仲間との出会い
護は、抱きかかえた人を広場に連れて行くとゆっくりと寝かせた。かなりひどい傷を負っている。身体も相当疲労しているようだ。これだけの状態でありながら、尚あれほどの動きが出来るとはたいしたものである。変なところで感心しながらすぐ泉の方に行き、持っていたタオルに水を浸しその人の額にのせる。綺麗な女性だ。護は顔を改めて見たときそう思った。その女性は程なくして意識を取り戻した。
「あ、気がつかれましたか?」
心配そうに聞く。
「う、うーん。君が助けてくれたのか?」
その女性はそう言うと身体を起こそうとした。
「イタっ!」
軽く悲鳴を上げる。
「あ〜、だめですよ。まだ寝てなくちゃ。ちょっとそのままで待っていてください」
護は女性を寝かすと呪文の詠唱を始めた。
「汝との古の契約により、我、願う。彼の者の傷を癒し、今再び安らぎを与えん。我、かざすは癒しの息吹」
すると、女性の周りがうっすらと輝き傷がみるみる消えていく。それと同時に体力も回復したようだ。
「ふ〜、どうです?」
女性は起き上がってみる。
「凄い。痛みが消えた」
「良かった。これで大丈夫です。あとはゆっくり休むことですね。あっ、そうだ!さっき食べてたお弁当、まだ残ってるんですけど、良かったら食べませんか?」
お弁当を差し出す。
「あ、ああ。ありがとう」
「いえいえ」
食事を済ますと、その女性はこちらに向いて言ってきた。
「本当に助かった。ありがとう。私の名前は霞という」
「霞さんですか。僕は、護って言います。よろしく」
「護君か」
「あ、護で良いですよ」
「それなら、私のことも霞と呼び捨てで読んでくれ」
「分かりました」
「それにしても、さっきのは何?傷が治っていったけど。治癒の魔法だよね」
「そうですよ」
「珍しい。治癒魔法を使える人なんてめったにいないのに。でも、おかげで助けられた。それから、ゴブリン達に襲われてるとき助けてくれたのも護だよね」
「そうです。むしろ、余計なお世話でしたでしょうか?」
「いや、あのとき助けてくれていなかったら、今頃私はこの世にいないだろう。死をも覚悟していたから。でもこんなところで私は死ぬわけにはいかない。どうしてもやらなければならないことがある。そのためにも、生き延びて、今よりもっと強くならなければならないんだ」
しゃべった横顔がとても悔しそうだった。
「なんか訳ありのようですね。良かったら話してもらえませんか?嫌なら別に良いんですど、
何か力になれるかもしれないし、身体を休めてるついでにどうですか?」
しばし黙り込む。それから口を開けた。
「そうだな。聞いてもらえるか」
「はい」
「私は、逃げてきたのだ。ここからずっと西にある、ラゼルという国からね。私はその国の王女だったんだ。幸せに暮らしていた。しかしあるとき、不気味な魔術師がモンスターを引き入れて私の国に攻め込んできた。本当に突然だったんだ。何の前触れもなく突然出現して、あっという間に城を制圧されてしまった。私も立ち向かっていったが奴にはかなわず、捕まる寸前に父上と母上が私だけを逃がしてくれたんだ。必ず生き延びると。生きて必ず助けに戻ってくると約束して。おそらく、父上と母上は捕まってしまっただろう。その後二人がどうなったかは分からない。私も追ってをかいくぐり生き延びるのに必死だったから」
そこまで言って、少し涙ぐむ。
「でも、絶対、二人は生きていると信じてる。だから私は早く強くなって、誰よりも強くなって、二人を助けにいくんだ」
「そうだったんですか」
霞はそう言うと立ち上がった。
「護には世話になったね。私はもう大丈夫。だから、もう行くよ」
「え、もう少し休んでいったら」
「しかしそうのんびりもしていられない。何時、追っ手が迫ってくるかもしれないし」
「それなら大丈夫ですよ。ここは結界が張ってあるんで誰も入ってこられませんから。それに、何時までもそうやって逃亡生活を続けるわけにもいかないでしょう?どうです、特に行くところがないなら、しばらくこの町に滞在してみませんか。あなたにはそれが必要だと思います。それに、僕も力になれるかもしれない」
「・・・。それではこの町にも危険が迫ることになるかもしれない。これ以上、迷惑はかけられない」
「大丈夫ですよ。その辺はこの国はしっかり対策してますし、なにより僕がそんなことさせません。それに下手に動き回ってさっき見たく体力を失うよりも、どこかで腰を据えて対策を練り修行した方が良いと思います。僕も微力ながら力を貸しますから」
しばらく困ったように考え込む。
「何故、そんなに私に親切にしてくれるんだ?」
霞が尋ねる。
「いえ、似てるんですよ。境遇がってわけではないんですけど、昔の僕に。旅人だったんですけど、そんな僕も今お世話になってる人に言われてこの町に住むようになって、いろいろ学ぶこともありましたから。それと昔から、母に女性には優しくするようにって教えられてきましたからね」
護は軽く笑って答えた。
「だからほっとけないんですよ。あなたのような人を見ていると。余計なお世話かもしれませんが。だからあなたも、ここでしばらく住んでみたら良いと思うんです。宿のことはたぶん心配しなくても良いと思うんで」
「そうか」
「ね?そうしましょうよ」
「・・・・・・そうだな。護の言うことももっともかもしれない。いつまでも逃げに回ってるわけにはいかないし。お言葉に甘えさせてもらうとしようかな」
「よし!そうと決まったら僕がお世話になってる人のところに行きましょう。きっと力を貸してくれると思いますから」
護も立ち上がった。二人でストロベリーに向かう。それにしても護には一つ、不思議で仕方のないことがあった。それは自分は女性が苦手であったはずだ。それなのにこの霞という人の前では比較的自然でいられる。それが何故なのか、どうしても分からなかった。
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