荒野を走るデンライナー。
その食堂車に、新たなイマジンが増えた。
亀ではない。
そいつは自らをジークと名乗る白鳥をモチーフとした白いイマジンである。
「何このイマジン?」
食堂車に入ってきた未来が、モモタロスに訊ねた。
「リュウタロスが連れてきたんだ」
「リュウちゃんが?」
未来はリュウタロスを見た。
リュウタロスは床に寝そべってお絵書きをして楽しんでいる。
「おい」
未来はリュウタロスに近付き、背中に足を乗せた。
「リュウタロス、何だこいつは?」
「あ、おかえり、お姉ちゃん。デート楽しかった?」
「楽しかったよ。で、こいつは何だ?」
再度そう訊ねると、リュウタロスは「鳥さんだよ」と答えた。
「そんなの見りゃ解るっつーの。何でその鳥さんが此処に居るのかを説明しろ」
「拾ってきたんだよ」
「ほお。私に無断でか?」
そう口にすると、隅っこの方で炒飯をめしあがっているオーナーが咳払いをした。
「この列車はあなたの物ではありません。オーナーである私の物です」
「そんなのどうでも良いだろ。つーかあんた、この年でお子様ランチか?」
「お、お子様?」
オーナーの問いと共に手からスプーンが落ち、炒飯の中央に突き立てられた爪楊枝にぶつかり、爪楊枝が倒れた。
「あお!」
オーナーは驚いて手の甲を頬に当て、妙な声を上げた。
そして炒飯を残して去っていく。
「さて、リュウちゃん。私と少し、お話ししようか?」
「んー、嫌だ」
リュウタロスはそう言って黙々と作業を続ける。
「・・・・・・」
話しにならないと思ったのか、未来は諦めてジークの方を向いた。
(こう言うのは本人に直接)
「あの・・・」
未来はジークに声掛けた。
「ジークと申す」
「はあ」
未来は素っ気なく返事をした。
「それで、ジークはどうしてこの車内に?」
そう訊ねるとジークがすっくと立ち上がり、こう答える。
「それは、貴方に憑いたから」
「え、私に?」
「何、また増えたのかよ!?」
モモタロスが立ち上がって二人の下に来て会話に参加する。
「イマジンなんか五人も要らねえんだよ。とっとと出て行け!」
モモタロスがそう言うと、
「頭が高い」
するとモモタロスの体がみるみる内に小さくなり、レゴブロックの人形サイズになってしまった。
「うわっ、何だこれ!?つーかお前ら何ででかいんだよ!?」
「否、あんたが小さいだけだから」
そう言って未来はモモタロスを掴んでバーに移動してナオミからコーヒーカップを貰ってその中に入れた。
「おい、出せ!」「嫌だ」
未来は即答してジークの下に戻った。
するといきなりこう言われた。
「そちよ、暫く私に体を貸してくれたまえ」
「何で?」
「特に理由など無い」
ジークはそう言って未来に憑依した。
「えっ?」
刹那、未来の肉体の主導権が無くなった。
それと同時に髪型が変わり、白い羽の様な飾りが出現し、瞳が白くなる。
その姿はまるで白鳥の様だ。
「お姉ちゃんを返せ!」
リュウタロスが叫び、未来の体に入ろうと飛び掛かるが、すり抜けてバーにぶつかった。
「無駄だ。私は一度憑依すると他のイマジンは一切受け付けない」
そう言うと、ジークは未来の体から追い出された。
「特異点を舐めないでくれる?」
「そち、特異点なのか?」
「じゃなきゃ追い出せないから」
「それもそうだ」
と納得するジーク。
「つーか、リュウちゃんはいつまで寝てんの?」
その問いにリュウタロスが応えて起き上がった。
そこへ亀イマジンが「良い湯だったぁ」と食堂車に入ってきた。
どうやらお風呂に入っていたらしい。
「あれ?」
亀イマジンはジークの存在に気付くと、彼に近付いた。
「ジークじゃない。こんな所で何してるの?」
「そちは一体?」
と亀イマジンを見て疑問符を浮かべるジーク。
その彼に未来は言った。
「そいつ、少し先の未来から来た私なんだ。何でも、誰かに選ばれて、気が付いたら2007年にイマジンとしてエネルギー体で居たんだと」
「それは実か?」
「ああ、憑依されて解ったよ。性格は思いっ切り変わってるが、そいつは間違い無く私自身だ」
「そうか。そち、名は何と申す?」
「「天道 未来よ」」
未来と亀イマジンが同時にそう名乗る。
「って、一寸待て!お前は浦島太郎の亀をイメージしたイマジンだろ!?」
と未来が間髪を容れずに突っ込む。
「だから?」
「だから、お前はウラ子だ」
「はあ!?何そのダサイな・・・っ!」
そう言い掛けて未来命名のウラ子は気付いた。
(そう言えば、前にイマジンにウラ子って名前付けた事ある。確かこの後、どうしたって訊いてくるんだよね)
「どうした?」
案の定、未来はそう言った。
「何でも無い」
ウラ子はそう言うと、溜め息を吐いて空席に座った。
時は2008年2月13日。
商店街は人混みで溢れていた。
未来は、拓也に手作りチョコを渡す為、そこへ材料を探しにやって来た。
『何か、やけに混んでないか?』
と一緒に来ていたモモタロスがそう訊ねる。
「明日はバレンタインデーだらかな。皆、チョコの材料とかを買いに来てんだろ」
『バレンタインデー?何だそれは』
「女の子が好きな男の子にチョコを上げる特別な日だ。元々は男女問わず恋人に何かをプレゼントする日だったんだが、昭和年代に日本の製菓会社がチョコを好きな男の子に上げる日と決めたんだと」
『そうなのか。つーか未来、イマジンの匂いがプンプンするぜ?』
「何でこんな時に出るんだよ!?場所は!?」
と肉体の主導権をモモタロスに交代する未来。
「こっちだ!」
そう言ってM未来は走り出し、人混みを掻き分けながら真っ直ぐ突き進む。
「あいつだ!」
M未来は正面に外国人女性を見付けると、接近して拳をその女性にお見舞いした。
ガスンッ!
女性は勢い良く吹っ飛び、地面を転がる。
『バカ、何やってんだ!?』
「知るかよ」
そう言い放って女性に近付く。
女性はすっくと立ち上がってM未来を見る。
「俺、参上!」
とファイティングポーズを取るM未来。
「貴様、電王か!?」
女性は驚き飛び退いた。
「へっ、どうやら俺の噂は広まってるみてえだな。なら話しは早い。とっとと姿見せろ」
M未来はそう言ってパスを取り出し、腰にベルトを出現させた。
「俺とやろうと言うのか。だが、今はお前とやり合っている暇は無い。悪いが後にさせて貰うぞ」
女性はそう言って踵を返して走り出した。
「待ちやがれ!」
M未来はそう叫んで女性の後を追う。
「くそっ!」
そう発すると、狼をモチーフとしたイマジン、ウルフイマジンは女性の肉体から離脱して去って行った。
『モモタロス!』
「おう!」
M未来はカードを取り出し、体を解放されて倒れている女性に翳した。
07.2.14とカードに表示される。
「おい、起きろ!」
M未来は女性の体を揺さぶった。
すると女性は目を開け、辺りを見回し英語でこう言った。
「Where am I?」
「な、何て言ってんだ?」
『此処は何処か、だって。そんな事より、日付について訊かなきゃ』
「お前、この日付に見覚えは?」
M未来がカードを見せながら訊ねると、女性は疑問符を浮かべた。
『このまま伝えて。Do you remember this date?』
「ドゥ・・・何だ?」
『もう良い。代わって』
「あ、ああ」
モモタロスは肉体の主導権を未来に返した。
「Remember this date?」
女性はその問いに応えてカードの日付を見る。
「Oh! I remember it(覚えてるわ)」
「What was there(何があった)?」
「Valentine. I was not able to hand chocolate to a boyfriend(バレンタイン。私は彼にチョコを渡せなかったの)」
「To a monster, how did you do a wish(怪物には何て)?」
「I want to hand chocolate to a boyfriend(チョコを彼氏に渡したいって)」
「Thankyou(有り難う)!」
未来はそう言うと、ウルフイマジンが逃げた方へ向かって駆け出した。
しかし、結局奴は見付からず、未来は近くの公園に来てベンチに座り込んだ。
「くそっ、何処行ったんだあいつは」
『その内出て来るだろうよ。兎に角、あの女見張ってようぜ』
「そうだな」
未来は立ち上がり、商店街へと戻った。
が、女性の行方も不明となっていた。
「何なんだよ全く!」
と、その時、付近のお菓子屋が破壊され、ウルフイマジンが再登場する。
「見付けたぜ!」
未来はモモタロス化してウルフイマジンに近付いた。
「よう、また遇ったな」
「貴様、しつこいぞ!」
ウルフイマジンはそう言って半月刀で斬り掛かった。
「うおっ!?」
間一髪、M未来は攻撃を避けた。
「危ねえな!俺の体に何すんだ!?」
『私のだからな』
「まあ良い。早い所、決着付けようぜ」
『聴けよ人の話し・・・』
「良いだろう。こうしつこく付け回されては迷惑だからな。二度と戦えぬ様にしてやる」
ウルフイマジンがそう言うと、M未来はベルトの赤いボタンを押した。
「変身!」
M未来はパスをセタッチし、電王・プラットフォームに変身。
直後、「Sword form」と言う音声と共にアーマーが出現して合体、ソードフォームに移行した。
「俺、ふたたっ」
電王がファイティングポーズを取ろうとそう言い掛けた時、ウルフイマジンが半月刀で攻撃してきた。
「うわっ!」
胸を斬り付けられ、蹌踉めく電王。
「邪魔すんなこの野郎!」
言って電王は体勢を立て直してウルフイマジンを蹴り付けた。
「うわっ!」
尻餅を着くウルフイマジン。
「もう一度行くぜ。俺、再び参上!」
とファイティングポーズを決める電王。
『あんたはそれをやらないと気が済まない訳?』
「悪いか?」
『別に』
「なら放っておけ」
そう言いながらデンガッシャーを組み立て、立ち上がったウルフイマジンを斬り付ける。
ウルフイマジンは蹌踉めきながら後退をしていく。
「行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ行くぜ!」
電王はそう連呼して連続斬りを放つ。
「っ!」
ウルフイマジンは人混みの中に契約者の女性を見付けると、電王の一方的な攻撃から何とか脱出してその女性に近付いた。
「I brought chocolate(チョコを持って来てやったぞ)」
ウルフイマジンはチョコを取り出して女性に渡した。
「契約完了」
そう言って女性の過去に跳ぶイマジン。
「追うぞ!」
電王はデンライナーを召喚し、乗り込んでウルフイマジンの後を追った。
2007年2月14日。
女性はとある大学の教室で好きになった男性にチョコを渡そうと、チャンスを窺っていた。
だが、男性は色んな女性からチョコを貰っており、女性はついにチャンスを逃してしまった。
手元に残ったチョコレート。女性がそれを持って帰ろうと鞄に入れた時、体から砂が零れ、ウルフイマジンが姿を現す。
同時に女性は気絶。
教室に残って学生たちが、悲鳴を上げながら慌てて逃げ出す。
ウルフイマジンは混乱して逃げ惑う学生たちに、光波を飛ばして砂人化させた。
するとそこへ、電王が現れた。
「そんなに暴れたきゃ、俺が相手んなるぜ」
「ちっ、もう来やがったか」
ウルフイマジンはそう呟くと、電王の方を向いて歩み寄り、半月刀で攻撃した。
カンッ!
電王が既の所でそれをデンガッシャーで防ぐ。
「同じ技は通用しねえ」
そう言って電王はウルフイマジンを蹴り、蹌踉めいた隙に連続斬りを放つ。
「おらおら、どうした!?」
とウルフイマジンを押していく電王。
「そろそろ終わりにっすか」
言って電王はパスを取り出し、ベルトにセタッチして投げ捨てる。
「Full charge」
とパワーがチャージされ、剣先が離れる。
グサッ!
鈍い音と共に、デンガッシャーの剣先が天井に突き刺さった。
「しまった!」
と慌てて剣先を抜こうとする電王。
しかし突き刺さった剣先はしっかりめり込んでいて抜けない。
『何やってんだよ、バーカ』
「五月蠅え!」
「隙ありだ!」
電王が剣先を抜こうと一生懸命になっていると、ウルフイマジンがそう言って光波を飛ばしてきた。
「うわっ!」
電王はそれを食らって吹っ飛ばされ、変身が解けてしまった。
それと同時にデンライナーの食堂車に跳ばされるモモタロス。
「くそっ!」
と立ち上がる未来。
直後、デンライナーから『私に任せて』とウラ子が跳んできて未来に憑依した。
U未来はベルトの青いボタンを押して「変身」とパスをセタッチ。
すると「Rod form」と音声が鳴り、U未来は電王・プラットフォームに変身し、アーマーを出現させて合体。ロッドフォームに移行する。
「お前、私に釣られてみる?」
「餌が釣られねえからな」
電王の問いにウルフイマジンはそう答えると、半月刀を振るって光波を飛ばした。
「うわっ!」
電王は再度吹っ飛び、変身が解けると同時にウラ子はデンライナーの食堂車に跳ばされた。
「駄目じゃん!」
と思わず突っ込む未来。
『私が行こう』
その言葉と共にデンライナーからジークが跳んで来て未来に憑依。
するとウィングベルトが飛来してS未来のベルトに装着された。
「変身」
S未来はパスをセタッチ。
「Wing form」
と電王・ウィングフォームに変身する。
「降臨、満を持して」
そう言って決めポーズを取る電王。
「ころころと姿を変えやがって!イライラすんだよ!」
怒ったウルフイマジンが駆け出し、電王に斬り掛かる。
しかし電王はヒョイと避けてデンガッシャー・ハンドアックスを組み立てて反撃する。
『ジーク、早く終わらせちゃって』
その言葉に応えて電王は間合いを取りながらデンガッシャー・ブーメランを組み立ててウルフイマジンに投げ、パスをセタッチした。
「Full charge」
フリーエネルギーをチャージし、ウルフイマジンの懐に駆けてロイヤルスマッシュを放った。
ドーン!
文字通りウルフイマジンを爆裂させた電王は、戻ってきたブーメランをキャッチ。ベルトを外して変身を解いた。
直後、未来は教室に向かい、倒れている女性に声を掛ける。
「Are you okay(大丈夫か)?」
女性が意識を取り戻して目を開ける。
「Ah?」
「With me, will you go to hand your chocolate to a boyfriend(一緒にチョコレート渡しに行こう)?」
未来がそう言うと、女性は驚いて顔を赤く染めた。
未来は女性が仕舞ったチョコレートを勝手に取り出すと、女性に持たせて立ち上がらせ、手を繋いで校門まで駆け出した。
「There is your boyfriend there(あそこにあんたの彼氏がいるわ)」
未来はそう言って、たった今校門を抜けた男性を指差した。
「Oh! Thankyou!」
女性は未来の手を放し、男性の下に駆けていく。
「Kamiya(神谷)!」
そう呼ばれ、男性は止まって振り向いた。
「Abriel?」
「There is the thing which I want to hand to you(あなたに渡したい物があるの)」
そう言って女性は男性にチョコレートを渡した。
その傍らで様子を見ていた未来は「渡せて良かったな」と呟きながらデンライナーに乗り、元の時代へと戻って行った。
See you again!
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