(くそ〜…なんでこんなことになってんだよ)
由香ちゃんの家に背黄青鸚哥を見に行った俺達。そこに居合わせた坂口さんが鸚哥を逃がしたと思った探偵団。きっといろいろ探りをいれると思った俺は、別れ際に真っ直ぐ帰れと言った。
「お前らこそ寄り道すんなよ」
元太の言葉に灰原が、
「あら、それもいいかもね」
そんなことを言うもんだから慌ててしまった。
「バ、バカ言ってんじゃねぇよ!」
「あら?何をむきになってるの?江戸川君?」
そんなことを言っていると元太達はもういなかった。いや、元太達のことはすでに忘れていた。
「べ、べつにむきになんかなってねぇよ!」
「そう?ま、あなたが彼女以外の女の子と寄り道なんかできるとは思わないけどね?」
…なんかカンに障る言い方だな。まるで俺が女音痴みたいに言いやがって。
「ならこれからどこか行くか?」
これが運の尽きだった。これに灰原が乗っかって来て選んだ場所が、『とても美味しいけど値段が高くて簡単には行けない』と評判のケーキショップだった。
「もちろんあなたの奢りでしょ?」
あなたが誘ったんだから。1番人気のケーキとコーヒーを注文した灰原は当然という顔で言ってきた。
お陰で俺はコーヒーだけ。しかも楽しみにしていた小説代も消えた。
(ハァ…俺は何をやってるんだよ)
そんな俺を他所に灰原はゆっくりとケーキを口に運ぶ。
(…綺麗だな)
夕日を背にコーヒーとケーキを口に運ぶ灰原はとても綺麗だった。ほんの数秒灰原を見ていた俺は無意識だった。気がついたら灰原がジト目でこちらを見ていた。
「私の顔に何かついてるの?」
「え?あ、いや…美味そうだなーって思ってよ」
ハハハとごまかした。
すると灰原はフォークでケーキを取り、俺の前に出してきた。俺は新手の嫌がらせかと思ったが、
「ほら、早くしないと落ちるわよ」
どうやら俺にくれるようだ。しかし…この状況はどう見ても…
「早くア〜ンして」
体中から火が出るかと思った。俺は震える唇を開きながらケーキを食べた。いや…口に入れただけかもしれない。味なんてわからなかった。
「工藤君どうかした?顔が真っ赤よ?」
灰原の言葉によけいに顔が赤くなった気がした。
「な、何言ってんだよ。夕日のせいだっつうの!」
「そう?ならいいんだけど。私と間接キスをして発情したのかと思っただけだから」
灰原はそういうとケーキを食べた。
(…間接キス?俺が灰原のフォークを使った…そして灰原はまたフォークを…)
俺は頭がおかしくなりそうなほど混乱した。そんな俺を見て灰原はフッと笑っていた。
「今日はご馳走様」
30分ほどの俺達の寄り道は終わった。
「あ、あぁ…。あのよ灰原?」
振り返った彼女に思わずドキッとした。
「なに?」
「あ、あのよ…また寄り道帰んないか?」
思わず言ってしまった言葉にまた慌ててしまう。灰原はきょとんとした表情を見せた後、大人びたというより大人の女性の笑顔でこう言った。
「あなたの奢りなら付き合ってあげえもいいわよ」
それから俺の金を貯める日々が続いた。
END |