願いを叶える薬『有りマス』 其ニ
真はまるで吸い寄せられる様に店へ入った。
薬棚のラベルには相変わらず奇妙なものばかりが並んでいる。
(なんで私
お店に入ったのかしら
別に・・・
用は無いのに・・・)
ふらりふらりと
操られる様に店内を歩くとふいに止まった。
「・・・
霊が見える様になる・・・えっ!?」
思わずそのラベルの瓶を手に取る。
「大切な人が逝っちまったのかい?」
真はその言葉に振り向く
視界が涙でぼやけているのにその時気付いた。
「その瓶持って涙流してりゃ誰でもわかるよ」
「・・・はい
結婚する・・・はずでしたでも・・・」
真はその瓶を握りしめるとその場にしゃがみ込んだ。
「用法はな
会いたい人を思い1錠
1錠以上飲んでも意味無いからね
大サービスだよ?
1回分・・・持ってお行き」
「おばあさん
・・・ありがとう
・・ございます」
精一杯の笑顔を返した。
真はその足で彼の住んでいたアパートへ向かった。
もちろん部屋にはカギがかけてある。
真は仕方無く部屋の前で
ティッシュに包まれた薬を取り出す。
「あなたにもう一度・・・」
目を固くつぶると
薬を飲み込んだ。
ゆっくりと目を開ける。
期待、不安、なんとも言え無い感情が沸き上がる。
彼女の前には
男性が立っていた。
その瞬間
彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
男性は
何かを訴える様に口を開くが彼女には何も聞こえない。
「わかんないよ!
何か言いたいの?
何を・・・!?」
男性は徐々に薄れ
霧が晴れる様に消えた。
「待って!
待ってよ!!
私を・・・
1人にしない・・で」
真はその場に崩れた。
目からは先程から流れていた涙がいっそう勢いよく流れた。
ふいに正面に人の気配を感じた。
真はゆっくり顔を上げた。
「おばあ・・・さん?」
「お嬢さん
悲しい涙だね?
大切な人には会えなかったのかい?」
真はがくりとうなだれると首を横に振った。
「何か・・・
言って・・・た
でも聞こえなかった!
・・・何か伝えたいの?
声・・・聞きたい」
おばあさんは
ふーっと息をつくと
ズボンのポケットから瓶を取り出した。
「これが最後のサービスだよ?
これ以上サービスすると
おマンマ食えなくなっちまうからねぇ」
「・・・?」
受け取った瓶には
『霊と話せる薬』
と書かれていた。
「1つ注意があるよ
もし相手があんたに怨み事を持ってた場合
あんた連れて行かれちまうからね
覚悟あるなら飲んでみな」
うん、うん、と
何度もうなづくと薬を1錠取り出し
飲み込んだ。
気付くとおばあさんの姿は無かった。
(帰ったのかしら・・・)
しばらくの沈黙の後
かすかに何かが聞こえるがよく聞きとれない。
「よく聞こえないよ!」
「真・・・」
突然
部屋の扉が開いた。
真は誘われる様に部屋に入った。
「あの頃の物
無くなっちゃったね」
「・・・ごめん」
部屋のどこからともなく
彼の声が聞こえた。
「なんであやまるの?」
「真を・・・
1人にした・・・
いつも、真の泣く姿・・・見ていた」
「いつも・・・
そっか
いつも見てくれてたんだ」
「真・・・
泣き顔・・・辛い
僕のために・・・
泣かないで・・・」
うなづく真の目から
涙がこぼれる。
「ごめん・・・
もう・・・
僕は・・・行かなきゃ」
「・・・行くの?
もう見守っててくれないの?」
真は辺りをキョロキョロ見渡す。
彼の姿は見えないが
確かにそこに『彼』を感じていた。
「このままだと・・・
悪い霊に・・・
なってしまう・・・から
大丈夫・・・
いつも・・・
見守ってる
真・・・
笑顔・・・見せて」
「うん・・・
心配かけて・・・
ごめんね」
真が微笑むと
辺りは先程よりいっそう暗くなった。
彼が去ったのだと
真にはわかった。
「春花さん!
今日も頑張りましょう!」
いつも以上に元気な真に
春花は驚いたが
何かを吹っ切れたのだと感じた。
「マコ
あなた・・・
さっ!
お店開けて!」
「はい!」
「あ、そうそう
サキの話聞いてる?」
「いえ
うまくいってるんですか?」
「それがねぇ・・・」
白野高校のオカルト研究部へと1人の少女が駆け足で向かっていた。
部屋へつくなり
勢いよく扉を開けた。
「大ニューーースっ!」
冴子は声の主を見るや大きくため息をついた。
「恵・・・
あなたは黙って入ってこれないの?」
「司ちゃーん
サエが怖いよー!」
「抱き着くな!
暑くるしい!
で、何よ?」
司は一応聞いてみたが
特に興味無さそうに雑誌を読みはじめた。
「司ちゃんも冷たいし
まあいいわ
なんと!
『願いを叶える薬』を売るお店があるらしいのよ!」
「・・・知ってる」
2人は声を揃えて答えた。
「ひっ!?
ヨ・・・ヨッシー!
サエと司ちゃんがイジメるよー!!」
「願いを叶える薬『有りマス』」 終 |