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風の名のもとに
作:三神ざき



いざ出発!


 とある場所の一室。怪しげな男達が話をしている。

「あんな小さな島国を落としても余興にもならんだろう」

「だが、あそこにはあの漆黒の疾風が居ると聞く」

「そうじゃ、漆黒の疾風が我々の計画の邪魔をすると考えられん事も無いじゃろ。ただでさえ、計画が何者かに邪魔をされておるというのに」

「病の芽は早々、どんな些細なものしても潰しておくに限る」

「漆黒の疾風には滅んでもらおうか」

「うむ。すべてはエススの御心のままに」

「エススの御心のままに」


ラゼル国城門広場

「さーてと、しっかり休んだ事だし、皆準備は整ったかな?」

 護、霞、楓、ふっくんの四人は休息を取り終えた後、旅の準備を終え広場に集合していた。時刻は午後二時。天気は爽快までに晴れ。そう、これからとうとう北大陸プランに向けて出発するのである。

「はーい」

「じゃあ、今から出発するけどプランには馬車で行くと順調に行けば大体ニ、三週間で辿り着く距離だ。急ぐたびでも無いけど楽だし馬車で良いよね?」

 その提案に楓が嫌な顔をする。楓は乗り物に弱いのだ。正直二週間三週間と長い間乗り物に乗っていたくは無い。

「あ、あの護さん」

「ん?」

「できれば、徒歩で行きたいんですけど」

「何故に?」

「私、どうも乗り物は苦手で・・・酔っちゃうんですよね」

「ふーん、なら徒歩にするか。そうなると到着するのに一ヶ月近く掛かっちゃうけど、それでも良い?」

「私は構わないよ」

「僕も良いでしゅ」

「じゃ、徒歩で行く事にしようか。でもどちらにせよ船には乗らなきゃらないから、それだけは覚悟しておいてね」

「はい」

「うし!じゃあ、しゅっぱーつ!」

 護達はプランに向けて歩き始めた。賑やかなラゼル国城下町を抜け静かな街道に出る。ここは主要な交通ルートとして物資の運搬、馬車の通り道等に使われる比較的安全な道だ。この道を北に向かって歩く事にする。四人はのんびりと歩いていく。

「ねぇ護。今更だけどプランってどんなところなの?」

「ん?どんなところって、とにかく暑い。辺り一面が砂漠で覆われているんだ。エンシフェルムの気候に慣れている人にはかなりきつい気温だと思うよ。なんてったって最高気温が摂氏五十五度までいくからね。そのくせ夜は今度は気温十度以下まで下がるっていうめちゃくちゃな気候してるから」

「へ〜、そうなんですか」

 霞と楓は至って普通に聞いている。プランの気候を知らないためその辛さが実感できないのだ。まだなめているところがあるようである。

「だから水だけは大切に使ってね。途中で水がなくなろうものならそれは死を意味する。その辺気をつけること」
 
 護は念を押すかのように少し強い口調で言う。それでも二人からは緊張感の無い返事しか返ってこない。その態度にちょっと不安を覚える護であった。ふっくんの方は護の頭の上に乗り、大変そうでしゅねとかなんとか言いながら少しは真剣に考えているようである。

「それで、今私達は何処に向かっているの?」

「えーっと。とりあえずエンシフェルムの北出入り口に当たるロージー港町に向かってる。この道は真っ直ぐ行けばロージーに繋がっているからね。そこから船に乗りプランの玄関先になる島国、オルビスを経由してプランに入る。エンシフェルムからプランに行くにはそのルートしかない。正確に言えば、どのルートを使おうとオルビスには行かなきゃならない」

「なんで?」

「オルビスがプランに入る許可証を発行しているからだ。プランには無断で入ることはできないんだ。プランの玄関口はそのオルビスしかないからね。で、なんでプランに無断で入る事が出来ないかというと、北大陸は壮大な山々に囲まれた大陸で船を着ける場所が限られているという事。それとあの海域には危険なモンスターが多数生息していて、正規ルート以外のルートで上陸しようとするとそのモンスターの格好の餌になる。過去モンスターに襲われ沈没した船が多数あったため、オルビスが正規ルートを作り世界で別ルートの侵入を禁止したんだ」

「へ〜なるほどね」

「ま、さして問題も無いと思うしすんなりプランには入らせてもらえると思うよ」

 四人はゆっくりとしたペースで道を歩いていく。さして危険の無い平穏な旅。やがて日は暮れていき夕闇が襲ってくる。街道の途中に設けられたキャンプ場で四人は休む事にした。持ってきたテントを二つ張り、一つは護とふっくん、もう一つに霞と楓が寝ることにする。護はキャンプ場近くに流れる川でふっくんと二人で今夜の晩御飯の魚を釣るため釣竿を垂らしていた。

「街道の途中途中にこうしたキャンプ場が整えられているのは良いよね。通り道に町もいくつかあるし、この辺にモンスターが出るなんて話聞いたことも無いから安心して旅が出来る」

「そうでしゅね。あ、お兄しゃん。竿しなってましゅよ」

「お、きたきたー!うおりゃ」

 護は思いっきり竿を引っ張った。針の先に魚がついている。イシュと呼ばれるこの辺に生息する川魚だ。銀色に輝く綺麗な魚で一般的に食用されており、煮て良し焼いて良しで味も良くエンシフェルムでは好んで食べられる魚である。護がこうして魚釣りに専念している間、霞と楓は持ってきた芋や野菜を調理していた。と言っても調理らしい調理ができるわけではない。二人とも生まれてこの方料理をしたことが無いのだ。芋を見つめながらどうしようかと悩んでいる。

「お姉さま。これってどう料理すれば良いんでしょう?」

「さあ、私には分からない。とりあえず皮を剥けば良いんじゃないか?楓はストロベリーで働いているんだから料理できるだろう?」

「え・・・実は私、御用聞きやマスターの作った料理運ぶ仕事しかしていないんで実際に料理をしたことないんです。旅していたときも途中寄った町で保存食買いだめしてましたし、生まれて料理なんてしたことないですよ。お姉さまは?」

「私がしたことあるわけないだろ?身の回りの事は全てメイドがやってくれていたんだから」

「ど、どうしましょう。護さんにこっちの事は任せておけって言ったのに」

「私は楓が任せて置いてくださいっていうからてっきり料理できるのかと思ったのに・・・。とにかく、私が芋の皮を剥くから楓は野菜の方を洗って切ってくれ」

 二人は危ない手つきで料理をし始めた。霞は手を切らないように慎重にちまちまと皮を剥いでいき楓は野菜を洗った後、切るのが面倒臭いらしく手で野菜を割る。片やかなり遅いペース片や雑にも程がある調理方法だ。霞が三十分近くかけて一つの芋を綺麗にようやく皮を剥いた頃、護とふっくんが戻ってきた。

「おーい!たくさん釣ってきたよ!そっちはもう準備できた?」

「え、えーっと・・・」

「あれ?なにまだ準備できてないの?俺もうお腹ペコペコなのに・・・ってちょっと。なんだよこの残骸は。それにまだ芋たくさんあるじゃない。あれだけ掛かって一個しか剥けてないの」

 護はバラバラに砕かれた野菜と山積みにされた芋を見て呆れた。霞と楓はてへっと笑っている。

「・・・二人とも料理したことないの?」

「うん!」

「うん!じゃなーい!それならそうと最初に言ってよ。しょうがないなぁ。良いや、二人はそこに座ってて」

 護は二人をどかすと早速料理を始めた。手際良く芋の皮を剥き、同時に沸騰させておいた鍋に芋をさっさと入れる。芋が煮えるまでの間に釣って来た魚を捌き三枚卸に捌いた魚を半分ずつ切り分け、小麦粉をまぶし温めておいたフライパンの上にバターを乗せ満遍なく溶かしまぶした魚を置く。魚を焼いている間にもう一個のフライパンを使って刻んだ野菜を炒め味付けをし、そこに若干芯を残し煮たジャガイモを八等分に刻んで入れてさらに炒めそれと平行して魚の方にも味付けをする。そうこうしている内に完成。

「はいお待たせ。イシュのムニエルにジャガイモと根野菜のチリソース炒め」

「すごーい。護料理できるんだ!それに良い匂い」

「当たり前でしょ。どれだけ旅してきたと思ってるの?これくらいできないと今頃生きてません!」

「じゃあ、お腹ぺこぺこなんで護さん早速いただきまーす!」

「お兄しゃん。いただきましゅでしゅ」

「どうぞ」

「あ、美味しい!護、美味しいよこれ!」

「気に入ってもらえて何より。じゃ、僕も食べようかなって、ちょっとー!皆食べるの早いよ!僕の分残しておいて。あ、それ今食べようとしたのに」

 三人は美味しい美味しいと言ってどんどん皿に箸を伸ばす。その速さに護はついていけなかった。実は護、食事はゆっくり取る方で食べる事に関してはとろいのだ。あれを食べようとすると先に食べられ、仕方なくこっちを食べようとするとまた先に食べられそれの繰り返し。気がつけば、ほとんど平らげられてしまっていた。

「あー、美味しかった」

「ひ、酷い。折角僕作ったのに・・・。僕の分くらい残しておいてくれたって」

 満足げな三人に対したった一切れのムニエルの残骸だけが残った皿を見て護は涙が出た。自分だってお腹が空いていたのに。悲しそうに残った一口サイズのムニエルの残骸に箸を伸ばすと味わって食べる。

「うぅ。なんでこれだけしか食べられないの・・・」

「ま、まぁ護。美味しかったからついね。こ、今度はちゃんと残しておいて上げるから、泣かないで」

「うぅ。ちょっと食べたから余計お腹空いちゃった。もう良いよ。僕もう寝る!」

 ふてくされたように護はテントの中に入っていった。

「楓」

「何お姉さま?」

「明日はちゃんと護にも食べさせてあげよう」

「お兄しゃんの背中、寂しそうでしゅたねぇ」

「そ、そうですね。護さんに倒れられたら困るんでちゃんと食べさせてあげましょう」

 三人は護の入っていったテントを見つめながら、護が料理できたのは意外だとか何とか言いながら話をし始めた。夜は更けていく。 












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