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ちんこ短し恋せよ乙女 作者:真木あーと
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第七節

 青コーナーの人がすっげえ睨んでくるので目をそらしていた。
 え? これって、そんなに闘争心必要な競技?
 レフリーが二人を集めて、色々ルールを確認するけど、俺は目をそらしているから半分くらい聞いてない。
 今、何が起こっているのか整理したいがそんな時間もない。
「では、先行青コーナー」
 レフリーにそう言われて、青コーナーの人は立ち位置に立つ。
 反対側からは女の子が連れられてくる。
 あ、この子知ってる、俺と同じ学校で見たことある。
 まあ、話したこともないし、名前も知らないんだけどね。
 女の子のいる場所と、さっきの男性がいる場所の距離は約一メートル。
 ていうか、あんな至近距離で見せられるのか……。
 俺は名前も知らないうちの生徒に同情していた。
「レディー、ルック!」
 審判の掛け声のもと、仕切りが開く。
「せいっ!」
 対戦相手の猿渡って人は、勢いよくパンツを下ろすと、そのままブリッジをする。
「……っ!」
 さっきまで不安げな表情だった女の子の顔が一変し、それを凝視した。
 その表情は、驚きではなく、既に恐怖のそれだった。
 猿渡さんのそれは既に通常サイズではなかった。
 いや、そもそもあれの通常サイズはかなり大きいだろう。
 さすがに膨張率にも限界があるだろうし、あれは元がかなり大きい。
 そして、光沢のある黒光りしたそれは、威嚇している動物にも思える。
 それが、揺れているのだ。
「きっ、きゃぁぁぁぁぁぁっ!」
 女の子はそのまま腰を抜かしてしまった。
「そこまで!」
 歓声。
 それで試合は終了だ。
 女の子が係員に連れられていくのがマジックミラーのこちら側からは見える。
「判定!」
 猿渡さんがブリッジしたまま採点に入る。
「十七、十六、十九合計五十二点!」
 場内がどよめく。
 おそらくかなりの高得点のようだ。
 猿渡さんがドヤ顔を俺に向けてくるのが分かる、見ないけど。
「後攻、赤コーナー」
 俺の出番か。
 とりあえず俺は、前に出る。
 マジックミラーの向こうには女の子が連れられてきた。
 さっきと同じく、うちの制服だ。
 まずいな、知り合いじゃないみたいだけど、こんなことやってるのが学校にばれたら……いや、たとえ罰が軽く済んでも、世間の噂という、それ以上の罰を受けるはめになるからな。
 俺の目の前一メートル。
 向こうからは見えないが、俺からはよく見える。
 このリボンは、一年生か。
 さっきの子も一年生だったし、もしかして二人は友達なのか?
 となるとさっきより警戒してる表情ってのは、やっぱり友達が腰を抜かしたのを見てるからかな。
「レディー、ルック!」
 そんなことを考えている間に、仕切りは開かれる。
 女の子はいきなり開いた仕切りに少し驚いて、そこにいる俺を見る。
 ここは微笑むんだったな。
 俺は安心させるように優しく微笑んだ。
 女の子は少し顔を赤らめながらも、警戒を解いていく。
 今だっ!
 俺はジャージのズボンを下ろす。
「……っ!」
 女の子は突然の事に一瞬目をそらそうとするも、俺の股間をまじまじと見た。
 そして、とても、とても、優しい目をした。
 まるで自分の子供を慈しむような、全てを犠牲にして守ってくれそうな、そんな優しい目で、俺の股間を見ていた。
「そこまでっ!」
 仕切りが上がる。
 観客はしん、としている。
 誰一人声を発しない。
 だが、すぐに場内がざわざわとし始めた。
 あれ? やっぱり駄目だったか?
「判定!」
 審判が言うが審査員が戸惑ったように互いを見合う。
 やがて一人が立ち上がる。
「審判さん、これは本当に国内基準で判定していいのかね?」
 なんだ? 国内基準?
「公平な審判のためにはそれ以外やむを得ません」
 審判が答える。
 え? どういうことだ?
「では、改めて、判定!」
 審判が再び言う。
 大きな観客のどよめき。
「二十、二十、二十合計六十点!」
 え?
 なんだあの点数?
 六十点って満点じゃなかったっけ?
 戸惑う俺への大きな歓声。
 それは全ての音をかき消した。
「勝者、亜様鷹士!」
 歓声は更に大きくなった。
 俺はわけが分からないまま、左手を上げた。
 対戦相手の猿渡さんは、さっきまで睨んでいたのに、感動して俺に握手を求めている。
 関係者が大慌てしている。
 その中で大久保さんがドヤ顔している。
 ああ、この歓声は俺に向かってあげられているんだ。
 徐々に、それが体内に染みてくる。
 俺、勝ったのか?
 そうか。
 そうか……。
「っしゃぁぁぁぁっ!」
 俺が雄叫びを上げると、歓声は更に大きくなった。
 これは、気持ちがいい。
 女の子に微笑まれるのは、照れくさいけど嫌な気分じゃなかったし、いい点が取れたことも、その後の歓声も最高だった。
「おめでとう、鷹士」
 気が付くと目の前に伊澄がいた。
 あれ? おれ、いつの間に舞台から降りてたんだ?
 舞台ではメインイベントを前に、まだざわついている。
「一旦控室に戻ろう?」
「ああ、うん」
 俺はまだ自分が興奮しているのが分かる。
 伊澄を背後から襲いたい気持ちにかられる。
 だが、もちろん理性がそれをを止めている。
 なんだろう、この高揚。
 本当に、今すぐパンツ脱いで叫びながら走り回りたい気分だ。
 もちろん、俺にだって理性はある。
 そんなことをすれば、すぐに紺色の制服来た公務員の方に保護されて、明日には報道されるんじゃないか、くらいの分別はつく。
 だが、もうそうなったらそれでいいんじゃないか? などと考える俺が、最後の理性と戦っていた。
 部屋に帰るとさっきの芦ヶ谷さんとセコンドがいて、俺を出迎えてくれた。
「おう、すげえ試合だったな! 立ってるだけで立ってないのに満点なんて、絶対あり得ねえぞ?」
「……ありがとうございます」
 おっさんにハグされて一気に心が冷めてしまった。
 加齢の臭いがするし。
「あの分じゃ、国内無敵じゃないか? 次はランキング戦だろ? もう、すぐにでも世界行っちまうぜ?」
 次、か……。
 そうだよな、普通は次を考えるんだよな……。
 俺はちらりと伊澄を見る。
「……」
 伊澄は言葉もなく、頷いた。
 それだけでは意味が分からない。
 だが、おそらく「やるならいくらでも付き合うわ」って意味だろう。
「まあ、俺も次からランキング戦だからさ、共に頑張ろうぜ?」
「そうですね、ありがとうございました」
 そう言うと既に帰り支度を終えていた芦ヶ谷さんはそのまま帰っていった。
 そんなに広くない控え室には、俺と伊澄が残された。
 多分、そのうちに大久保さんが来るだろう、あの人もコミッショナーだから俺だけに構ってられないからな。
「改めて言うわ、勝利おめでとう、鷹士」
 伊澄は相変わらず乏しい表情のまま、言う。
「おう……」
 俺はそれに答えるだけの言葉はない、だから簡単にそう言った。
 俺は自然、伊澄の次の言葉を待っていた。
 今なら素直にそれに応じられる気がした。
「じゃ、帰る準備をしましょう」
「え?」
「荷物は持った? ちんちんは?」
「いや、それは朝やった」
「鷹士のちんちんは小さいから落とすかもしれないでしょ?」
「小さいから落とすもんでもねえよ!」
 このタイミングでそのボケブッ込んでくるかね普通?
「で? 帰るってのは、本当に帰るって事か?」
「そうね、もう試合も終わったし、いる意味ないでしょ?」
「……まあ、そうだけど、挨拶とか、そういうのいいのか? 大久保さんにも会ってないぞ?」
「この一試合で終わりなら、会っても意味ないでしょ? 逆に会えば強引にしつこく誘われるわよ?」
 いや、そうだけど!
 ちょっとそれを望んでるわけでさ……!
「いや、礼儀は必要かなって……」
「? どうしたの、鷹士? まるで自分からみせちんをやりたいと言っているようにしか思えないわよ?」
 核心を突かれた。
 ああ、そうだよ、ちょっといいかなって思ったよ!
 だけどさ、朝まで一試合だけとか言ってた奴がいきなりやりますとは言いにくいだろ?
 そこはさあ、もっと強引に頼んできて、まあ、そこまで言うなら仕方がないなって、なんかそういうのあるじゃん!
 そういうの分からないかなあ!
 まあ、伊澄だしな。
 ……どうする?
 このまま帰っても別に何か問題があるわけでもない。
 一試合だけの約束だったから、これで終わり、多分もう一生関わらない。
 それで何か不都合があるか?
 全くない、俺はこれから普通の人生を歩んでいくだけだ。
 高校卒業して、まあ、今の成績なら大学に行って、就職して、可愛みたいな女の子と結婚して、子供が生まれるような行為をして、子供が生まれて、育てながら、飽きてきたし、一度マニアックなプレイでもしてみるか、とか言って断られたり、そんなことをしているうちに、勃たなくなって。
 そんな、普通の人生を歩んで行くなら、何の問題もない。
 相手が伊澄なら、マニアックなプレイも断られないだろうか? などと言う話は今はどうでもいい。
 問題は、俺の人生はこのまま平凡に生きていくか、今日みたいな心の底から気持ちいいと思った気分を何度も味わいたいか、ということだ。
 俺はどうしたい? 誰かに流されるとか、そういうのを除いて、俺はどうしたいんだ?
 一時の快楽じゃない、一生の事だ。
 俺は、どうしたいんだ?
 そんなの、決まっているだろう。
「帰らない。俺は大久保さんが来るのを待つ」
 俺は静かにそう告げて、椅子に座る。
「……そう」
 伊澄はそれ以上何も言わず、向かいの椅子に座った。
 いくら伊澄が何を考えているか分からないとはいっても、俺が何を考えて居残るかくらい分かるだろう。
 だから、何も言わなかった。
 しん、とした控え室。
 遠くで歓声が上がる。
 ランキング戦が終わったんだろう。
 大久保さんが勝者敗者に挨拶をするとして、ここに来るのは十分後くらいか。
 ま、その程度なら問題はない。
 俺と伊澄は、沈黙が怖い、なんて関係じゃない。
 お互いの存在を認識しつつ、無言でお互い別の事をしつつ、何かの拍子に話しかけても言葉が返ってくる。
「ねえ、鷹士」
 伊澄が口を開く。
「なんだ?」
 ここには暇を潰す本もない、ゲームもない。
 スマホではあまりゲームはしない。
 だから、話をするしかない。
「続けるの?」
 その一言で、言いたいことは分かる。
「迷ってる。いや、やってもいいとは思ってる。だけど、今だけならともかく、将来までこれをやるのはちょっとな、とか思ってる」
 今更伊澄に格好つけても仕方がない。
 思っていたことを素直に言った。
「そう。でも、本当に世界タイトルマッチまで行けば、一試合で他人の一生分のお金をもらえることもあるわ。将来の生活なんて考える必要がないくらい」
 それは魅力的だと思う。
 だけど、それ以上にリスクもある。
「そこまで勝てる人間は何万人に一人だろ? 全然知らないけどさ、少しでも下の人間なら生活出来るのがやっとなんじゃなのか?」
「日本国内ランキングでも、中堅以上ならサラリーマンの年収程度はもらえるわ。世界ランキング上位なら、相当稼げるわ。億を超えるのはタイトルマッチくらいだけど、ショーだから、ランキング低くても人気があればそれなりに稼げるわ」
 伊澄は言い終わると立ち上がり、俺の前に立つ。
「そして、鷹士ならそこまで行けると思ってる」
 伊澄は表情は乏しいが、顔の造形は綺麗だし、それに、やっぱり生きている人間であり、意思を持っているのがその表情から分かる。
 だから、目をそらしてしまいそうになるが、何とかそらさずに見返した。
「それを、信じてもい「いやあ! 凄い試合だったよ!」」
 ちょっといい雰囲気になった時、いきなり大久保のおっさんが入ってきた死ねよ。
「さすがに私が見込んだことはある!」
 いや、俺って伊澄に見込まれてここに来たんだが。
「早速、次の試合を組もう、次は本当ならランキング下位の十回戦だが、特例でフル十二回戦の上位ランクと戦ってもいい! 本人が望むなら日本チャンピオンと戦ってもいいぞ!」
 俺の戸惑いや迷いを欠片も理解してない大久保さんがやたら飛躍しまくっていた。
 確かに、やる気ないならさっきのうちに帰っておいた方がよかったな。
 とりあえず、もう一分遅く来てたら俺の気持ちは固まってたかもな。
「大久保さん、鷹士のプロライセンスを渡しに来たのではないのですか?」
「うむ、そうだったな。これが君のライセンスだ。まあ、こんなものは仮だろうがな」
 そう言って大久保さんは、キャッシュカードや免許くらいの大きさの、カードを俺に手渡した。
 そこにはいつ撮ったのか俺の顔写真と、「国内A級」と書かれていた。
 それがどのレベルなのか分からないが、おそらく国内では上のライセンスなんだろう。
「コミッショナー、鷹士のマネジメントは私がやります」
 伊澄は、少し怒ったような口調で大久保さんに言う。
 何で怒ってんだ?
 自分が見つけた俺を、大久保さんが自分の手柄のように言ったからか?
「ふむ、そうか。では、マッチメイクもやってくれるか?」
「分かりました」
「いや、分かりましたってお前。ランカーと交渉したり出来るのか?」
「平気。基本的に自分のランクの十位以内なら、勝負を断れないのよ」
 いや、そういう問題じゃなくってさ。
 お前って、女子高生だろ?
 舞台で悲鳴上げる側だろう。
 そんなのが交渉なんてやって、信用してもらえるのか?
「なあ、その辺は大久保さんに任せておけって」
「どうしてそんなことを言うの?」
 問い返された。
「どうしてって……お前、学生だろ。マッチメイクなんて難しいって。会場とかそういうのの交渉も必要だろ?」
「それはプロモーターがいればいい。私はあくまでマネジメントだけのつもりよ」
 ……違いがよく分からん。
「学校とかもあるんだぞ? 大丈夫なのか?」
「大久保さんだって本業があるし、専業でやってるスタッフはまだ少ないわ」
 夢のない話だな。
「まあ、お前がいいなら、俺は頼む側だからな。頼んだ」
「任せて」
 そう言って伊澄が笑った。
 なんだか話に取り残された大久保さんがそそくさと帰っていった。
 そう言えば、こういうイベントを開くのがプロモーターだっけ。
 プロモーターって、あの人だったんじゃないのか?
 なんて事を考えながら、俺も帰り支度を始めた。
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