悪役令嬢・ミュージック・ライブ
「今日は悪役令嬢・ミュージック・ライブに来てくれてどうもありがとー!」
<わあああああああああ!>
「イカれたメンバーを紹介するわよ! まず男爵令嬢担当、リリーナ!」
<わあああああああああ!>
「続いて弟担当、ケビン!」
<わあああああああああ!>
「騎士見習い担当、ロベルト!」
<わあああああああああ!>
「イケメン教師担当、ルワン!」
<わあああああああああ!>
「悪役令嬢担当は私、ヴィナ!」
<わあああああああああ!>
「そしてそして! 王子を担当するのはもちろんこの方、クライク・ジーク・バーソロミュー王子だああああああああ!」
<わあああああああああ!>
「……えっ。何。え、え」
クライクは突然の歓声に、焦る。
「さぁ、それではまず一曲聞いて頂きましょう! クライク王子のボーカルが炸裂する名曲、『婚約破棄』だぁっ!!」
「い、いや、おい。なんなのだこのギャラリーは。私はただお前に話があるからここに呼んだのだが……」
(クライク様! そんなことどうでもいいですから! 早く婚約破棄してください!)
リリーナ男爵令嬢が小声でクライクに話しかける。
「う、うむ……。ヴィナ、このギャラリーで言いづらいが、貴様に話がある」
「♪あら クライク様 何の御用かしら♪」
「え、えっと。貴様との婚約を破棄させてもらうぞ……」
「♪そんな! いったい何故婚約を破棄するんですの♪」
「歌いながら返答するな!? 普通に答えろっ!」
「♪普通に答えろ~♪」(ハモリ)
「ハモんなっ!? 真面目に聞けっ!」
「♪真面目に聞け~♪」(ハモリ)
「と、とにかくだな! 貴様がリリーナをいじめている証拠をつかんだんだ! 言い逃れはできないぞ!」
『♪ウォウウォウ♪』
「貴様は私の婚約者としてふさわしくない! よって婚約を破棄させてもらう!」
『♪ウォウウォウ♪』
「おいケビンっ! なに変な合いの手いれてるんだよ!? 更にやりづらいわっ!」
<パン! パ パン! ヒュー!>
<パン! パ パン! ヒュー!>
「ギャラリー、お前らも入るな!? あとサイリウム振るな!」
「ギターソロ、行っくよー!」
「何故にここでギターソロ!? もう完全に音楽の演奏会じゃねーか!?」
(王子! 早くギターを弾いてください!)
「……え!? ギターソロって私が担当なの!? いやいやいや、聞いてないしそんな事! というかギター持ってないし!」
「……」
「ふざけるのも大概にしろ! 私は真面目にやってるんだ!」
「……」
「とにかく貴様との関係も今日限りだ! さっさと私の前から消えろ!」
「……」
「……」
「……」
「……なんか言えやぁ!? なんでさっきまで盛り上がってたのに急に黙るんだよぉっ!?」
(王子、今はボーカルソロです。皆静かなのは当たり前です)
「ちょこちょこソロパートを私に押し付けんなっ!」
「♪押し付けんな~♪」(ハモリ)
「だ、だから
「♪何度もハモんな~♪」
「先走るなっ!? 私の言いたかった台詞だそれはっ!」
『俺達は愛を確かめ合ってきた……しかしそれは偽りだったと知る。いつの日からだろう、君が遠くなったのは。やがて俺達は、悲惨な別れへとたどり着く……』
「よく分からん台詞パート入れんな!?」
(はい、王子! ここで海老反りジャンプしてください!)
「何でこのタイミングで海老反りジャンプせにゃならねーんだ!? いい加減やめろぉっ!」
「……皆、どうもありがとー!」
<わあああああああああ!>
「マジで終わった!?」
「さぁ、次の曲は皆お馴染み『学園追放』だぁっ! ボーカルは引き続きクライク王子が担当するわよーっ!」
「しねぇよっ!?」