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資料 中世ヨーロッパ風ファンタジー 麦について

作者:所長
 麦は10月頃から土を作り、11月上旬に種籾を撒き、翌年6月上旬に刈り入れる。6月頃に麦畑が黄金色に色づくことから、麦秋と言えば初夏のこと。
 手入れは主に草むしりや(現代になって主に日本で行われるようになった)麦踏みと呼ばれる作業で、刈り入れまでに4、5回行う。冬の気候が暖かい土地では麦踏みはほとんど行われない。
 参考資料が少ないためはっきりしないが、大人1人がトラクターなどを用いず手作業で管理できる畑の広さは20アール(0.2ヘクタール)程度であるらしい。この数字はおそらく牛や馬なども用いていないもの。
 これは、時代が進み、収穫後の脱穀作業の効率化が進むと1農家(女子供含む5人強と推定)で1ヘクタール程度まで広がった。脱穀は古代には刑罰として用いられるほど過酷な作業であったため、農地拡大の足かせとなっていた可能性が高い。
 20世紀に入りアンモニア肥料の大量生産と機械化が進むと増産は加速し、大規模な農地を持つ国家では農家1人あたり60ヘクタール・150トンを超す生産量を実現することもあった。これらの農法の改良と後述の品種改良が重なった時期を指して緑の革命と呼ぶ。

 品種改良によって背の低い小麦が出現したのは近代に入ってのことであり、それまで麦に類する植物の背丈などは似通っていた。主な品種の麦穂は人の背丈ほどもあったところから、20世紀の中盤には腰ほどの高さにまで抑えられるようになったようだ。
 小麦とライ麦の栽培目的の違いは主に土地の痩せ具合に由来する。ライ麦は痩せた土地でも育つため、小麦の収穫量が増えるまで農家の味方だった。
 小麦と大麦の違いは主に食べ方。名が表しているのは成長途中の葉の大きさで、大麦の方が大きい。大麦の方がやや収穫量が多く、食べ方に違いもあるが同じ重さでも最大1.5倍ほど多く食べる部分がある。また、大麦は乾燥藁だけでなく実を含めてやや高級な飼料用の作物とされることもあり、やはり農家の味方。
 大麦はオートミール、ライ麦は黒パン、小麦は米でいう「ぬか」を取らない全粉パンで食べるのがここでのたしなみ。もちろん、湯水ザブザブでうどんをゆでるなどといった、はしたないうどん県などファンタジーには存在していようはずもない。
 麦の生活を継続するのに必要な収穫量は、小麦換算で大人1人あたり年間180㎏(小麦粉120㎏相当)の食料消費分+90㎏の種籾分、計270㎏。
 収穫と消費を継続するのに必要な種籾の量を比較すると、中世初期では90㎏(270㎏の収穫)だったものが、中世後期ならば農法の改良により30㎏程度(210㎏の収穫)になる。

 中世初期のヨーロッパにおいて、麦は(比率で言えば)1ヘクタールあたり100㎏の種籾を撒き300㎏を収穫する作物であり、主に税金(年貢)用として育てられていた。ただし、実際には1農家で50アールも育てられなかったと思われる。食用とされたのは大麦のオートミールとライ麦パン。
 中世後期のヨーロッパでは、1ヘクタールあたり100㎏の種籾を撒き、700㎏を収穫するまでに改善されており、食卓に小麦で作ったパンが上がることもあった。同じく、実際の耕作面積は1ヘクタールに遠く及ばないと考えられる。
 ちなみに現代においては1ヘクタールあたり100㎏の種籾は変わらないまま収穫量は平均3トン程度まで向上しているが、20世紀前半頃まで1ヘクタールの収穫量が1トンを超えるような地域や品種は世界的にも極めて限られていた。
 収穫量向上の主因は、初期には農具の発達によって土を深く(20~30㎝)細かく砕けるようになったため。その後、堆肥の登場による土壌の改善――ノーフォーク農法などがこれにあたる。さらにこれが最も劇的と言えるが、灌漑事業による適当な水やりでの改善。近代から現代においては品種改良と肥料。
 「稲は地力で、麦は肥料で」収穫するとも言われ、生育途中にカリウムやリンなどの追い肥を適切に行うことで収穫量が増し、品質も大変に向上する。肥料の三大要素は窒素・リン・カリウム。
 ちなみに現代日本においては、温かい地方の一部に1ヘクタール辺り年間4トン以上を安定的に収穫する地域も存在する。
 種籾で線を描くようなすじ蒔きと、文字通りのばら蒔きが主流。すじ蒔きは水田の裏作に、ばら蒔きは大豆などの畑作の輪作や有権者の支持を稼ぐのに向く。

 なお、小麦は収穫後に半年程度の熟成期間をおく。加えて粉にしてから1週間程度置くことで良質な小麦粉となる。
 そのため、小麦農家や加工場にはサイロと呼ばれる保存用の塔やタンクが設置されていることが多い。オシャレ目的ではないのでパン工場などに無機質なサイロを持つ製菓企業などもある。石油か天然ガスかでも入っていそうな見た目だが、レンガのものより優れた機能性を目的に作られているようだ。

 一部創作においてはノーフォーク農法の導入に「4年かかる」などと書かれていることも多いが、最大の利点の一つであるクローバー(白詰草)による土壌の改善は4月にクローバーを植えれば10月には時期を終えるため、麦の収穫後に始めるのであれば遅くはあるが、開拓から数えるならその年の麦の種蒔き時期である晩秋にも恩恵(窒素を含んだ根による肥料効果)が間に合う可能性がある。
 時間がかかるのは家畜の育成とそれに伴う堆肥(クローバーを食べた家畜の糞は窒素を豊富に含む)の確保であるが、麦育成の場合、家畜を導入した年には効果が現れる上にその他の肥料の利用などによっても当面の需要をカバー出来ると思われるため、やはり何年も待つ必要はないだろう。家畜が冬を越すためにカブの育成が必要になったりするため畑一面で語れるほど単純ではないが。
 ノーフォーク農法では高タンパクの牧草であるクローバーを摂取した家畜の品質の向上(乳含む)と、同じく窒素を豊富に含むクローバーを摂取した家畜の糞が良質な堆肥となったため、農業事情は大きく改善した。土壌の水分についてもクローバーによる貢献があるが、後述の灌漑にて触れる。

 灌漑事業による収穫量の増加は、中世(年代不明)の中東において灌漑を導入した麦畑で小麦の収穫量が、1ヘクタールあたり1トン以上であったとされるため、2~4倍と見積もることが出来る。
 ヨーロッパの気候では、自然降雨だけでは麦の育成に十分な水分が得られなかった。元来の休耕期に、地中に浅く根を張り、育成に必要な水分が少ないクローバーを植えるノーフォーク農法では、麦の根が伸びる深さに水分を残しつつ、土壌の改善が行える。クローバーの次に麦を植えて最大限の恩恵を受ける方法は、後に革命と呼ばれるほど流行した。
香川県のうどん消費量は年間で小麦30㎏相当。全国平均の7倍くらいである。

お米は調べればすぐわかると思うので書きませんでした。
日本は米国よりもお米の国なので、資料に事欠きません。

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