第三話 『追う者』
あの手紙が届いてから、私の運があがっているのは確かだった。
周りに人が集まるようになって、いろんな人と喋れるようになった。
でも・・・あの手紙を送ったのは誰なんだろう?
手紙には『コーズ』としか書かれていなかった。
でも、あの紙の色からして、何十年、いや何百年昔に書かれたと思う。
そしたら、誰が私宛に・・・
そもそも、私の住所をどうやって知ったんだろう?
疑問は深まるばかりだった。
でも、加奈が心配する必要などなかった。
すでに運は加奈の疑問を解決しようとしていた。
「野沢加奈・・・か。」
遠くから加奈の姿を見つめていた男は、ふと思った。
「どうしてあんな平凡なやつに・・・?」
加奈は何も知らなかった。
ただ、この手紙がすごい威力を持っているということしか知らなかった。
そう。
加奈が考えているよりもずっと、この手紙は『すごい』ものだったのだ。
「ただいまー」
誰もいないのはわかっていた。
だけど、加奈は無表情で現実を受け止める。
すると・・・
「おかえり、野沢加奈」
声がした。
「・・誰?」
若い男の声だった。
「俺?もう知ってるんじゃない?あの手紙で。」
そう言って、男は不敵に笑った。
「まさか・・・」
「そう、そのまさか。俺はあんたの手紙を『追う者』だよ。」
一瞬周りの空気が凍りついた気がした。
手紙の文章を思い出す。
「『追う者』って・・どうしてそんなことを?」
「言って何の得になる?想像したら大体わからない?」
男は、つまらなさそうに加奈を見た。
「ま、いいや。別に交渉に支障が出るわけでもないし。」
「・・・」
「俺がどうしてあの手紙を追ってるか?それは、神への『復讐』だよ。」