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ちんこ短し恋せよ乙女 作者:真木あーと
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第四節

 えーっと、ここでいいのか?
 次の週末、俺は近くの駅に一人で立っていた。
 あの日以降、伊澄はみせちんの話をすることはなくなった。
 そして、少しだけ俺に対して冷たくなった。
 まあ、仕方がないことだと思う、だが、少し寂しくもあった。
 そんな伊澄から、昨日突然電話があり、明日、つまり今日、一緒に行きたいところがあるから来て、と言われた。
 俺としても伊澄との仲をあんなくだらないことで無くしたくはないので応じることにし、待ち合わせ場所であるここに来たわけだ。
 俺が来たのは待ち合わせ十分前で、俺が来て大体五分くらい過ぎた頃、伊澄が到着した。
「お待たせ。今来たところよね?」
「待った」
 なんか会話が違うと思ったが、まあ、伊澄なので仕方がない。
 伊澄は白っぽいロングワンピースの上にカーディガンという格好で、足元には白いブーツだ。
 こういう格好を見るとお嬢様だな、とつくづく思う。
 まあ、クラスでは可愛と双璧をなす美少女ではあるのだが。
 こう見えて人望はあるんだが、モテるかと言われれば大抵敬遠される。
 男たちのその、ちょっと敬遠したくなる気持ちは分かる。
 それに、何となく俺が伊澄係的な位置にいて、面倒を見てるから、他の男が寄ってきにくいってのもあるかもしれないがな。
「で、どこに行くんだ?」
「ついてきて」
 そういうと、伊澄は駅と反対方向に向かう。
「って、電車に乗るんじゃないのかよ!」
「そんなこと言った覚えはないわ」
「言ってないけど! 駅で待ち合わせなら電車だと思うだろ!」
 つか、家隣なんだからなんで駅で待ち合わせなんて言ったんだ?
 まあ、俺も伊澄らしくもなく、待ち合わせがしてみたいとかそんな理由かとも思ったがそれも違うっぽいしな。
「それは鷹士の勘違いだから私が何か言われる筋合いはないわ」
「……まあ、そうだけどさ」
 真正面から言われるとちょっと腹が立つ。
 ま、この程度で腹を立てていたら、伊澄と付き合ってなんか行けないんだがな。
「で、どこに行くんだよ?」
「ついてくればいいのよ!」
 伊澄は怒っているわけじゃないが、なんだか俺に対して冷たい昨日までの伊澄のままのような態度で俺を連れて行く。
 まあ、今日は出来れば仲直りしたいってのが俺が来た理由だから、黙ってついていくか。
 伊澄はそのまま市民会館に向かう。
 ここは確か、イベントなんかをやる会場だ。
 俺も子供のころ、人形劇か何かを見に来たことがある。
 ってことは二人で何かを見に来たのか?
 伊澄の事だからただのデートで俺を呼んだとも思えなかったが、やっぱりデートなのか?
「な、なあ、お前が動きやすい服って言ったから俺、ジャージで来たんだが……」
「いいのよ、それで」
 俺の格好をちらりと一瞥してそう答えた。
 自分はデートみたいな恰好してるのになあ。
「さ、行くわよ」
「!」
 伊澄はそう言って、俺の腕に自分の腕を絡めた。
 お、おい、これって完全にデートだろ。
 肘の先に伊澄の胸っていうかブラジャーが当たってるんだけどさ!
 横を歩く伊澄をちらりと見るが、照れてもいないし顔も赤くなっていない。
 このくらい何ともないってことか。
 伊澄って、一応は普通の女の子的な恥じらいはあるからこういう事をされたことはない。
 だから俺は少し戸惑っている。
 伊澄は俺を引っ張るように市民会館の中に入って行き、展示棟というところに入っていった。
 ここは名前の通り、色々な展示をしているところだ。
 中にはいくつかの会場があるが、その中の一つに入っていった。
 急いでいるのか、早足で入っていったので、入り口に書いてあるはずの何が開催されているかを見なかった。
 会場内は、仕切りで細かく別れており、カーテンのようなものがそこかしこを更に仕切っている。
 更に会場の至るところから「せやっ!」「ふんっ!」などのかけ声が聞こえてくる。
 ……なんか、嫌な予感がしてきた。
「な、なあ、伊澄?」
 だが、伊澄は答えず、俺の腕を引っ張って歩いた。
 そうか、今になって気づいた。
 これ、デートみたいに腕を組んでるんじゃなくて、俺が逃げないように捕まえているんだ!
「おい、伊澄!」
 俺は強引にその場に止まり、伊澄を止める。
「なんで止まるのよ!」
「ていうか、説明ないんじゃこれ以上は無理だろ! ここは何をするところで、俺たちは何をしに来たんだよ?」
 俺が答えると、伊澄は俺を睨みながら、また泣きそうに目を赤くする。
「いや、だからさ! 説明してくれってだけだよ。説明なかったら何言ってるのか分からないだろ?」
 俺は慌ててそう言った。
 こいつのこういうところずるいと思うが、まあ、仕方がない。
「……こっちで話すわ」
 少しトーンを落として伊澄がそう言った。
 行く先は、カーテンで仕切られたうちの一つ。
 細かい仕切りは、狭い部屋をいくつも作っていたが、そのうち一つに入っていく伊澄。
 狭い場所で、二人っきりで話す、だと?
 俺は少しドキッとしてしまう。
 伊澄のことは、別に嫌いじゃない。
 いや、多少暴走しても後処理を手伝ってやるくらいには好意を持っている。
 その伊澄と二人っきりで、こんな狭い場所──。
「やあ、こんにちは」
 部屋の中にはテーブルがあり、おっさんが座っていた。
 え? 誰この人?
 なんかもう、頭の中がピンク色になっていた俺は、ああ、これが伊澄の親父さんか、そうか、親に挨拶は必要だよな、などと、わけの分からない納得をしていた。
「えーっと……」
 俺が何て言おうか迷っていた、その瞬間。
「えいっ!」
 俺の背後に回っていた伊澄が、俺のズボンを下ろした。
 当然俺の下半身は生まれたままの姿となり、それを見知らぬおっさんに見せているという、不思議な状況になっていた。
 謎は説けた。
 伊澄の奴、俺がベルトをしてこないように動きやすい格好とか言ったんだな。
 なんてことを考えていたので、ズボンを上げ直すのに数秒かかってしまった。
「あっ、うわあぁっ!」
 慌ててズボンを上げ直す俺。
「ふむう、これは素晴らしい。A合格ですね。いや、これはそれどころじゃないぞ!」
 俺が伊澄に文句を言おうと思っていた時、目の前のおっさんがそう言って興奮しながら書類に何かを書いていた。
 え? 今何したの? 何が素晴らしいって? Aって何のこと?
「失礼、思わず興奮してしまいました。後になりましたがお名前の受験番号を言ってください」
 受験? 何のこと?
 俺、今何かの試験を受けたのか?
 何が起こってるのかさっぱり分からない。
「受験番号六百四十一、亜様鷹士です」
 戸惑っている俺の代わりに、伊澄が答える。
「ふむ……亜様くんか……ちょっと待っててくれ!」
 そう言うと、おっさんはどこかに走っていった。
 さて、お望みどおり狭い部屋で伊澄と二人っきりになったわけだが、なんだかもうそんな気分じゃなくなったというか。
「いや、そういえばお前、何俺のズボンすり下ろしてんだよ!」
「だって、そういう検査だから」
「検査? 何の話だよ? さっきのおっさん誰だよ?」
 なんかもう、話せば話すほどわけが分からなくなってきた。
「ここはみせちんのプロテスト会場よ。さっきの人は審査員」
「みせちんってお前……断っただろうが! 騙して連れて来たのか」
「そうなるわね」
 平然とそんな事を言う伊澄。
 さすがにこれはカチンと来た。
「てめえ……!」
 俺は伊澄の胸倉をつかむ勢いで迫ったが、服の関係でつかめなかったので、両肩をつかんだ。
 伊澄は一瞬怯えるような表情になったがすぐに睨むように俺を見返してきた。
「私は何をされてもいいわ! 好きにすればいい。だから、一度だけ試合に出てみて!」
 いつもの強気な伊澄。
 だが、足は震えているのが分かる。
 こんな状態の女の子を怒りに任せて暴力を奮ったり出来るほど傍若無人でもない俺は、何も出来ず、ただ、伊澄を見返していた。
 伊澄のやったことは許せない、だが、俺が怒るのを覚悟の上でやったと思うと、何かやり返してやろう、なんて思えない。
 こいつはこいつなりに、本気で俺のことを考えてやっているんだからな。
「失礼するよ」
 俺と伊澄が睨み合っていると、さっきのおっさんが、もう一人おっさんを連れて帰ってきた。
 そっちの方は、高そうなスーツを着た立派な人だ。
「初めまして、私はこの地方の協会コミッショナーの大久保敦だ。逸材が来たと聞いたので直接確認をしに来た。ふむ、君が亜様鷹士君かい?」
「あ、はい……」
 なんだか大事(おおごと)になってきた。
 俺って本当に逸材なのか?
 さすがにこの状態でそれを疑うのは難しいか。
「ふむ……亜様……血は争えないものだな」
「はい?」
「いや、では見せてもらえるかな? その逸材の逸材を!」
 期待するように俺の股間を凝視する大久保さん。
 うまいこと言ったつもりか。
 全く、そう何度も見せるわけ──。
「はいっ!」
「しまっ……!」
 油断していたわけじゃない。
 見せろと言われている時から、少しは伊澄を警戒していた。
 だが、心が一瞬大久保さんに奪われた隙だった。
 俺のズボンはさっきと同じように足首まで下ろされていた。
「ほう、これは……」
 おっさん二人に股間を凝視されているという地獄のシチュエーション。
 だが、股間の涼しさは、この前のクラスで女子に見られた時を思い出して、悪い気分じゃない。
 むしろ少し気分が高揚しているのでもう死にたい。
 クラスの女子ならまだしも、おっさんに見られてのアップ(勃起)は避けたい。
 俺は慌ててズボンを上げようとして、伊澄が俺のズボンを踏んづけてるのに気づいた。
 緊急避難だ、すまん、と思いつつ、軽く伊澄を突飛ばしてズボンを上げる。
 幸い伊澄は、バランスを立て直して転ぶことはなかった。
「うむ、これは素晴らしい。私も長年やって来て、こんな逸材は初めて見た。これは世界チャンピオンも狙えるな」
 なんか、大久保さん、感心って次元を超えてて、もはや感動してるんだけど!
「うむ、キャッチコピーも決めたぞ、『見た目は大人、ちんちんは子供』で行くか!」
「いや、勝手にキャッチコピーとか付けられましても」
 しかも何だか、悲惨なキャッチコピーだし。
「気に入らんかね。では『その男、被りっぱなしにつき』なんてどうだ?」
「もう、マジで勘弁してください」
 言われれば言われるほど自分が惨めになってくる。
「とにかく君は特Aで合格だ! おめでとう!」
 何だか握手を求められたので、応じてしまったが、よく考えたら俺、何しに来たんだっけ?
「では、私は業務があるので戻る。君の将来は私に任せておきなさい」
 そう言って大久保さんは行ってしまった。
 ……何だこれ?
「おめでとう、鷹士! やっぱり私の見込んだ通りだったわ!」
 伊澄がやたら喜んでいるが、俺は何一つ喜べない。
「で、お前は俺に何をさせたいんだよ?」
「もちろん、プロのみせちんにさせたいだけよ?」
「それは断っただろ?」
「断られたから、こうして怒こるの分かってて連れてきたのよ」
 そういえば俺、怒ってたっけ。
 何だかもう色々馬鹿馬鹿しくて、どうでもよくなったが。
「もういい、俺は帰る」
「私は大久保さんと話をして、試合組んでくるわ」
「誰の?」
「鷹士の」
「いや、お前、俺の話聞いてたか?」
「半々くらい?」
「ちゃんと聞け!」
 俺はため息を吐いた。
 俺ってとことん流されやすいよな。
 この前だって、可愛がいなかったらあっさりプロテスト受けてたと思うし、肝心なところで止まらないんだよな。
「とにかく、試合なんて組まれても俺は出ないぞ?」
「出て?」
「嫌だ」
 何だか、またしつこく頼まれる状態になだれ込んで、しょうがないなあで受けてしまいそうだ。
 そう思ったとき、伊澄が俺をじっと見て、そして、その頭を下げた。
「お願いします、試合に出てください」
「!?」
 伊澄が、あの伊澄が、俺に頭を下げて頼んでいる。
「私が出来ることなら何でもやります。ですから一度だけでも出てください! お願いします」
「え? あ、いや……」
 俺は逆に戸惑ってしまった。
 こうくるとは思ってもいなかった。
 俺は特に伊澄と幼馴染みだから、礼儀のない親しさって関係だった。
 だから俺もそうだが、伊澄も俺に対して礼節を重んじるようなことはない。
 更に言えば、伊澄は大抵の時は強引に押しきるタイプなので、ここまで丁寧にお願いをするのを見たことがない。
「一試合だけでも!」
 そう言われると、困ってしまう。
 よく分からない試合だが、一試合出れば伊澄が何でもしてくれるのか?
 何でもって、何でもなんだよな……?
 あんなこととか、こんなこととか……。
 それは、何て言うか、魅力的な話、だよな。
 伊澄がお願いしているんだ、やってやるのが人の道ってもんだろう。
「分かった、お前がそこまで言うなら一度だけ出てやる。それでいいんだな?」
 俺が言うと。伊澄が顔を上げて俺の表情を窺い、そして、笑顔を浮かべる。
「うんっ!」
 そう答えた伊澄は、可愛いと思った。
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