第四話 『追われる者』
「復讐?」
加奈が聞き返すと、男はかすかに頷いた。
「そうだ。」
「・・・どうして?」
「質問しすぎ。もういいだろ。本題に入るが、手紙を見せろ」
「嫌です」
加奈が男を拒むと、男は加奈を静かに睨みつけた。
「ふん。全く、コーズの言う事は絶対的みたいだな。」
「コーズ・・って誰?何者?」
すると、男は心底驚いたというふうに加奈を見た。
「コーズは『神』だよ。もっとも、この手紙を書くこと以外偉大な事なんてしてないんだけどな。」
「神・・」
「もしかして、まだこの手紙のすごさに気づいてない?」
加奈が男を少し見てから、「はい」と言うと、男は鼻で笑った。
「この手紙は、『幸福の手紙』って言われてる。」
「・・・」
「それで、この手紙を手にしたものはとても幸せな運命をたどる。ただ――――・・」
「?」
「その手紙に執着させられて、やがて『追う者』になる。」
加奈がまるで理解できないという顔をしているのに気が付いて、男はため息をついた。
「つまり、俺がおまえの前にその手紙を持ってたってこと。」
「じゃあ、どうして私の手に?」
「それはわからない・・・だけど、その手紙によって俺の人生は狂わされた。だからコーズをうらんでる。」
そう言って、男は加奈をじっと見た。
「いいか?その手紙をずっと持ってたら、いずれおまえも『追う者』になる。だけど、1つだけ方法がある。」
「どんな?」
「その手紙を『追う者』に渡すんだ。」
しばらく沈黙が流れた。
「・・・そんなの、駄目よ。」
加奈は男を静かに見た。
「でも、そしたらあんたが次の『追う者』になるぜ。」
「じゃあ、どうしてあなたはそうしなかったの?」
すると、男はにやりと笑った。
「いいか?確かにそれはいい方法だ。だがな、手紙を持っている『追われる者』にとってはあまりフェアな取引じゃないんだ。」
「どういうこと・・・?」
「もしその取引が『監視者』にばれてしまったら、『追われる者』は死ぬ。」