って」


聞こえないとわかっていても声に出して言った。笑った顔が見たくていつも部活をする貴方を写す。話したこともない貴方を思って、貴方を見たくて、貴方を……………感じたくて。


「あ、ゴール」


ボールを足で上手く操ってゴールした時の貴方の顔が一番好き。その瞬間を待っていたの。

一枚、二枚、三枚……

連写して満足そうに笑む。カメラのレンズから視線を外して思わず見とれる。本物の貴方の顔は本当に愛しくて、間近で見たいと思った。深い漆黒の瞳は私を魅了する。その瞳はゴールから仲間へ。仲間から私へ……。


「ひゃぁ!」


見られてた。
窓の下に身を隠して、高鳴る心臓を押さえる。目が合った。それだけで泣きそうになるほど嬉しかった。





「できた」


今までで一番のでき。
勝利した時の感動の笑顔。


「なんで、こんなに私は………貴方を好きになったんだろう」


写真を見つめるだけで心臓が張り裂けそうになる。こんな私が貴方に告白できるわけないね。

諦めて

だけど

好きで

写真を

撮るの





「私に勇気をくれるその笑顔をもう一度」


意味もなく呟いて、また写真を撮る。部活の時間だけ、その時だけ、お願い。貴方の顔を撮らせて。

それだけでいいの。それだけで私はもう何もいらない。





「好き」





気が付けば私の頬には一筋の涙。大好きな写真を撮るだけでいいと思ってた。

だけど、貴方のいろんな表情を写真に撮る度に欲望になっていく私。





「私を………………見て下さい」





顔は熱くて、流した涙は次第に冷たくなって。

知らなかった。恋って苦しいんだね。

貴方は私の存在も知らずにただボールを追って。

その無邪気な顔を皆に向ける。





「好き。貴方が誰よりも好き。見て、私を見て。大好きなの」





涙は止まらなくて、気持ちが溢れて、ただ、純粋に恋におぼれていく。

漆黒で愛しい貴方の瞳はまた私を捕えた。今度は隠れる余裕がなかった。その瞳を見つめて、その瞳にまた恋に落ちた。

届かない。そう思いながらも小さくまた呟いた。


「貴方が好きです」


淋しそうに笑って、頬を染めて言った。多分、貴方は私を変な奴だと思って見ると思う。それでも、私は言わずにはいられない。


「大好き」


届かせようとはしない。だけど、言わずにはいられない。

だって、私は恋に落ちた愚かな女だから。


「おい!そこのストーカー!」


信じられなかった。貴方が私に声をかけている。初めて私に顔を向けて、その愛しい声音を。


「そこで待ってろ!」


部活中だというのにお構いなく、彼は校舎の中に入っていった。

言われなくても私はもうこの場から動けない。金縛りにあったかのように足がすくんで、そこに立ち尽くしている。


「どうしよう。嬉しい」


気付いてくれた。声をかけてくれた。ただ、それだけで本当に嬉しい。

写真を撮るのが好き。

いろんな表情を撮るのが好き。

だけど、それより何より………


「はぁ。やっと捕まえた!」

「え?嘘!何でわざわざここに!?」


教室入って来た彼はすごく息をきらして、私に近づく。間近で見る彼は本当にかっこよくて、心臓がうるさいくらいに鳴っている。


「お前ずっと俺のこと撮ってただろ?」

「ひゃぁ!ごめんなさい!私、臆病だから写真で淋しさをまぎらわせてたの!!」


貢ぎ物のようにカメラを彼に差しだして白状する私。あまりにもきっぱりと言ったせいか、少し戸惑う彼。


「淋しいって」

「私……………」


どくん、と大きく心臓が動く。今、自分は何を言おうとした?恥しくて顔を隠した。顔はもう自分でもわからないくらい熱くなっていて、心臓は張り裂けそうなくらい動いている。


「おい?」

「駄目!見ないで」

「はぁ?」

「見られると何も考えられなくなる」


こんなこと初めてで

嬉しくて恥しくて

どうしよう


「もしかして………自信過剰じゃないのか?」

「え?」

「お前、俺のこと好きなのか?」


どうしよう

バレちゃった


恥しいけど、嬉しいから、笑って私は頷いた。大好きな貴方のその顔を見つめて。


「好きなの。私、だから、貴方を」

「何だ。よかった」

「え?」

「だって、これで思いっきり手が出せる」


私が差しだしたカメラを下に押して、彼は私に近づいた。自然に頬に手を回して、彼の顔が近づいた。

手に感じる温もりを気にする前に唇に柔らかい感触が広がった。彼の前髪が私の額をくすぐる。


「な、なななななな何で!」

「ずっと気になってたんだ。俺を真剣に撮る君のことが」


逃げだしたいのに、彼はそうさせてくれない。私の腕と腰に手を回してがっしりと捕えている。

見られていた。それだけでもう彼の顔を見れないのに、私にキスをしてきたのだ。


「ほ、本当?じゃぁ、私に私だけの笑顔を撮らせてくれる?」

「当たり前。お前も俺だけを見て、俺に惚れろ」


初めて話した彼は思った以上に俺様で、性格にも私は惚れてしまった。もう、逃れられない。

大好きで大好きで、愛しい貴方に。私は一生愛を捧げる。


「ねぇ、もう一回………駄目?」

「お前、思ったよりも可愛過ぎ」





いつも撮っていた貴方は

今、写真じゃなくて

目の前で


私の身体に熱を与える





「夢みたい」

「夢じゃねぇよ。もちろん、写真でもな」

「…………うん」





写真を撮るのが好き

いろんな表情を撮るのが好き

だけど、それより何より………





貴方が大好き






ちょっと落ち着いた純情恋愛を書いてみたくて投稿しました。いかがだったでしょうか?感想及び評価お待ちしております。













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