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星に願いを
作者:篠原 ひなた
 あの夜のことは、今でもはっきり覚えてます。
 眠れなくて病室の窓から外を見てたら、流れ星が次々に視界をよぎって。
 わたし、一生懸命お願いしたんです。
 明日の手術が成功しますように、って。
 結果ですか? それが、大成功だったんです。
 奇跡だって、今でもお医者さんがおっしゃるんですよ。
(十七歳・女)

 一生忘れたくない光景だったよ。
 幾つも幾つも、星が流れるんだ。
 願いを掛けるのを忘れるくらい見惚れてたんだけど、それもいいかなって。
 あれを見れたことが、奇跡だって思うよ、
 って言いたいとこなんだけど、実は次の日買った宝くじが大当たりしたんだ。
 それまで外れっぱなしだったからさ、あれは本当に嬉しかった。
  (二十二歳・男)
 
 現代の奇跡?
 あの流星の夜以外ないだろう。
 眠ってたところを妻に叩き起こされて、そりゃあもう吃驚したんだが。
 促されるまま空を見上げたら、数え切れないほどの流れ星が見えてね。
 綺麗だから一緒に見たかったの、なんて言われたら。
 そりゃもう、嬉しくて堪らなかったよ。
 実は今年が銀婚式でね。流星が見られるって噂の島に行く予定なんだ。
 ・・・ここだけの話、生活がすれ違いすぎて離婚寸前だった当時から考えると、夢みたいな話だよ。
       (四十二歳・男)
 
 三年前の冬至の日。
 何の前触れもなく大量の流星が観測され、『謎の流星群』として世間を騒がせた。 
 専門家が一様に口を閉ざしていることもあり、原因はいまだ明らかにされてはいない。
 この流星群にかけられた多くの願いが、その後何らかの形で叶えられていることを鑑みるに、この流星群以上に現代の奇跡としてふさわしいものは存在しないのではないだろうか。

  週刊我楽他(がらくた)
    『百人に尋ねた現代の奇跡』より抜粋






///////////////////
 三年前。
 とある宇宙ステーションにて。
/////////////////

「何で俺が非番の時じゃなかったんだ!」

 悲鳴のような叫びを上げながら、夜勤の青年は必死でコンピューターを操っていた。
 警報が鳴り出した時には、もはや手遅れだった。
 幾重にも張り巡らされているはずのデブリ警戒網をかいくぐって間近に迫っていた隕石が、エマージェンシーボタンを押すひまさえ与えず、宇宙ステーションの一角に激突してしまったのだ。

 幸か不幸か、隕石が激突した先は居住区や研究棟などではなく、宇宙ステーションから出された廃棄物を処理するために建設された人工衛星だった。
 破損区域が溶解炉や推進装置などの重要もしくは危険区域ではないことを調べ上げて上層部に報告し、青年はとにもかくにも一区切りがついたことに安堵した。
 しかし、その安息は、つかの間のものでしかなかったのだ。
 母星からもたらされた定時連絡の中の一言に、青年は凍りつくこととなる。

「原因不明の流星群が発生しているが、そちらの観測ではどうなっているか」

 そう。宇宙へ飛び出した廃棄物の多くは、母星の引力に引かれるまま地上へと落下していたのだった。

 デブリを宇宙にふりまいたとの汚名を背負うことを恐れた上層部が行ったもみ消し工作により、真相が一般人に知られることはなく。
 その事件は、今でも時々、週刊誌を賑わせている。

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