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超魔術転生~最強の7歳の俺に嫁と娘がいた~ 作者:暁える

第九章 北の王国編

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第六十五話「救出」

「これは何て魔物なんだ?」

 上半身は鎧を纏った人間で、下半身は馬だった。
 俺の問いにシャーロットが答えた。

「これはケンタウロスね」

 ああ、そうだ、それだ。
 そのケンタウロスの手には大弓が握られていた。
 強靭そうな脚には多数の傷跡があり、致命傷となったのが胸であろう。
 鋭い刃で貫かれたような痕跡があった。

「倒されてることだし、先に進むか」

 牛の次は馬か。
 先ほどと違い、大部屋の中で倒されている。
 前のボス部屋では不意打ちを受け混乱し、被害が拡大したのかもしれない。

 この大空洞……明らかに人の手が加えられているな。
 更に深層へと下る階段を俺達は慎重に進む。

 その途中。
 踊り場のような場所で俺は歩みを止めた。

「どうしたの? ルーシェリア?」

 後ろを歩くハリエットが呟く。
 シャーロットも足を止める。

「いや、ここって一体なんだろうと思って、通路も階段も部屋も全てが人工物じゃないの?」

 そう言って俺は全員を見渡す。
 特に事情の詳しそうなシャーロットを見上げる。

「意見を求められてるようで申し訳ないけど、私にもわからないわよ?」

 千年前の魔神戦争で活躍した英雄にもわからない。
 今まで誰もこの大穴に潜入した者はいないと言うことらしい。

 この先に一体、何があるというのだ?
 進むことでしか答えは見いだせないが、あまりにも不自然だ。
 何かの目的があって意図的に作られた大穴としか思えない。
 淡々と進むのは危険すぎる。

 まだ、最初に見た凄惨な光景が脳裏から離れないのか、皆の思考も追いついてない。
 注意力も散漫になってるな……。

 恐らく次も同じようなボス部屋がある。
 その先で既に何かが起こってるかもしれない。
 目に焼きついた光景がそう思考させる。
 思考を狂わせる。

 慎重なシャーロットらしくもない。
 並行して歩いていると彼女の呼吸のリズムに乱れを感じる。
 周囲を警戒するどころか、光の精霊を前方飛ばし漠然と歩を進めてるだけだ。

 俺は全員に尋ねてみた。
 この先、次に何があるのかを。

『同じような部屋がある』

 全員の意見が一致した。
 つまり思考の先がそこで停止している。
 次の部屋までは特に危険がないと全員がそう感じてるのだ。
 実に危うい。

「ルーシェ様、どうしたのです? 地面に手を当てて」

 メアリーが聞いてきた。
 全員が俺の行動を訝しむ。

「この先の通路を凍結させる!」
「えっ!? どうしてなんです?」
「皆、気を張ってるようで無意識に気が抜けている。いや、思考が散漫になってる。そう思ったからだよ」

 岩や土砂混じりの壁、床、天井。
 氷が走る。
 通路の先が瞬時に凍結していく。

 凍結させることで気が付いた。
 この先の階段。
 今までの数倍長い事に気が付いた。
 次のボス部屋の扉周辺まで完全に凍りついた。
 実感が魔力を通じて伝わってくる。

「ルーシェ様……ひ、冷えますね」
「王子、凍らすことに何か意味があるのですか?」

 メアリーがひやりとした空気に身震いし、ドロシーは恐る恐る氷の階段につま先を乗せ滑らないか確認している。

 ギミック対策だ。
 壁床天井を凍結させ、あるかもしれない罠を未然に防ぐためにやった。
 俺達のパーティには罠を感知できる者がいない。
 感知はできないが、魔力を通せば何かしらの違和感を察知できる。

 魔法学院の地下で、ラルフの魔力を追った時にコツを掴んでいた。
 自然の万物じゃないものを凍結させた実感もある。
 天井と両サイドの壁に違和感があった。
 階段は大丈夫そうだった。

 罠があったのなら、これで機能停止状態に追い込めたかもしれない。
 俺は感じたことを全員に話した。
 全員が納得してくれた。
 気を引き締めてくれた。
 これだけでも十分な成果だ。

「でも、ルーシェリア……階段で滑ったら大変じゃないかしら?」

 ハリエットの意見にドロシーが同意する。

「心配ないよ、階段の氷だけ溶かせばいいだけの話だよ」

 階段に渦巻く炎が走る。
 しゅわっと階段の氷だけが解凍された。

「ねっ! こんなもんだよ」
「さすが、ルーシェリア。超級の魔術師ってだけあるわね! 私も負けられないわ!」

 ハリエットが俺の魔術を悔しそうに褒める。
 巧みに氷と炎を操る俺にシャーロットが感心した。

「器用なことができるのね。面白いものを見せて貰ったわ」
「王子の魔術の技量は古の賢者を凌駕すると、学園の副学長も言ってたのであります」
「ルーシェ様の魔術の腕前にはメアリーも感服いたしました」

 派手な魔術を見て皆の目も明るくなった。

「ここから気を引き締めていくよ。周囲の警戒もよろしく頼むよ」

 階段を下りていく。
 かなり長い階段だ。

「ルーシェリア王子。ちょっと待って!」
「どうしたの? シャーロット?」
「人の気配がするわよ」
「ほんとっ!?」

 エルフ族の聴覚が働いたようだ。
 シャーロットの長い耳がぴくぴくと反応を示している。

 階段の途中、やはり罠があった。
 天井や壁から槍が突き出るようなものだった。

 階段を降りたところで、一人の男が壁に横たわっていた。
 やつれ気味な眼差しで俺達の方に振り向いた。

「ち、父上っ!」

 俺の親父だった。

「だ、旦那様っ!」

 俺とメアリーが真っ先に走り寄る。

「おおっ! ルーシェリアか、また随分なところで出会うもんだな」

 親父が口元をゆるめた。
 じっと俺を見つめる。
 じわっと目頭が熱くなる。
 疲労困憊のようだが、そこそこ元気そうだ。
 笑う元気があるんだ。
 多少怪我をしているようだが、ハリエットの神聖魔法で傷は癒える。
 本当に良かった。

 しかし、全体の傷は浅かったが左足が重傷のようだった。
 重症と言うよりも石化していた。

「心配しないで、おじ様。私の神聖魔法は石化の治療なんてちょろいもんですわ!」

 ハリエットが親父の左足に手を当て、詠唱する。
 淡い光を浴びながら、石化した左足に血が通って行く。
 俺にはできない芸当だ。

「ハリエット姫」
「はい、おじ様」
「命拾いした。感謝する!」

 親父はメアリー、ドロシー、シャーロットと視線を移していく。

「旦那様、どうぞご無事でいらしゃいました」
「ふむ、メアリーか心配かけたな」
「滅相もございません! 旦那様がご無事で安心いたしました」

 安心して気が抜けたのか、メアリーはへなへなと地面に座り込んだ。

「アイザック、無事で何よりでしたわ」
「すまぬな、シャーロット。貴殿まで駆けつけてくれるとは、ご足労かけたな。で、そちらの可愛いお嬢ちゃんはどちらかな?」

 親父はとても優しい眼差しをドロシーに向けた。

「あ、はい、初めましてなのです。ドロシーと申します。よろしくお願いしますなのです」
「うむ、こちらこそよろしくな、ドロシー殿」

 会話の区切りのいいところで、俺は母のエミリーについて尋ねた。

「ある意味、無事ではある。皆が命がけで守ってくれた……。だが、助けるためには扉の先の魔物をどうにかしなくてはならぬ」

 そして通路の真向いには一名の戦死者の骸があった。
 通路での罠より、俺の母を助けるために犠牲になったと聞いた。
 咄嗟の機転で犠牲になったらしいのだ。

 親父の話を聞くと残り10名のうち、無事なのは親父を含めて3人だけだと言う。
 親父と母上、そしてもう一人。
 母上とそのもう一人は、この扉の先にいる。

 二人は完全に石化しているそうなのだ。
 仮死状態だ。ハリエットなら助けられる。

 父は三ヶ月程前。
 母を助けるため、敢えてキマイラの石化ブレスを利用し母を石化させたと言う。
 他の者は残念ながら命を落としたそうだ。

「扉の先には何がいるんです?」

 俺の問いに親父が答えた。

「キマイラだ」

 そう言って父は重い腰を上げようとした。
 俺はそれを制した。

「父上、母上の救出は僕に任せてください!」
「数ヶ月見ないうちに、逞しくなったなルーシェリア。つい先ほどケツは冷やされ炎にまみれ散々だったぞ! まったくヤレヤレだ」

 父は満足そうに微笑むと、俺に任せると言った。

マンティコアをキマイラに変更しました。
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