第一話 涙は流れて
「ふぅ・・・」
加奈はため息をついた。
私は、生きてて価値のある人間なのかな?
だれか、私を必要としてくれる?
今日も、上履きを隠されたり、『死ね』『アホ』とかの暴言を吐かれたりした。
典型的ないじめられっこ。
自分でも、それがぴったりなイメージだとわかっていた。
「だからって・・・」
やっぱり辛かった。
「ただいまー。」
玄関に入ると、母さんの声がする。
なぜだかほっとして、リビングに入った。
「おかえり。」
そう言って、母さんは食卓を指した。
「・・・今日も?」
加奈が食卓の上にある冷凍食品を指差していった。
「うん。帰りは遅くなるだろうから、食べといて。」
いつからだろうか。
・・・・・・・・・・・・
母さんが外に出るようになったのは。
本当はわかっていた。
母さんは仕事に行くのではない。
『うわき』をしているのだ。
最初は、そんなに驚いたり、取り乱したりはしなかった。
それでも、後になってから、淋しくなった。
私の居場所なんか、どこにもないんだ。
学校にも、母さんの心の中にも―――・・・
なぜだか熱い気持ちがこみあげてきた。
「・・・あれ?」
泣きそうになっていると、机の上に手紙が置いてあった。
手紙が来る事なんか、滅多にない上に、来ても大体いたずらだったり、なにかの宣伝だったりした。
「・・・」
すこし怪しんだけど、別に麻薬が入っているわけでもないみたいなので、中を見てみた。
そこには、一枚の手紙が入っていた。
それは、なんだか黄ばんでいて、最近に書かれたものではなさそうだ。
「・・私に・・・・誰が?」
おじいちゃんもおばあちゃんも、加奈に親しく手紙をくれるような人ではない。
別居している父親だってそうだ。
そう。
彼女は、未だかつて聞いた事のないような、「強運」の持ち主だったのだ。