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超魔術転生~最強の7歳の俺に嫁と娘がいた~ 作者:暁える

第九章 北の王国編

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第六十七話「大空洞に眠るものを追い求めて」

「姫様……? ここは……」
「お目覚めですか、フローラ」

 神聖魔法で、もう一人の誰かが息を吹き返した。
 ハリエットは彼女をフローラと呼んだ。
 彼女は三ヶ月近く石化していた。
 記憶が曖昧になっているようだった。
 それでも、記憶を遡ろうと必死になっている。
 そして……何かを思い出したようだ。
 嗚咽交じりに彼女が呟いた……。

「ア、アイザック様と、エミリー様は?」
「俺ならここにいるぞ、フローラ。貴公のおかげで命拾いした感謝する」

 親父がフローラを安心させるように彼女の肩に手を置いた。

「話は後です、フローラ。エミリー様の石化を解除してきますわ!」

 フローラの無事を噛みしめると、ハリエットは石化したエミリーに駆け寄った。
 俺とメアリー、最後に親父がハリエットの後を追う。
 フローラにはドロシーとシャーロットが付き添った。

 息を吹き返し復活したフローラは獣族であった。
 北国のユーグリット王国でも希少な白ウサギ族であるらしい。
 ウサギのようにモフモフした耳が、だらんと垂れさがっていた。
 その長い耳は、ずば抜けた聴力があり、ユーグリット王国では諜報部隊を率いるリーダー格であるようだった。

「母上……」

 石化している母上を見た。
 父は冒険者時代、母と出逢った。
 母上は王侯貴族でもなく、元は一般庶民。
 当時は駆け落ちだった。
 父の一目惚れだそうだ。
 王都へは先王が崩御する前に、病床にて許され戻ったと聞いた。

 親父が一目惚れするのも分かる気がする。
 我が母ながらエミリーは、とても美しいと女性だと思った。

「アイザックっ! 無事だったんですね!」

 エミリーも無事、息を吹き返した。
 親父がエミリーに肩を貸す。
 エミリーは俺やメアリーがいる状況に驚いた。
 親父がエミリーに、ここまでの経緯を懇切丁寧に説明する。
 母上ことエミリーは安心したようだった。
 その様子を見て、俺とメアリーも安堵のため息を吐いた。

 俺は部屋の様子を一望した。
 この部屋に籠ってる魔素が外壁を紫色に染めている。
 前の部屋よりも明らかに魔素の濃度が高い。

 炎の精霊王が焼き焦がしたキマイラの遺体を、それとなく見下ろす。
 まさに異形だ。
 ライオンの胴体の肩辺りから山羊の頭が不気味に生えている。
 鱗を纏った尻尾の先にはヘビの頭がある。
 このような異形な魔物が自然発生するのだろうか。

 否だ。

 キマイラは俺の前世? いや過去? の記憶における合成獣。
 遺伝子を組み換えられ創造された生物。
 そう、一言で言い表すならば、生物兵器ではないだろうか。

 ミノタウルスもそうだ。
 牡牛の頭に人族の身体。
 ケンタウロスにしても一種の合成獣なのかもしれない。

 この大空洞の奥底には何があるのだろうか。
 前に魔法都市エンディミオンで知ったこの世界の歴史。
 否応なく俺は思い出した。

 魔法と科学。
 レムリアとメガラニカとの戦い。
 この世界はかつての地球だ。
 そこまではハッキリしている。
 竜王城でヘンテコなロボットが俺に見せた映像。
 結城孝生……いや、ミッドガル王国初代国王、レヴィ・アレクサンダー・ベアトリックス一世。
 日本人の彼が、ここは地球だと証明している。

 物想いに耽ってると、大空洞を下降中のドラちゃんから連絡があった。

『主よ、我は苦戦している』

 魔素に耐えきれない訳ではないようだ。
 大空洞の中で魔物に襲われてる。
 それも1体や2体では無いらしい。
 ドラちゃんは語るより、見た方が早いと言う。

『我が見ているものをイメージとして主に伝達するぞ』

 俺の脳内にドラちゃんが見ている光景がカッと浮かんだ。
 ドラちゃんは次々と襲ってくる翼を生やした魔物と交戦中。
 かなりの苦戦を強いられている。
 大空洞に壁面にある無数の石像が、翼を広げ絶え間なく飛び立つ光景が垣間見える。
 その数は優に千を超えるのではなかろうか。

「ドラちゃん、それ以上は無理だ。もういい! 引き返してくれ!」

 ドラちゃんを襲ってる魔物の正体はガーゴイルだと思った。
 横穴のボス部屋といい、この無数のガーゴイル。
 何かを守護してるガーディアンだ。

 やはり、この大空洞には何か秘密がある。
 ドラちゃんは急上昇し、ガーゴイルを振り切る。
 飛行能力は圧倒的にドラちゃんが勝ってる。
 これなら無事に脱出できるだろう。

「さて、どうしたものかな……」

 全員が俺の周囲に集まっていた。
 この大部屋で多くの捜索隊が命を落とした。
 しかし、彼らの遺体は一切なかった。

「喰らったのだろうな……」

 親父が呟いた。
 2匹のキマイラが骨も残さず捜索隊の遺体を喰らったのだろうと、父が嘆いた。
 親父も母上も無事だったんだ。
 ここが引き際だろう。

 でもなぁ……正直な話、この先に何があるのか気になる。
 これだけの魔素が立ちこめているのだ。

 魔素が結晶化したモノが魔力結晶。
 浮遊城やタイムマシンの動力源にもなる。
 ここには濃密度な魔力結晶が眠っていそうだ。
 俺が俺自身が、己の過去を取り戻すには、タイムマシンの起動は絶対だ。
 今はそう考えている。
 ……だから、ここから先は俺の我がままの領域だ。

 両親は元より、皆にはドラちゃんとともにユーグリットへ帰還してもらおう。

「ルーシェリア王子、あなた……まさか……」
「おいおい、ルーシェリア、バカなこと考えてるじゃないだろうな」

 シャーロットの悲鳴にも似た呟きに親父が反応した。

「僕はこの大空洞を攻略する」

 一同が唖然とした。

「ル、ルーシェ様、な、なんてこと言い出すのですか! ここで引き揚げるのが最善です!」

 メアリーが慌てて俺の言葉に反対の意を示した。
 もっともな意見だ。
 俺自身も、そう思ってるからな。

「いいわ、ルーシェリア。私も付合ってあげる!」

 ハリエットは乗り気だ。
 恐くはないのだろうか。
 まぁ、たとえ賛成してくれたとしても、連れていく気はさらさらないけどな。
 ハリエットの身にまんがいちの事があったら、ミッドガル王国とユーグリット王国の仲が険悪になりかねない。
 傭兵王ベオウルフは俺を信頼し、家宝でもある愛剣を俺に預けた。
 剣は騎士の魂だ。
 ベオウルフは己の魂と引き換えにハリエットを俺に託した。 
 俺の勝手な解釈だが、少なくともベオウルフとの約束は裏切れない。
 ハリエットは無傷で帰さなくてはならない。
 両親が助かったのもハリエットの神聖魔法があってのことだ。

「父上、バカなことを言ってるのは重々承知です」
「お前はバカだ。だが、面白い! ルーシェリアよ、一体、何を考えている?」

 親父は俺の心内を探るように睨んできた。
 己が何者なのか、知りたい。
 だからタイムマシーンで過去の俺を見に行くつもりだ。
 しかし、言い出せない。
 出産の苦しみは男の俺にはわからない。
 わからないけど、エミリーの前では、なんとなく言いだしにくい。
 自分が母上の息子じゃないかもしれないと、宣言しているみたいで失礼だからだ。
 だから、無難に好奇心を刺激された。
 そう伝えることにした。

「この大空洞の秘密に興味が湧いたのです。僕は空を自在に飛べます。危険を察したら引き返しますので、父上はハリエット姫を連れて、帰ってください!」

 俺の言葉にハリエットが不満そうな態度を取る。
 が、親父は苦笑いをすると、俺の我がままを受け入れた。

「無理するんじゃないぞ、ルーシェリア」
「あ、あなたっ! お認めになるんですか!」

 母のエミリーが苦笑するアイザックを激しく睨む。

「ルーシェリアが行きたいと申すのだ! 俺も先王の反対を押し切って、お前と駆け落ちしただろ? そんな俺に、反対する資格はない。それにルーシェリアには、真実を知る必要がある。その時期が来たのやもしれん」
「あ、あなた……」

 エミリーが慌てて親父の口を塞ぐ。

「おっといかん! 思わず口が滑ったな……」

 口が滑ったって何だ? 
 ……俺には知る必要がある、真実? だって!?
 何のことを言っているのだ?

「父上……僕が知るべきことって何なんですか? この先に何があるって言うんです?」
「それ以上は語れぬ。自分の目で見て、確かめてこい。ただし無茶はするなよ」

 親父の口ぶりは、大空洞の秘密を知ってるかのようだ。

「父上は、この先に何があるのか、御存じなんですか?」
「あ、いや、すまん! 誤解させたかな、何も知らぬ。嘘ではないぞ! ただカッコ良く言ってみたまでだ」

 くっそ! 掴みどころがない。何がカッコつけて言っただ。
 実は俺自身が合成獣とかいうオチじゃねーだろうな?

「父上、母上、僕は間違いなくルーシェリア・シュトラウスなんですよね?」
「お前、頭でも打ったのか? そうに決まってるじゃないか」
「あなたは、私の大切な子どもです……願うならばルーシェ……ずっと母を愛していてほしいのです」

 親父が俺のおでこに手を当てる。
 そして、にこやかな笑みを浮かべた。

「うむ、大丈夫だ」

 なーんか、腑に落ちない。
 エミリーの言葉が意味心に感じたからだ。
 俺は猜疑心を抱いたまま、メアリーに視線を飛ばす。

「どうかなさいましたか、ルーシェ様?」
「メアリーは僕の出産に立ち会ったんだよね?」
「とても可愛らしかったのを、今でも覚えてますよ」

 そう言ってにっこり微笑んでくれた。
 何かを隠してるとか嘘をついてるとかじゃなさそうだ。

 親父の許可もでたんだ。
 さっさと行って確かめてこよう。

 ハリエットは両親とともに引き返すことになった。
 シャーロットも魔力欠乏状態でふらふらだ。
 無論、フローラも引き返す。

 ところが、メアリーとドロシーは頑として引かなかった。
 死んでも着いてくると言う。
 俺は渋々、二人の同行を認めるしかなかった。

「ルーシェリアよ、何があっても母を愛しておるな?」
「無論ですよ、父上」
「ならば良し、行って来い!」

 家族愛の再確認なのか? 
 もしや俺ではなく、母上に何か秘密があるのか?
 俺はそれとなく母上の表情を窺った。

「ルーシェ……無事に帰ってくるんですよ!」
「あ、はい!」

 優しげで懐かしい眼差しだ。
 過去の母と同じ香りがした。
 俺の事を本気で愛してくれているのだろう。
 とりあえず俺は親父達をユーグリット王国へ送り届けるように、ドラちゃんに命令。
 大空洞の入口で親父たちが戻ってくるまで、待機して待っててくれと頼んだ。

「あ~ん、ずるぃ! ルーシェリア! 私も行きたいのですわ……」

 フローラの刺すような視線が、ハリエットの胸を釘止めている。

「んもぅ! フローラったら! 石化したままほっとけば良かったですわ!」

 フローラが、断じてハリエットの同行を許さなかった。
 シャーロットとエミリーが心配そうな眼差しで俺達を見送る。

「心配いらない、無事に帰ってくるよ」

 俺は皆に微笑んだ。
 そう……これで、いいのだ。
 過去を知ってこそ、未来に挑める!
 その一歩を今、踏み出したのだ。
 未来の嫁とともに。
 メアリーとドロシーは俺が命に代えても守る!
 俺は二人を連れ、更に奥へと歩を進めた。
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