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ちんこ短し恋せよ乙女 作者:真木あーと
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第九節

「え? ええっ!? いえ、その、そういうのじゃなくって……」
 一瞬で真っ赤になった可愛。
 両手で頬を押さえて隠そうとするが顔前面が真っ赤になっているので隠しきれていない。
 というか、その仕草は滅茶苦茶可愛い。
「そういうのじゃないの?」
「違……わない……けど……」
 消え入りそうな小さな声で答える可愛。
 えーっと、つまり、俺の勘違いなんかじゃなく、可愛は俺のことを好きで、俺も可愛の事を──。
「私と、鷹士の関係を知った上でも?」
 いきなり伊澄が、ぼーっとしていた俺の左腕を取り、自分の腕に絡めて抱き着く。
 え? 何やってんのこいつ?
「どういう、関係なの……?」
「お互いのちんちんを見せ合う関係よ」
「いや、お前持ってないだろ。それに、俺はお前の……見たことないぞ?」
 可愛が驚いたような表情で、俺を見る。
 あ、しまった、俺が見せている方を認める結果になってしまった。
「いやさ、俺だって好きで見せてるわけじゃなくってさ! しょうがなくっていうか、ビジネスで見せてるっていうかさ!」
「え? ビジネスって、何……?」
 ああああっ! この言い方だと、俺がそういう男優でもやってるみたいだな!
「違うんだ! そうじゃなくってさ、みせちんでマネージャやってもらってるからさ!」
「みせちん……?」
 可愛の顔色が、変わる。
 あ、まずい。
 可愛があれだけ、人格が変わるくらい必死に止めてくれたのに、それを裏切ってみせちんやってます、なんて言えないよな。
「いや、そうじゃなくってさ、その、えーっと……」
「私は鷹士のみせちん選手としてのマネージャをしているのよ。だから、いつでもちんちんの状態を確認しておく必要があるの」
 伊澄は、相変わらず淡々とした口調で、朝にばらすなと言ったことを早速ばらしやがった!
「……やってるの?」
「いや、その……」
 ここまではっきり言われた以上、言い逃れも出来ないが、それでも何かないかと頭を全力で回転させた。
 だが、何も出てこなかった。
「私、やめてって言ったよね? やっちゃ駄目って言ったよね……?」
「いや……言ったな?」
 これはもう言い逃れ出来ないだろう。
 俺に少しは好意を持ってくれていた可愛。
 さすがに、みせちんの選手だって話になると、もう無理だろう。
「亜様くん」
「あ、うん……」
 俺は、自分の死刑執行の判決を聞くような気持ちで座っていた。
 可愛は立ち上がる。
「二度と、私に話しかけないで」
「……え?」
 俺がその言葉の意味を考えている間に、可愛はカフェを出ていった。
 あまりのことに、俺は呆然と出ていったドアを見つめていた。
「あの子、鷹士のことが好きふぐう」
 俺はとりあえず、隣にいた伊澄をヘッドロックした。
「おーまーえーなーーっ!」
「反省はしていないわ」
「少しは反省しろ!」
「でも、鷹士がみせちんしていたくらいで嫌いになるなんて、本当に好きだったのかしら?」
「分かったようなこと言うんじゃねえ!」
 まあ、伊澄を責めても仕方がない、こいつはこういう奴だからな。
 だが、確かに、伊澄の言うように、何か様子が違ったよな。
 よく考えたら、可愛は俺が思い通りにならなかった程度でキレるような子じゃないんだよな。
 俺を止めてくれた時といい、もしかするとみせちんが絡むとああなるのか?
 そう考えると全てが納得がいく。
 そうか、可愛は、もしかして、過去に見せられ少女やってたのかな。
 何も知らないままあれをやらされて、そのままトラウマになって、今ではみせちんって聞いただけで、性格が変わるレベルで否定したくなってるとか。
 そうだな、あれって大会ごとに何人も女の子集められるんだよな。
 そう考えたら、身近にいてもおかしくないよな。
 それなら、ちょっとヤバイな。
 俺がみせちんをやってること自体が、可愛に嫌われる原因って事か。
「ところで鷹士は、可愛さんの事、どう思っているの?」
 俺の腕で首を絞められている伊澄が、この期に及んでそんなことを言いやがる。
「知るか。俺は今、お前に腹が立つという事以外考えてない!」
 俺は更に強く伊澄の首を絞める。
 やり過ぎなくらいがいいんだこいつは。
「ちょっとだけ反省したわ」
 まあ、長いこと付き合っていると、これがこいつの「ごめんなさい」ってのは分かる。
 俺は腕の力を弱めてやった。
 そうしていると、肩を抱いているみたいなので、少し奥に行った。
「あのさ、もしかして、可愛って、前にみせちんに参加させられた事あるのかな。そう考えるとあの態度は納得できるんだが」
 俺は伊澄に聞いてみる。
 伊澄がこれまでどんな女の子が参加してきたかなんて知るわけないだろうから、聞いたというか言っただけだが。
「知らないわ。でも、ただ、見せられただけで、あそこまでの態度になるかしらね。ただ、見せられるだけよ?」
 伊澄の言うことは正論だ。
 何だかんだ言って、これまで生きてきて女の子が男の股間を見たことがないって事はあり得ないだろう。
 万一一度も見たことがなかったとしても、ただ、見せられただけだ。
 その時は驚くし、場合によっては泣くかも知れない。
 だけど、いい年して、それでいつまでも憎み続けるか?
 ちょっとしたトラウマになることはあっても、憎むほど嫌いになる事はないだろう。
 少なくとも、俺は、可愛とはそれなりに仲はよかったと思うし、その縁を切られるほどのことはしていないと思う。
「確かに、あれはおかしいな。嫌われても仕方がないと思ってたけど、さすがにそこまでの事じゃない」
 まあ、もしかすると、必死になって止めてくれてたのに、俺があっさり参加してるから裏切られた、と思ったのかもしれないが、それにしてもあんな一言言って出て行ってしまうような子じゃないと思うんだよな。
 可愛って普段は本当に大人しい子なんだよ。
 そりゃあ、普段からよくキレるような子なら、何かで怒ったんだろうってこともあるだろう。
 女の子の沸点って、本当謎だから。
 だけど、可愛はそうじゃないからな。
 ちょっと行き過ぎた冗談を言っても笑って許してくれるような子だ。
 何かの誤解や行き違いだと思いたい。
「話がしたい、が、あの分だと俺の話なんて聞いてくれそうにないな」
「電話でもすれば?」
「出てくれないだろうし、そもそも、番号知らないし」
「じゃあメール」
「同じだって。知らない」
 そういうことをするほどの仲じゃなかったんだからな。
 今日を機会にそういうことをしたいと思ってたくらいだ。
「私は知ってる」
 伊澄はそれしか言わなかった。
 どうしたいかは自分で決めろってことか。
「教えてくれ」
「嫌よ」
 あっさり断られた。
「他の女の子のIDを、男の子に教えるなんて、常識人のすることじゃないわ」
 うん、まあ、突っ込みどころはあるがそうだと思うけどさ。
 だったら何で言った?
 いや、言ったってことは、何かしてくれるってことだろ?
 ってことは……。
「じゃあ、頼む。お前が連絡してくれ」
「分かったわ。連絡取ってみる」
 伊澄はスマホを取り出し、メールするのかと思ったら、チャットみたいな画面を開いた。
 その中の『可愛結愛』と書かれているボタンをタップした。
 よく考えたらあの子、名前に愛って文字が二つもあるんだな。
 伊澄はたどたどしく、『ごめんなさい』『調子に乗りすぎました』と打って送信した。
 ていうか、俺に謝ったことなんて一度もないくせに一言目でかよ。
 しかもなんで敬語だよ?
 まあ、今そんなとこに突っ込んでも意味はないので黙っている。
 しばらく何の反応もなかったが、その後、既読になった。
 それから五分くらいは何の反応もなかった。
 長い間、伊澄に頬を寄せているのに照れくさくなり、落ち着いてカフェオレを飲む。
 五分くらいしたら、返信があった。
『こちらこそごめんなさい。明日亜様くんにも謝ります』
『あなたはあの程度では怒らないと思っていました。何か理由があるのですか?』
『理由と言っても、いいわけにしかならないけど──』
 伊澄がくいっと前のめりになる。
 俺の位置からはほとんど見えなくなった。
 いや、それこそリアルに頬をくっ付ければ見えるんだが、ガキの頃ならともかく、今はそんなこと出来ない。
 俺が見ていない間にも、二人のやり取りは続く。
 何の話をしているんだろう。
 伊澄の表情が、とても真剣だったので、俺は聞けないでいた。
「こんな偶然って……」
 戸惑うような、伊澄の表情。
「何かあったのか?」
 俺は意を決して覗き込んでみた。
 伊澄の頬というか、髪に俺の頬が触れる。
「っ!」
 が、慌てたように、伊澄がスマホを俺から見えないようにする。
「? 何だよ?」
 さっきまで見せていたのに、いきなり隠されると気になるじゃないか。
 伊澄からスマホを奪って見ることは出来るが、そんなことをしたら、それを口実に、今後の俺のプライベートが全くなくなってしまうことだろう。。
「今は見せられないわ。後で絶対に話すから、今だけは見ないで?」
 そう言われると、何も言えない。
 俺は黙って自分の席位置に戻り、カフェオレを口にする。
 ぬるくなったそれは、苦味が先に立った。
 伊澄はその後も三十分くらい、可愛と会話をしていたので、俺は黙って外を見ていた。
 全く、今日は何でこんな日になったんだろうな?
 可愛と伊澄っていう、美少女二人を引き連れて遊びに来たはずなのにな。
 運がいいんだか悪いんだか。
「……じゃ、鷹士、行きましょう」
 いきなり伊澄が何の前触れもなく、立ち上がる。
「いや、状況の説明をしろよ」
「可愛さんが会ってくれるって言っているから、会いに行くわ。説得は私がするけど、鷹士もどうしても必要になるから」
「いや、状況は分かったけどさ……」
 状況しか分からないじゃないかよ。
「行く途中に話をするわ」
 そう言って、一人でカフェを出ていった。
 しょうがないので俺も後を追った。
「で、どういう事なんだよ? 可愛は何であんな態度取ったんだよ?」
 俺は少し不機嫌そうに、いや、実際不機嫌だったんだが、伊澄に聞いた。
「実は、可愛さんのお父さんは、みせちんの選手だったみたいなのよ」
「え? マジでか!」
「世界タイトルはほど遠かったけど、日本ではランキング上位に入っていて、家族が食べていくには困らない程度の収入はあったそうなのよ」
 伊澄は、可愛の親父さんの話を続ける。
 つまり、日本の上位で、それなりの人気もあったから、食うに困らない程度には稼げていたそうだ。
 だが、ある試合での事。
 相手が先制で結構な高得点を取得したため、親父さんも負けないようにブリッジアップをしたそうだ。
 ブリッジは股間を強調できる上、アップしていたら、それはもう異形な存在となるため、女の子の悲鳴が大きく、表情も大きく変わるそうだ。
 だが、ブリッジには唯一にして大きな欠点がある。
 それは、避けられないってことだった。
 それを見た女の子は、驚いて慌てたのか、その股間を思いっきり蹴ってしまったそうだ。
 その強打に、無防備だった親父さんの股間は、再起不能となってしまった。
 女の子には罪はない。
 これはそういう競技だし、女の子の反撃も覚悟の上でなければならないからだ。
 股間が再起不能となった親父さんはそのまま引退。
 四十近くになって、みせちん選手として以外キャリアのない親父さんにまともな職はなく、アルバイトを続け、今では肉体系の派遣をしているらしい。
 別にそれが悪いというわけじゃない。
 今は不景気だから、働けるだけでもありがたい時代だ。
 だが、親父さんは股間を失ってから、何の希望も目的もなく、ただ、妻と子供を養うためだけに働いている、廃人のような人間になっているという。
 楽しいことも嬉しいこともなく、ただ、飯を食って、働いて、寝るという一日を毎日毎日繰り返しているだけの笑いもしない、泣きもしない人生を歩んでいるらしい。
 可愛はそれを不憫に思いつつも、それ以上に怖いと思うことがある。
 それは、親父の股間を蹴り潰した女の子の気持ちが理解できるという事。
 つまり、自分がもし、同じようにそこに立たされたら、蹴っているんじゃないか、という事だ。
 親父の股間を蹴り潰した女の子に恨みはない。
 むしろ同情すらしている。
 そんな自己矛盾の怒りのはけ口が、みせちんという競技そのものだった。
 みせちんがあるから親父さんが廃人になり、女の子が股間を蹴り潰すしかなかった。
 誰も幸せになれないみせちんなんか、なくなればいい。
 その憎しみが、伊澄の口から出たので、全力で阻止しようとして、あんなことを言ってしまった。
 そして、既に選手になっているのが分かったので、二度と話をしたくないと思った。
 何故なら、蹴り潰してしまいそうな自分が怖かったから。
 自分が見せられ少女にならなければ、そもそも関係のない話なのだが、そんな日がきっと来ると思ってしまったのだ。
「それで、お前はなんて説得するんだよ?」
 さすがにそこまでの人間にみせちんの素晴らしさをいくら聞かせても無駄だろう。
「まずは謝るわ」
「何で謝るんだよ? さっき謝ってたのでいいんだろ? そもそも、そんなに謝るんなら、一度は俺にも──」
「さっき謝ったのは、今日の事よ。今から謝るのは、それとは別の事」
 何言ってんだ、こいつ?
 別に伊澄はみせちんの代表者でも責任者でもない。
 ただ、俺のマネージャとしてみせちんに関わっているだけだ。
 謝る筋合いのものでもないし、謝られても、可愛がみせちんを許すわけでもないだろう。
「いたわ」
 夕暮れの公園。
 屋根のあるベンチの一つに、可愛は座っていた。
 伊澄は足を速める。
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