「重いねん、おまえ」
似たような言葉を前にも言われた。(というか同じ言葉やけど、)
特別な人に貰った氷よりも冷たい言葉と視線と態度。
このつらすぎる状況にただ、ただ、泣かないようにした。
「ごめん」
「いや、それ前もゆうたやん」
「結構な、抑えてるつもりやねんけど、」
「・・そーゆうとこやねん。腹立つ」
なにを言っても無理だっていうことは分かっている。
もうお互い違う道を行っていることも知っている。
ため息やら、舌打ちやら、つららになってあたしの心臓を刺す。
“そーゆうこと”ってどーゆうことなんだろう。
わからない、なんて言うと、あたし殺されるかもしれない。
かといって無難にいくと、確実に別々の道。(分かりきってるが)
とにかく、引き止めなきゃ。あたしの最愛の彼を。
「あたし、別れたくない」
「分かってるやろ?おまえも無理やってこと」
「思ってへんよ」
「なんで思わへんのん。あほちゃう?」
革靴の音が耳の奥で木霊する。
やだ、行かないで。泣いて喚いても、あなたは足を止めることはないでしょう。
ひとりでは広すぎる部屋は、時計とあたしの心臓の音しか聞こえない。
涙が落ちる音も聞こえない。気がおかしくなりそう。
こんなの違う。あたしが理想としてたものと全然違う。
ふと目に付いた、よく切れそうなしろがね色の刃物。
よく見ると白い、あたしの左手首に押し付けて、一気に右に引いた。
そこは紛れもなく自分の部屋で、信じられないくらいの汗があたしを蝕んでいた。
カーテンのすきまから見える青白い光は、1日の始まりの象徴。
こんなに朝早くに起きたのは久しぶりだ、と思いながらスリッパに足を沈める。
彼の物がきれいになくなっているリビングを見て、これは夢じゃなかったんだと気付く。
それでも、左手首は白いまま。(これは夢やったんや)
どうせなら、その前の出来事が夢だったらよかったのに。
彼の前で我慢していた涙を一気に流した。今まですきだったぶん、たくさん。
もうこれで我慢する必要なくなったのに、何故こんなに出てくるんだろう。
夜なんて明けなくてよかった。真っ暗なんてひとつも怖くない。
あなたに嫌われることが、この世で一番怖いもの。
(多分今ごろ、「あいつは泣かない女やった」なんて誰かにゆうてるんやろ、)
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