放送室の雑音 其三
「人間……?
さっきの手首も
私達と同じ人間だって言うの!?」
「……人間よ
私達は“裏”人間」
「裏……人間?」
聞きなれない言葉に冴子は怪訝な表情を浮かべる。
「サエ……!」
冴子の後に隠れている恵が震えながら腕を引っ張る。恵に冴子がうなずく。
「私達は元の学校に、
元の世界に帰りたいの
あなた……
何か知ってたら教えて」
「……着いて来て」
2人は少女の様な黒い“裏人間”の後を恐る恐るおった。
「ねぇ……
私達の他にもう1人…
見なかった?」
冴子は司の事が気掛かりだった。
裏人間と呼ばれる者達の住む場所にたった1人、、、
「大丈夫……
私に着いて来たらわかるから」
何故か少女の言葉は信じられる気がした。
特殊な状況がそうさせるのか、、、
「裏人間……
って……何?」
少女はその質問を聞くと急に立ち止まりこちらを見た。目と口だけの真っ黒な顔のはずだが、悲しげな雰囲気を感じた。
「あなた達の住む“表”に“生まれられなかった”人間がこちらに来るの」
「生まれ“られない”?」
「私はね……
私が母さんのお腹の内にいた時に……
流産……したの……
あの時の苦しさ……
今も覚えてる…」
少女の話に2人は何も言えなかった。
「……
なんだか……」
恵はそこまで言うと言葉に詰まらせた。無事、生まれる事のできた自分達が彼女にかけられる言葉は無かった。
冴子がふいに顔を上げ、
少女に問い掛けた。
「じゃあ、
さっきの手首……も?」
冴子の言葉に恵もはっとして顔を上げた。
少女はその質問に首を縦に振った。
「でも……
なんで……?
あなたは…人の姿なのに」
「裏人間のほとんどは“かけら”として生まれるの
私は特別なの、
もちろん私以外にも人の姿の裏人間はいるわ」
少女の話を聞きながら進むうちに扉が見えてきた。
「この部屋にあなた達のお友達が待ってるわ」
少女の言葉に2人は顔を見合わせ、扉に駆け寄った。
ガチャリ……
扉は『キキキキッ』と低い音をたてながら、
ゆっくりと開いた。
部屋の奥の壁に司はもたれかかっていた。
「司っ!!」
「司ちゃん!!」
2人は司を見つけるなり駆け寄る。
「司ちゃん!」
「……気
…失ってる…みたい」
司の無事を確認した冴子は安堵感からポロポロと涙を流した。
恵もそれにつられるように泣き出した。
ザザッ
ふいに鳴った雑音に2人は顔を上げた。
「ここって……!!」
「放送……室…!」
司の事で頭が一杯だった2人は今になってそこが放送室だと気付いた。
少女の姿も消えていた。
ザザッ
ザザザッ
ザッーーーー
『あぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
突然、部屋中から人とも獣ともつかない叫び声が聞こえた。2人はあまりの恐怖に、ただ震えヘタり込んだ。
さらに部屋中から声が聞こえる。
『や……やめ………
めめめめめめめめ……』
『くる………し……』
『だし………』
「出してっ」
瞬間!
冴子の腕を“何か”が掴む!
反射的に振り向いた冴子が見たものは下半身がドロドロに溶けた“胎児”。
先程会った少女や手首の様に真っ黒では無い、薄いピンク色をしている。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
それを見た恵は悲鳴を上げるとそのまま気絶した。
「け……い
つか………さ……」
冴子はガタガタと全身を震わせた。
腕にあった感触は次第にお腹あたりに近付いている。
ズルッ……
ズズズッ……
ズッ……
感触がお腹に来たのを感じる。
冴子は目をぎゅっと閉じた。
「出して」
「出して」
「出して」
………声が止んだ。
冴子はゆっくり目を開けると、、、、 |