冥夜話―メイヨバナシ―(12/14)縦書き表示RDF


オムニバスホラー冥夜話第五幕。アリの群れが彼に這い寄り、そして・・・。
冥夜話―メイヨバナシ―
作:ごん太



黒い部屋 其ニ


部屋中にけたたましく
目覚ましの音が鳴り響く。その音に目を覚ます。
倒れ込んだあと
その体制のまま眠ってしまっていた。

「・・・
っ!
首寝違えたか?
うつぶせのまま寝たのなんてはじめてだ」

亮平は大きくあくびをすると
眠気まなこを手でこする。

「っ!!」

その手には
まるで黒い手袋をしていると言える程びっしりとアリが張り付いていた。

「うわっ!」

片方の手でアリの群れを払おうとしたが、

「なっ!!?」

そちらの手にもびっしりとアリが張り付いていた。

亮平はその光景に叫び声を上げながら
洗面所へ急いだ。

「なんだよ!!
くそっ!
この部屋絶対おかしいだろっ!?
なんでこんなにアリが!」

洗面所の蛇口から
勢いよく出る水でアリの群れを洗い流す。
しかし
奇妙な事にいくら流してもその群れは洗い流される事はなく
むしろ少しづつだが
数を増していた。

「どうなっ・・・
どうなってんだよ!?」

両手を見つめて叫んだ。

亮平の手の指先
その爪の間からぞろぞろとアリが顔を出す。

亮平はその異常な状況に
ただ体を震わせるだけだった。


ふと
洗面所の鏡が視界に入った。
そこに映ったのは

「あぁ・・・
あぁぁぁ・・・

あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

顔一面を覆うアリの群れ。耳、鼻、口はおろか
涙腺や毛穴からも
ぼこりぼこりと飛び出して来た。

「ひや!
あぁぁぁ!!?
な、なんだ………
どうなって………!」

あまりの異常さに
涙腺がゆるむが
出てくるのは無数のアリ。

亮平は狂乱しながら
水で何度も何度も顔や手を洗う。
手に溜まる水に目を向けた瞬間
その場を飛びのいた。

蛇口からはぞろぞろとアリが出てきていた。

アリの群れはしだいに
部屋一面を覆いはじめた。

「あぁぁぁぁぁ!
くそっ!くそっ!
死ね!消えろ!
死ね!死ね!
消えろーー!!」

辺りにある物を掴むと
めちゃくちゃに投げ飛ばした。

蛇口や更には足からも這い出るアリの群れは
いっこうに止まる事なく
部屋を黒く染め尽くした。

亮平はなんとか
扉にたどり着くと
ドアノブを掴んだ。

「うわぁぁ!」

鍵穴部分からアリが入り込んできた。

「外からもっ!」

亮平は逃げる様に扉から離れると
窓へ急いだ。

窓もすでにアリに覆われ
外から光が入り込まない程だった。

亮平はアリを適当に払い飛ばすと窓は勢いよく開けた。


その光景はまさに異世界と呼ぶにふさわしい
異常極まるものだった。

道路、車、建物、電柱、電線
そこを当たり前の様に歩くヒト
それら全てをアリが黒く覆っていた。

いつもの様に世間話をする主婦や自転車を走らせる学生
まるで今までそうであった様にアリに覆われた異様な街になじんでいる。

「は、ははは……
なんだよ
どうなってんだ?
真っ黒じゃないか!
アイツも!
アイツも!
アイツも!
アリまみれじゃないか!?おかしいだろ!?
どうなってんだよ!?」

亮平は魂が抜けた様に
グッタリと崩れた。

亮平の奇声を聞き付けた隣人が警察に通報
そのまま病院へ運ばれた。


「……治るんですか?」

「そうですね・・・
精神病患者にはよくある症状ですが
小さな虫が体中をはいずり回る幻覚が見えるんです

ゆっくり少しづつ改善させていきましょう
大丈夫、治りますよ」

医者の言葉に
亮平の両親は何度もうなづいた。

「高橋さん
大丈夫、何もいませんよ」

「来るな!
来るなよ!
体中アリだらけじゃないか!!
うわっ!!
手に!
こっちにも!!」


3日後
彼は病室から飛び降り
自殺した。

「黒い部屋」 終


今回はアリ嫌いの人には最悪のストーリーだったと思います。怖いと言うか嫌な気分になってもらえたなら狙い通りですが。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう