春先戦隊 サクラーマン!PDFで表示縦書き表示RDF


これは企画小説『春小説』です。
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ちなみに私、よぞの春小説は二本ありますが、どれか一本見ていただければ幸いです。
春先戦隊 サクラーマン!
作:よぞ



 変わりたい。
 きっと誰もが心の奥底に眠るその気持ちを知っている。今の自分という仮の姿を脱ぎ捨て、理想の自分という本当の姿に変身する時が来て欲しいと。
 もちろん、俺自身もそういう一人だ。
 桜が有名なI緑地で寝そべること十二時間。俺は心の底から変わりたいと願っていた。重要な任務よ。大谷係長のその一声で入社二年目の俺は燃えた。遂にきたこれ出世コース! なんて思っていた。のに。
「花見の場所取りかよ……」
 寝返りを打ち、目を瞑る。桜に囲まれ、小高い丘になっているこの場所はまさに一等地だった。しかし十二時間。ああ十二時間。俺は会社に必要ないということなんだろうか。
 思わず、ため息がこぼれる。
「ああ、変身とかできねぇかな」
「できるとも」
「まさか、無理だよ」
「願いはかなうさ!」
 ん? 俺は誰と会話しているんだ?
 目を開けるとおかしな生物が目に飛び込んできた。身長30センチ程度の浮遊体。動物に例えるなら小型の熊。それが赤いマントを翻してこっちを見ていた。
「君は選ばれたんだ!」
 いかん、幻覚まで見始めた。幻聴も聞こえる。とりあえずこの仕事が終わったら病院に行こう。今は無視だ。
「どうした勇者よ! こっちを向いてくれんかね!」
 聞こえん。何も見えん。
「世界の平和はー♪ 君の手にー♪ かかってるかもよー?」
 曖昧なのかよっ!
「変身、したくないかね?」
 くそう。どうやら消えてはくれないようだ。
 ……まあいい、どうせ暇だったし少しぐらい付き合ってやるか。
「できるのか?」
「ええっ、話聞いてくれるのっ!?」
 ダメもとだったのかよ!
「できる、できるよ! 誰でも変身できちゃうよ!」
 全然選ばれてねぇし。
「さあ、僕の後について叫ぶんだ……! 春先戦隊――」
『サクラ―マン!!』
 丘の上で一人、思いっきり叫んでしまった後に激しく後悔した。しかも言われてもないのにポーズまで決めてしまった。
「ぷっ……」
「てめえぇ! 今笑っただろ!!」
「だって、ポーズだせぇんだもん」
 ブッコロス。
 と、一歩踏み出したところで桜の花びらが舞ってきた。そりゃもうものすんごく舞ってきた。言葉の通り桜吹雪だった。
「なんじゃこりゃぁぁあ!」
「おっ、ユーサクだね?」
 知らねぇやつは知らねぇボケすんな! っていうかホントなんじゃこりゃ!? 桜が俺の周りを全て囲んで何も見えなくなっていた。
「どうなってんだこれ!」
「君は今から生まれ変わるのさ」
「はっ?」
「春先戦隊、サクラーマンに!」
 浮遊体の叫びと共に、桜の竜巻が俺を襲った。花びらにもみくちゃにされ、何がなんだかもう――。

 ――――ん。あれ?
「やあ、気がついたかい。サクラーマン」
 浮遊体が俺を覗き込んでいた。誰がサクラーマンだ。と、起き上がろうとして変化に気がついた。
「な……!」
 俺は変身していた。桜色の仮面に桜色の手袋。桜色のベルトに桜色のマント。っていうか全身桜色じゃねぇかっ!
「だっせえ!!」
「かっこわるっ」
「お前がやったんだろうがぁ!!」
 浮遊体を思いきり殴りつけた。しかし俺の拳は浮遊体をすり抜け、そのまま地面に突き刺さった。そして……。
 地面は裂け、大きな地鳴りと共に二つに割れた。
「うおぅえっ!?」
「ふっ、サクラーマンの力ならダイヤモンドですら指先で砕ける」
 すんげぇ……。
「ちなみに力が強すぎて日常生活に支障をきたします」
 スーパーサイヤ人か!
「ところで、さっきお前の体をすり抜けたんだが」
「僕は桜の妖精チェリー君。ボーイを付けて呼ぶのはやめてねっ。僕は思念体だから直接は触れられないよ」
 思念体? なんだそれ。
「で、チェリーボーイ。サクラーマンってなんだ」
「いきなりのDボーイ宣言! 下ネタは嫌いだよっ」
 うざいコイツ。
「春先戦隊サクラーマンは世界の平和を守る正義の味方! 孤高の戦士だよ!」
 じゃあ戦隊じゃないだろ!
「2300年に復活する魔王と戦う為に生まれてきたんサクラ!」
 いきなり変な語尾でキャラ付けしてんじゃねぇよ! っていうか2300年っておい!
「後290年以上あるんだが」
「大丈夫、君が死んでも新たな第二第三のサクラーマンが……!」
 俺意味ねぇじゃん!!
「っていうことは何か? 変身してもすることないってか?」
「ちなみに一度変身すると二度と元には戻れません」
 無駄に溢れるヒーローパワー!? 日常生活に支障をきたすだけじゃねぇかよ!!
「ふざけんなっ! 元に戻せよっ!!」
「しかしその願い叶う事なく、彼は一生をその姿のまま過ごすのであった――」
「いやいやいやいや!! そんな終わり方しないから!」
 くそう、思念体じゃなかったらぶっ飛ばしてやるのに。
「安心してくれサクラ。魔王と戦う他にもサクラーマンには任務があるサクラ」
「おお、なんだそれ?」
「あれを見るとよいサクラ」
 普通にしゃべれよ。あれっていうと……ん、仲睦まじそうなカップルが一組花見をしている。
「あれがなんだよ?」
「ぶっころしてぇ」
 何いっちゃってんのこいつ!?
「恋人がいるやつは皆悪人だ!」
 お前が悪人だ!
「ささ、こういう時の為に無駄にパワーアップしたサクラパワーを使うんだ!」
 やっぱ無駄なのかよ。
「サクラーマン、デストロイモードON!」
「何そのヒーローぽくないモード!?」
 チェリーが叫ぶと、目の前に近未来的な映像が広がった。
「その中のアイテムに手を触れると、それが具現化されて武器として使えるんサクラ!」
 なるほど、光線銃とかそういうのか。
 目の前に広がったアイテムを見る。
 のこぎり、サバイバルナイフ、トンカチ。
「すんげぇ日用品なんだけど!?」
「火サスからインスピレーションを受けました」
 凶器じゃねぇかよ!! そんな正義の味方いねぇよ!
「個人的にはサバイバルナイフがお勧めサクラ。必殺です」
 そりゃ必殺だろうさ!
「ささ、ぶすっと一つ」
「できるかボケっ!!」
「田中?」
「なんだよ!」
「やっぱり田中か。なんだその格好。宴会芸か?」
 振り向くと大谷係長が立っていた。しまった! もうそんな時間になってしまったのか!!
「場所取りごくろう。さ、そんな変な仮面脱いでこっちで飲もう。私がついでやるから」
 うう、普段厳しい大谷係長からそんな言葉が出るなんて。凄い美人だし、こんなありがたいことはない。でも、でも係長……。
「脱げないんです」
「は?」
「これ、取れないんです」
「バカだな。取れなくなったのか? どれ」
 係長が俺の仮面を思いっきり引っ張った。いでででで! 首がもげる!
 横でチェリーが腹を抱えて笑っている。絶対ぶっとばしてやる。
「おかしいな」
 今度は抱えるような形で引っ張った。いたい! あ、でも胸が。いた気持ちいい! うへへ。
「くそっ、なんだこれっ。よっ、どうだっ」
 そこです係長! そうもっとギュッと! ああ、いいですね〜。
「ちっくしょう!!」
 くらーーーーーしゅっ!!
 全然取れない仮面に我慢できず、係長は俺ごと仮面を地面に叩きつけた。顔だけ地面にうずもれる俺。ひどい。
「なんなんだその仮面!」
「実はかくかくしかじかで」
「何ぃ!? 正義の味方になっただと!?」
「はい」
「田中! うちの会社の名前を言ってみろ!」
「・・・です」
「大きな声で! ポーズも決めろ!」
「悪の秘密結社! ゴルゴンゾーラです!」
 両手を肩の上に、足はガニ股で膝を軽く曲げる。そしてキーッと叫ぶ!
 そう。うちの会社の目標は世界制服。俺も下っ端戦闘員として前線で戦っていた。
「社訓そのイチ!」
「小さな事からコツコツ悪事!」
「社訓そのニ!」
「隙あれば大きな悪事!」
「キャッチフレーズ!」
「輝く明日の世界制服!」
 背筋は伸ばし、視線は輝く明日の方向へ。手はきちんと肩の上だ。
 係長はうんうんと頷いて、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「いいか田中? そりゃ確かに私達の会社はまだまだ世界制服には程遠い。だけどな、正義の味方になるだなんて暴挙を起こすほどヤケになることもないだろう?」
 違います係長。そこにいるチェリーボーイが勝手にやったんです。
「それに、お前が正義の味方になんてなってしまうと私は……」
 ん? なんだか下を向いてもごもごと。よく聞こえない。
「た、戦わないといけなくなるし……」
「あはは、大丈夫ですよ係長! 俺は正義の味方になっても、係長の部下ですから!」
 さらに下をうつむいてもごもご言う係長。その仕草がかわいらしかった。と、そんな春色気分を吹き飛ばす光景が目の端に見える。
 チェリーの野郎がサバイバルナイフを持って突進してきたのだ。
「ラブコメなんて幻想サクラ!!」
 危ないっ! すんでのところで突進をかわす。しかしチェリーは方向転換してまた飛んできた。
「いつまで経っても食パンを咥えた転校生がこないサクラっ!」
 いるかそんな奴!
「両親が海外赴任しているところに謎の美少女が訪ねてきたりゲフッ!」
 係長のムチがチェリーを捕らえた。チェリーはむなしく地面にたたきつけられる。
「うるさいわよ謎の生物!」
 さすが係長。正体不明にも関わらず叩き伏せるとは。ん? 叩き伏せる?
「あれ、お前思念体じゃなかったのか?」
「わ、私がやられても第二第三のチェリーが……ぐふっ」
「ラスボスかお前は!」
「返事がない。ただの屍のようだ」
 望み通りにしてやるっ!
 しかし蹴っても殴ってもむなしく空をきるだけだった。やはり物理攻撃では捕らえきれないようだ。
「田中、私のムチにも攻撃が当たった感触はなかった。おそらく原因は別にあるはず」
 と、その時奥の方で子供の声がした。
 みてみて、大きな桜の枝だよー。
 こらこら、桜の木を傷つけちゃだめだぞ。
 あはは、うふふ。そして家族は去っていった。
「もしかして、桜の木の精だから……桜が本体なのか?」
 うつぶせに倒れているチェリーの体がビクッと震えた。脂汗がだらだらと流れている。
「な、なんのことかなサクラァ?」
「震えているぞ謎の生物」
「つまり本体の桜の木を切れば俺の変身も解けるのか」
 チェリーは無言のままゆっくりと浮遊した。その体がやがて小刻みに震えだした。
「ふ、ふははは! これだけの数の桜の木から私の本体を見つけることができるかな!?」
 すっかり悪役だなチェリー。
「あれだろう? 枝が折れている」
 係長が指差した先には一本だけやけに大きな桜の木が立っていた。なるほど、確かに枝が折れている。
「ざ、残念だが全然違うサクラっ!!」
 目がクロールしてるぜチェリー。しかしそうとわかった以上手加減は一切しない! 今こそヒーローパワー全開だぜっ!
「デストロイモードON!」
 数ある凶器の中から電動のこぎりを取り出す。おあつらえ向きだ。
「ああ! とある映画からインスピレーションを受けた武器サクラっ!」
 あれしかねーだろうが!
 俺は一気に駆け出した。
「桜の木は国に保護されてるから傷つけたらダメ桜っ!」
 やかましいっ、俺の人生に比べたら小さな犠牲だっ!!
「国と戦うつもりサクラ!?」
「バカめっ! 国なんてものはどこにもいないわっ!」
「いや、そうでもないぞ」
「おうえっ!?」
 何時の間にか桜の木の前に軍服を着た方々の小隊が立ちふさがっていた。しかも戦車つき。
「この時期、桜の木を守るのは国の最優先事項なのだ」
 他にも問題山積みだろ日本!
 しかし立ち止まるわけにはいかなかった。俺の未来の為に。
「まかりとおる!!」
「全軍突撃!」
「死んでしまえサクラ!」
 てんめぇチェリー! くらえっ!
 俺は桜の木に向かって手裏剣を投げつけた。幹の部分に刺さると同時に、チェリーがゲフッと苦しそうな声をあげて倒れ込んだ。ざまみろ。
「余所見かね? 余所見は愚かな行為だよ君」
「うえっ!」
 警防を振り上げている軍隊の偉そうな人。振り下ろされると覚悟を決めたその時、その腕にムチが巻きついた。
「田中! そいつは私たちにまかせていけ!」
「キー!(そうだぜ友よ!)」
「キーキー!(国と戦うなんて燃えるじゃねぇか!)」
 係長! それとどこにいたのかしらんが下位戦闘員の皆! ありがとう恩に着るぜ!
 そして、日本国軍VSゴルゴンゾーラ+サクラーマンの激しい戦いが幕を開けた――。

 ――――凄かった。
 いやまさか日本軍にあれほどの秘密兵器が隠されていただなんて!
 ゴルゴンゾーラによるあの技がないと危なかった。しかもあの時に伝説のあの人までもが! なんて白熱した戦いだったんだ!!
 そしてすっかり戦場と化したI緑地の丘の上。
 味方で俺と係長以外に立っている者はいなかった。二人で桜の木の前に立つ。
「チェリー、貴様のせいで仲間たちが……」
「まさか、日本が負けるなんて思ってもなかったサクラ……」
「ふっ、社訓そのニ、隙あれば大きな悪事。これで日本は我が社のものだ」
 さて、それじゃあ切らせてもらうぜ。
「待つサクラっ! 切っちゃだめサクラ!」
「この後に及んで……!」
「違うっす! これを……見て欲しいっす」
 なんて急にキャラが変わるんだよ!! わかりづらいわっ!
 しかしチェリーの顔は真剣だった。少し物悲しく、本心で語りかけているのがわかる。
「よほど大切な事なのだろう……」
 係長が木に歩みよった。チェリーに言われた通り、木の裏側を覗き見る。と、その時、桜の枝が係長に巻きついた。
「きゃぁぁあ!」
「ふははっ! この女の命が惜しくば武器を捨てるがいいサクラっ!」
 最低だっ!! こいつ最低だっ!!
「どうした? この女が大切じゃないサクラか?」
 くっ、仕方ない。俺は電動のこぎりとサバイバルナイフとトンカチと釘バットを地面に投げ捨てた。
「殺人鬼みたいサクラ……」
「お前のセレクションだろうが!!」
「田中! 私のことなんて気にせず木を切るんだ!」
 係長の自己犠牲愛。美しいぜちくしょう。俺が必ず守ってあげますからね!
「さあ、好きにするがいいさチェリー!」
「え?」
「どうした!」
「いや、武器を捨ててもらったら特にしてもらうことないサクラ」
 ざけんなっ!! 悪役ならちゃんと計画立てて悪事を働けよっ!!
「……この硬直状態をどうするつもりだ」
「えと……、とりあえず木を切らないと約束してほしいサクラ」
「わかりましたー、切りませんー」
「嘘サクラっ!! サクラなだけに嘘サクラっ!!」
 うぜぇ! 上手くもないしちょっと得意気なのが腹立つ!!
「どうしろってんだよ!」
「誓うサクラ。誓うといえばキッスサクラ」
 キス!? そ、そんな……。ここにいる異性といえば、係長!?
「わ、私は田中の為なら……!」
「ででででも! それはなんていうかその……!」
「ラブコメしてんじゃねぇサクラ! お前のキッスの相手はあっちサクラ!」
 振り向いた先にいたのは……日本軍の人!?
「い、いや……しかしだね君。まあ、じゃあ……」
 じゃあ、じゃねぇだろ!! 赤くなってんじゃねぇよ!!
 いや、しかしここでキスしなければ係長が。いや、しかし!!
 そんなことを考えている間にも日本軍の人は顔をぐいぐい近づけてきた。嫌がってた割には積極的じゃねぇかばかやろう!!
「そこサクラ! ぶっちゅうといくサクラ! わははぎゃふっぅ!!」
「そこまでだ、外道生物……」
 係長の周りに黒いオーラが漂っていた。それが触れずして体に巻き付いていた桜の枝を腐食させている。っていうか空に浮いてるよ!?
「お、お前は……魔王!!」
 魔王降臨しちゃったーーーー!! って係長が魔王!?
「おかしいサクラ! 魔王の復活は2300年のはずサクラ!」
「光あるところにまた闇もある。サクラーマンの復活が私の復活の鍵だったのだ」
「そうだったのかサクラ……」
 お前のせいじゃねぇかよっ!! サクラーマンなんてそもそもいらねえじゃん!!
「ま、まってください係長は!?」
「あの女なら……消えた」
 消えた!?
「それはどういう……」
「私の降臨はサクラーマン、つまり貴様の一番近くにいる女の自我を奪ってなされるのだ。今回は、たまたま近くにいたこの女だったということだな。かわいそうな話だがな」
 そ、そんな……係長が。消えた。
「落ち込んでる場合じゃないサクラ! こいつは今にも世界を滅ぼすサクラ!」
 係長が……係長が……。
「今こそ力を解放する時! サクラーマンスペシャルモードON!!」
 桜色のまばゆい光を放つ桜吹雪が俺を包み込んだ。花びらにもみくちゃにされ、俺はさらなる変身を遂げた。
「それこそがサクラーマンの新の姿サクラっ!」
 桜色の仮面に桜色の手袋! 桜色のマントに桜色のベルト! って変わってねぇよ!!
「いっそう桜色だよばかやろう!」
「パワーは三倍になっているサクラ!」
 姿形を変えてくれよっ! パワーアップわかりづらいわっ!!
「それで、私と戦う気なのかサクラーマン?」
 そうだった、係長を助けなければ。
「しかしあの体は係長の体。傷つけるわけには……」
「何を躊躇しているサクラ! 世界平和のために多少の犠牲は仕方ないサクラ!!」
 まずコイツをぶっとばせる力が欲しい。
「田中とやら。私が存在する理由は破壊。全ての破壊だ。だからこのままでは世界を滅ぼさないといけない」
 いけない? まるで本当は破壊したくないみたいな……。
「そして最初に言ったように、私はサクラーマンと一対の存在だ。その意味、わかるな?」
 サクラーマンと一対。ということは……サクラーマンが消えれば魔王も消える!?
「魔王さん、あんたがいなくなれば係長は……」
「戻ってくるはずだ」
「わかった。すまない……」
「何やってるサクラ! ほら、全てを切り裂くデストロイソードサクラっ!」
 俺はデストロイソードを受け取り、一直線にチェリーの桜の木目掛けて走り出した。
「あああっ!! 斬っちゃダメサクラっ!」
 チェリーが慌てながらもトカレフを取り出す。お前みたいのがいるから世界が平和にならんのじゃボケッ!!
「それ以上近づくと暴発するかもしれないドゲフッ!!」
「こいつは私が押さえる。やれ」
 あんたいい魔王でした! いくぞっ!
 と、剣を振り下ろそうと構えたその時、あまりにも意外なものが桜の木に彫られているのが見えた。それは、魔王とチェリーの名前が刻まれた相々傘だった。
「斬っちゃだめサクラー!!」
 そうか、魔王に会いたいが為にお前……。チェリーは魔王に足げにされながら必死に叫んでいた。どうやら、今度は嘘ではないみたいだ。
 チェリー……ざまーみろ!!
「どっこいしょーーーーーー!!!!」
 ふっ、ふはははははははは!!! 俺は思いきり桜の木を真っ二つにしてやった、遠くでチェリーの断末魔の叫びが聞こえる。
「ぐあぁぁぁ!! お、おのれサクラーマン! しかし光あるところに必ず闇もある! 第二第三のチェリーが……!」
 だからラスボスかお前はっ!!
「チェリー。私を思うお前の気持ちは嬉しいが、現世に召還するのはやめてくれ。今度、魔界に遊びに来い」
「えっ……! いいサクラっ!?」
「ああ、お茶ぐらいならしてやってもいい」
「世界平和万歳サクラーっっっ!!」
 完全に自分の恋愛の為に世界を滅ぼそうとしてやがったこのチェリー野郎。マトリックスのあの人ばりに最低だっ!!
 そして辺りは眩いばかりの光に飲み込まれていった――。

 ――――田中。田中!
「……へぐしっ!」
「ばか者。こんなところで寝ているから風邪ひくんだ。……と言っても、十二時間も待たせた我々も悪いんだがな」
「ああ、係長! 戻ったんですね!?」
「戻った? 何の話だ?」
 見渡すと辺りでは社員の皆によるドンチャン騒ぎが行われていた。頭にネクタイを巻いたセオリー通りのサラリーマン達の姿があちこちにある。
「あれ、秘密結社ゴルゴンゾーラじゃ……」
「寝ぼけてるな田中。うちの会社名を言ってみろ」
 よく見ると係長もスーツ姿だった。柔らかそうなショートヘアーが春風に気持ちよさそうに揺れている。
「あ……株式会社、桜乳業です」
「そうだ。そして私達はそのチーズ部門の社員だ。ゴルゴンゾーラだなんて、チーズの夢でも見ていたのか?」
 くすくすと、係長が可笑しそうに笑った。
「さあ、飲もう。私がついでやるから」
「あ……はいっ!」
 係長に手を引っ張ってもらい、立ちあがった。二人でドンチャン騒ぎの輪の中に入っていく。顔は自然と笑顔だ。
「ところで田中」
「はいっ!」
「その変な仮面は宴会芸か?」
 ……え?




コメディってなんなんだろう・・・・・・。
人を笑わせるのは難しいなと思いました。













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